1.気づかないうちに、総合的に進行する生活習慣病
やや高めの血圧や血糖値が数十年後には後戻りできないリスクに
40歳代、50歳代になると、多くの人が健診などで指摘され始める血圧や血糖値の異常。自覚症状がないので、経過観察しながら様子を見ているうちに、少々の高値には驚かなくなる人が少なくありません。
しかし、その多くの人がたどるのが、5年、10年、20年とたつうちに、血圧や血糖値にとどまらず、血中脂質や肝機能、腎機能などにも異常が出始めるパターンです。こうしてさまざまな病気が絡み合いながら育ち、脳卒中や心筋梗塞などに一歩一歩近づいてしまうのが生活習慣病の一番怖いところなのです。
下記のように、生活習慣病が重症化して行き着くところは、脳卒中や心臓発作にとどまらず、その先には認知症や麻痺などによる要介護状態の日々が待っていることも大いに考えられます。また、脳卒中や心臓発作などを起こせば、後遺症のために長い期間、要介護状態で過ごすことになるかもしれません。
しかし、その多くの人がたどるのが、5年、10年、20年とたつうちに、血圧や血糖値にとどまらず、血中脂質や肝機能、腎機能などにも異常が出始めるパターンです。こうしてさまざまな病気が絡み合いながら育ち、脳卒中や心筋梗塞などに一歩一歩近づいてしまうのが生活習慣病の一番怖いところなのです。
下記のように、生活習慣病が重症化して行き着くところは、脳卒中や心臓発作にとどまらず、その先には認知症や麻痺などによる要介護状態の日々が待っていることも大いに考えられます。また、脳卒中や心臓発作などを起こせば、後遺症のために長い期間、要介護状態で過ごすことになるかもしれません。
その源流にあるのが メタボリックシンドローム
やや高めの血圧や血糖値など、年とともに現れてくる小さな生活習慣病の芽。それを他の生活習慣病を巻き込みながら育ててしまう源流が、メタボリックシンドロームです。
内臓脂肪の蓄積は、いくつかの生活習慣病を同時に悪化させながら動脈硬化の進行を加速させます。この流れが速くなる前に、メタボリックシンドロームといわれたら、減量が大切です。減塩だけでなく、食事をしっかり見直し、運動不足を改善してください。適度な運動は、エネルギーを消費して内臓脂肪を燃やす他、血圧を上げる交感神経の働きを弱め、腎臓から余分な塩分を排出しやすくします。
また、食べ過ぎをやめること。たとえ半分に食塩を減らしていても、量を倍食べれば効果はゼロ。1食につき80kcal(ロースかつなら1/6、ごはんなら小さめのお茶碗に1/3-1/2)を減らせば、1日で240kcal減。これを1ヵ月間続ければ約1㎏の脂肪を減らすことができます。
内臓脂肪の蓄積は、いくつかの生活習慣病を同時に悪化させながら動脈硬化の進行を加速させます。この流れが速くなる前に、メタボリックシンドロームといわれたら、減量が大切です。減塩だけでなく、食事をしっかり見直し、運動不足を改善してください。適度な運動は、エネルギーを消費して内臓脂肪を燃やす他、血圧を上げる交感神経の働きを弱め、腎臓から余分な塩分を排出しやすくします。
また、食べ過ぎをやめること。たとえ半分に食塩を減らしていても、量を倍食べれば効果はゼロ。1食につき80kcal(ロースかつなら1/6、ごはんなら小さめのお茶碗に1/3-1/2)を減らせば、1日で240kcal減。これを1ヵ月間続ければ約1㎏の脂肪を減らすことができます。
2.注目したいメタボと牛乳の関係
近年の研究調査から
メタボリックシンドロームが気になる世代になると、どうしても牛乳は太るのではないかと 心配で、つい敬遠してしまう人も少なくないか もしれません。しかし、それは誤解でした。
日本人成人の牛乳・乳製品摂取状況とメタボ リックシンドロームとの関係について検討を行う ため、女子栄養大学の上西らは2008年10月-2009年3月に20-69歳の男女約21,000 名を対象に大規模横断調査※を実施。図⑩-図⑬に示したデータは、回収された8,659 名のうち 非喫煙者6,548名についての解析結果です。
