日替わりメニューに乳和食を採用--森永乳業株式会社

森永乳業株式会社

森永乳業本社の社員食堂

森永乳業株式会社では2017年6月から、本社社員食堂のメニューに乳和食を取り入れています。
利用者の反応や調理上の工夫、今後の展望や課題などをご担当者にお聞きしました。

味の好みや健康ニーズに幅広く応える、毎日通える社員食堂

社員食堂の入口にあるモニター画面で本日の献立が確認できる
社員食堂の入口にあるモニター画面で本日の献立が確認できる
 東京港区の森永乳業本社(森永プラザビル)の13階に、同社の社員食堂があります。ビルに入居する他社の社員も利用できる形式で、ランチタイムには1日平均750人ほどが訪れます。
 
 日替わりのメニューは、メインが「アラカルト(2種)」「ヘルシー」「カレー&ボウル」「ラーメン」「そば・うどん」の6種類。ほかに、好きな料理を組み合わせて取れる「グラムデリ」や、日替わり小鉢、サラダバーなどのサイドメニューもあります。
週2品ほど豚汁などの汁物や選べる小鉢のなかに乳和食が登場
週2品ほど豚汁などの汁物や選べる小鉢のなかに乳和食が登場
 利用者の男女比率が半々に近いこともあり、食の好みやニーズに幅広く対応することが求められます。管理栄養士の小坂愛子さん(エムエフエス株式会社)は、「日替わり6品のメニュー構成は主食材や調味、調理方法に変化をつけてお客様の好みに添うものを提供できるよう心がけています。定番メニューはソースや付け合せ、調理方法のバリエーションを増やして毎週食べても飽きないメニューを目指しています」と話します。
「乳和食を楽しみにするお客様を増やしたい」と語る管理栄養士の小坂さん
「乳和食を楽しみにするお客様を増やしたい」と語る管理栄養士の小坂さん
 健康栄養面に関しては、設定した給与栄養目標量を満たすよう1ヶ月単位でメニューを構成しているほか、1食あたりの摂取カロリーを表記したセットメニュー(「ヘルシー」麦ご飯・みそ汁付きで700kcal以下)を提供しています。
 

基本レシピを大量調理向けにアレンジして、社食向け乳和食に

週2品ほど豚汁などの汁物や選べる小鉢のなかに乳和食が登場
週2品ほど豚汁などの汁物や選べる小鉢のなかに乳和食が登場
 乳和食は2017年6月から、週1日・1~2品の頻度で、日替わり小鉢とグラムデリのスープなどに取り入れています。これまで、「ミルク肉じゃが」「ミルクポテトサラダ」「ミルク豚汁」「切り干し大根とひじきのミルク煮」など計8品を採用してきました。
 
 提供するメニューは、乳和食サイトなどで発信している乳和食レシピから選定し、調理する量を踏まえて微調整しています。
 「少人数用のレシピのまま分量だけを増やすと味が変化したり、調理が難しくなったりすることがあります。基本のレシピで試作し、味を確かめた後に料理長と大量調理向けにアレンジする方法を決めています」。
 
 たとえば、分量を増やした際にミルクの甘味が強く出そうな場合は、みりんなどの調味料を減らして味を調えます。また、「ミルク豚汁」では、味噌の量を乳和食サイトで示されているレシピの量からさらに減らし、別の調味料を加えるなど、減塩なども含めた乳和食のコンセプトを守りながら、社員食堂利用者の好みも考えてレシピを工夫しているそうです。
 
 こうした取り組みの甲斐もあって、「ミルク豚汁」や「ミルクポテトサラダ」「切り干し大根とひじきのミルク煮」などは、利用者からもおいしいと好評を得ています。
 

乳和食メニューの継続的な提供への課題とは

「和食+牛乳を親しめる環境づくりをしたい」と森永乳業の飯田アシスタントリーダー(右)
「和食+牛乳を親しめる環境づくりをしたい」と森永乳業の飯田アシスタントリーダー(右)
 同社の社員食堂では、数年前に乳和食を試験的に数回提供したことはありますが、継続的な採用は今回が初めてです。森永乳業人財部人財課の飯田晃彦アシスタントリーダーは、「森永乳業社員の他にもビルに入居する他社の社員も食堂を利用しており、なかには和食に牛乳を使うことに抵抗のある方もいます。しかし、減塩など乳和食の持つ健康面の効果は、本来長い目で評価することが大切。乳業メーカーとして、“和食+牛乳”を普段から親しめるような環境をつくることで和食に牛乳を使うことに対する違和感も薄まるはず」と期待を寄せています。

 一方、乳和食を社食で提供する際の課題もあります。乳和食の大量調理には、温度管理や均一な加熱に適したスチームコンベクションオーブン(スチコン)が有効とされています。同社員食堂でも2台のスチコンを使用していますが、いずれも提供量の多い料理に優先して使用しているため、調理量の少ない乳和食にスチコンを使うことは難しいそうです。
 
 同社員食堂の小坂さんは「乳和食の調理には鍋や釜を使用しています。牛乳を使う乳和食の大量調理は、加熱時の焦げ付きなどなどを含め完成までの20~30分間、調理現象の変化を注意深く見守ることが必要です。調理員の負担を軽減する調理手順の工夫が今後の課題です」と言います。
さまざまな試行錯誤のなかで提供する乳和食ですが、小坂さんは「一番大切なのはお客様の反応」と強調。今後については、「牛乳に苦手意識のある方でもおいしく食べてもらえるメニューをお届けして、乳和食を楽しみにするお客様を増やしたいです」と語ります。
 
 森永乳業では、食堂利用者の評価や調理現場の状況に配慮しながら、乳和食の提供を継続していく意向です。飯田さんは、「社員食堂から乳業メーカーらしさを発信するという意味でも、長く続けていきたい取り組みです」と話しています。
 
2017年10月02日