まず、図⑪に見るように肥満指数である BMI や腹囲は、女性において牛乳・乳製品の摂取が多い方が低いという結果でした。肥満 が少ないということは、当然、メタボリックシンドロームにもなりにくく、事実、図⑩で分かるように男女ともに牛乳・乳製品の摂取量の 多い方がリスクが低いという結論が導き出され ています。
日本人成人の牛乳・乳製品摂取状況とメタボ リックシンドロームとの関係について検討を行う ため、女子栄養大学の上西らは2008年10月-2009年3月に20-69歳の男女約21,000 名を対象に大規模横断調査※を実施。図⑩-図⑬に示したデータは、回収された8,659 名のうち 非喫煙者6,548名についての解析結果です。
まず、図⑪に見るように肥満指数である BMI や腹囲は、女性において牛乳・乳製品の摂取が多い方が低いという結果でした。肥満 が少ないということは、当然、メタボリックシンドロームにもなりにくく、事実、図⑩で分かるように男女ともに牛乳・乳製品の摂取量の 多い方がリスクが低いという結論が導き出され ています。
牛乳と血圧
牛乳に豊富なカルシウムやカリウムには、血圧を上昇させる血中ナトリウムの作用を妨げる働きがあることが分かっています。
また、牛乳に含まれるカゼインやホエーたんぱく質が消化管で分解される際に生成するペプチドには、降圧作用を有するものがあることが知られています。これらのペプチドは主に血圧を上げる生理活性物質であるアンジオテンシン変換酵素の作用を阻害することで、降圧作用を有することが報告されています。
実際に、男女ともに図⑫に見るように、牛乳・乳製品の摂取が多いほど、収縮期血圧が低いことも分かりました。牛乳のミネラルや、ペプチドの働きによるものと思われます。牛乳を使った乳和食を毎日続けていれば、高血圧対策になることがこれで分かりました。
また、牛乳に含まれるカゼインやホエーたんぱく質が消化管で分解される際に生成するペプチドには、降圧作用を有するものがあることが知られています。これらのペプチドは主に血圧を上げる生理活性物質であるアンジオテンシン変換酵素の作用を阻害することで、降圧作用を有することが報告されています。
実際に、男女ともに図⑫に見るように、牛乳・乳製品の摂取が多いほど、収縮期血圧が低いことも分かりました。牛乳のミネラルや、ペプチドの働きによるものと思われます。牛乳を使った乳和食を毎日続けていれば、高血圧対策になることがこれで分かりました。
牛乳とコレステロール・中性脂肪
牛乳を飲むとコレステロール値や中性脂肪を心配する人もいるかもしれませんが、同様に、女性においては図⑬・図⑭に見るように、牛乳・乳製品の摂取が多いほど、中性脂肪は低く、HDL コレステロールは高くなっています。
牛乳に豊富なカルシウムには、体脂肪の合成を抑制し、分解を促進する働きがあります。牛乳・乳製品の摂取量が多い女性ほど中性脂肪値が低かったのも、おそらくこの効果によるものです。
海外の研究ではすでに、いくつかの調査から牛乳・乳製品の摂取が多いほどメタボリックシンドローム発症リスクのオッズ比が低いことが報告されていましたが、日本人の食生活においても同じ事実が確かめられたことになります。メタボリックシンドロームが気になる中高年は牛乳を。
※図⑩-⑭ 上西一弘、田中司朗、石田裕美ほか,「牛乳・乳製品摂取とメタボリックシンドロームに関する横断的研究」日本栄養・食糧学会誌,2010.第63巻,第4号,p.151-159
牛乳に豊富なカルシウムには、体脂肪の合成を抑制し、分解を促進する働きがあります。牛乳・乳製品の摂取量が多い女性ほど中性脂肪値が低かったのも、おそらくこの効果によるものです。
海外の研究ではすでに、いくつかの調査から牛乳・乳製品の摂取が多いほどメタボリックシンドローム発症リスクのオッズ比が低いことが報告されていましたが、日本人の食生活においても同じ事実が確かめられたことになります。メタボリックシンドロームが気になる中高年は牛乳を。
最新研究レポート メタボの人で牛乳による血圧改善効果を確認!
牛乳・乳製品とメタボリックシンドロームとの関連性を調べるために、日本人男性を対象としたランダム化比較研究の論文が2014年に発表されました。ランダム化比較試験は、2 つ以上のグループを無作為に振り分けて比較する、臨床研究の中で最も厳密な部類の試験です。解析の結果、牛乳・乳製品の摂取は、生活習慣の改善による血圧の低下を促進することが確認できました。
「メタボリックシンドローム指標に対する牛乳・乳製品長期摂取の効果の検討ランダム化比較研究」
研究対象:20-60歳のメタボリックシンドロームを有する非喫煙男性200名
比較内容:牛乳・乳製品摂取グループ100名(1日牛乳400ml 相当を摂取)牛乳・乳製品非摂取グループ100名 ※両群ともに栄養指導あり
摂取期間:6カ月
研究対象:20-60歳のメタボリックシンドロームを有する非喫煙男性200名
比較内容:牛乳・乳製品摂取グループ100名(1日牛乳400ml 相当を摂取)牛乳・乳製品非摂取グループ100名 ※両群ともに栄養指導あり
摂取期間:6カ月
出典:Journal of Nutritional Science and Vitaminology (JNSV) 5:305-312, 2014
運動している人は牛乳を飲むと、より血圧が下がる
週2回以上、ウォーキング相当の運動を30 分程度している人で、牛乳・乳製品の摂取グループと非摂取グループを比較したところ、摂取グループのほうが血圧がより有意に低下するというデータが得られました。
もともと運動習慣がある人は、牛乳・乳製品を摂ると、血圧コントロール効果がさらに高まるという結果です。
もともと運動習慣がある人は、牛乳・乳製品を摂ると、血圧コントロール効果がさらに高まるという結果です。
適正体重の人は牛乳を飲むと、血圧が下がる
メタボの中でもまだ体重が適正な人で、牛乳・乳製品の摂取グループと非摂取グループを比較したところ、3カ月後・6カ月後の血圧の変化に大きな差がありました。
体重コントロールができている人でも、牛乳・乳製品を摂取していないと血圧が下がりにくく、摂取していると血圧が下がりやすいということになります。
体重コントロールができている人でも、牛乳・乳製品を摂取していないと血圧が下がりにくく、摂取していると血圧が下がりやすいということになります。
3.10年後の健康をしっかり支える乳和食
健康寿命のカギを握るアルブミンと牛乳
若い世代から中年までは、食べ過ぎやメタボリックシンドロームの予防が健康維持の課題になっている一方、65 歳を過ぎた頃からは、低栄養を防ぐことが健康長寿と介護予防の大切な課題です。高齢者の中には、食が細くなっているだけではなく、脂質やコレステロールを恐れるあまり、動物性食品を避け、野菜中心の食事がよいと思い込んでいる人がいるためです。その結果低栄養になり、健康寿命を縮める危険が指摘されています。
低栄養で健康を損ねていないかどうかを見る指標が血清に含まれるアルブミン値です。アルブミン値を下げないことが健康長寿のカギになるといわれています。
アルブミン値を下げないためには、牛乳などの動物性たんぱく質を摂ることが有効といわれています。牛乳のたんぱく質は、必須アミノ酸の含有バランスが良く、牛乳を摂取している人は、血清アルブミン値が下がりにくく、牛乳を毎日飲むグループの方が生存率が高いことが下の図⑮に挙げた調査からも判明しています。
低栄養で健康を損ねていないかどうかを見る指標が血清に含まれるアルブミン値です。アルブミン値を下げないことが健康長寿のカギになるといわれています。
アルブミン値を下げないためには、牛乳などの動物性たんぱく質を摂ることが有効といわれています。牛乳のたんぱく質は、必須アミノ酸の含有バランスが良く、牛乳を摂取している人は、血清アルブミン値が下がりにくく、牛乳を毎日飲むグループの方が生存率が高いことが下の図⑮に挙げた調査からも判明しています。
認知症予防にもつながる糖尿病対策と牛乳
近年、糖尿病が認知症のリスクになることが指摘されています。糖尿病を防ぐには、食後血糖値を上げない食事法が重要ですが、牛乳は食後の血糖値の上昇が穏やかな低GI食品。
GI(グリセミック・インデックス)値は、食後の血糖値の変化を示す指標のひとつです。
白米のごはんを100とした場合の牛乳単独のGI値は27、ごはんに牛乳を組み合わせると72に低下します。でも、“牛乳にごはんは…”。だからこそ、乳和食なのです。
上の図は、東京都老人総合研究所※の研究チームが東京都小金井市70歳住民の男女を10年間追跡調査した結果です。毎日牛乳を飲むグループの生存率は高かった、つまり長生きであったという報告がされています。また、長野県などの長寿地域では、牛乳の飲用習慣が高いことも分かっています。
白米のごはんを100とした場合の牛乳単独のGI値は27、ごはんに牛乳を組み合わせると72に低下します。でも、“牛乳にごはんは…”。だからこそ、乳和食なのです。
上の図は、東京都老人総合研究所※の研究チームが東京都小金井市70歳住民の男女を10年間追跡調査した結果です。毎日牛乳を飲むグループの生存率は高かった、つまり長生きであったという報告がされています。また、長野県などの長寿地域では、牛乳の飲用習慣が高いことも分かっています。
※(現)東京都健康長寿医療センター研究所
こんな人々に乳和食
身も心も若々しく過ごすためにも牛乳がひと役
高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロームはもちろん、骨粗しょう症やロコモティブシンドロームを防ぐことがいくつになっても健康を維持する大前提であることは、誰もがご存じのはず。これまで述べてきたように、どの課題にも牛乳は適しています。
さらに、牛乳には、実は多くのビタミンが含まれ、特にB2・B12・パントテン酸などといったビタミンB 群が豊富です。ビタミンB群は新陳代謝を促し、自律神経の働きを整える大切なビタミン。自律神経のバランスが崩れると、心身ともに疲れやすく、はつらつとした日々を過ごすことができなくなってしまいます。
これからの10 年と、さらにその先の健康を考えて、おいしく減塩ができ、全身の健康の土台を強くする乳和食を始めてみてください。
これからの10 年と、さらにその先の健康を考えて、おいしく減塩ができ、全身の健康の土台を強くする乳和食を始めてみてください。
牛乳・乳製品はコレステロールが 高い食品ではありません
食品1食あたりに含まれるコレステロール量を見ると、一目瞭然。牛乳1本(200ml)に含まれるコレステロール量はわずか25mg。バターは動物性脂肪なのでコレステロール量は多いと思いこんでいる人もいるようですが、トースト2枚にバターを塗っても21mg程度で、他の食品よりもかなり低い値です。
また「牛乳と血清コレステロール」についての実験結果では、日本人の成人の場合、牛乳を毎日400-600ml 飲み続けても、血中コレステロールの上昇はなかったと報告されています。
また「牛乳と血清コレステロール」についての実験結果では、日本人の成人の場合、牛乳を毎日400-600ml 飲み続けても、血中コレステロールの上昇はなかったと報告されています。
2015年03月30日