コラム、「ミルクの国の食だより」の連載スタートです。
「酪農国」といえばフランスを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
牛乳の消費量は日本人の約2倍。そして、さまざまな乳製品が食卓を彩るこの国の、食育の様子、栄養や健康、食文化などを、牛乳・乳製品を軸に、フランスでの実例を交えながらお伝えしていきます。
日本での食育・啓発活動の参考にしていただければ幸いです。
日本での食育・啓発活動の参考にしていただければ幸いです。
夏休みは体験型イベントへ
夏休みになると、子どもたちといっしょに牧場を訪れる人も多いのではないでしょうか。中には、乳搾りをしたり、乳製品や料理を作ったりできる食育教室を開催しているところもあります。
動物とのふれあいを通して多くのことを学べる体験教室は、子どもにはもちろん大人にも、楽しみながら、いのちや食べ物について考えるきっかけを与えてくれます。
農業国フランスでは、こうした体験型のイベントが各地で行われています。
ferme en ferme (農場から農場)
フランス南東部に位置するローヌ県では、毎年4月の最週末に”ferme en ferme(農場から農場)”というイベントが開催されます。
CIVAM*(農業・農村のための促進支援センター)の主催で、消費者に地域の農場や牧場の仕事、作られている製品について、理解を深めてもらうために行われるものです。
今回はそこでの食育教室についてお伝えします。
今回はそこでの食育教室についてお伝えします。
ローヌ県の県庁所在地‐リヨン市から車で15分北に位置するMonts d'Or。この地域では5箇所の農場 (ワイン、チーズ、小麦・パン、ビール、エスカルゴ) がこのイベントに参加しています。
訪問したのはブランさんご夫妻とブノーさんの牧場。フランスでよく食べられている、ヤギ乳チーズの生産者です。
毎日80頭のヤギから160リットルの乳が搾られ、25kgのチーズが作られているとのこと。
毎日80頭のヤギから160リットルの乳が搾られ、25kgのチーズが作られているとのこと。
午後2時半からのチーズ作りの体験教室には、約20人の親子が集まりました。早速、朝、搾乳された乳を使ってチーズ作りの開始です。
子どもたちは、わくわくドキドキ、真剣な面持ちでブノーさんの話に耳を傾けます。
子どもたちは、わくわくドキドキ、真剣な面持ちでブノーさんの話に耳を傾けます。
■まずは、お話をしっかり聞きます。
チーズづくりに挑戦!
まず、温めた乳に凝乳酵素を入れてしばらくおきます。すると、絹ごし豆腐のようなカードになります。
ここから水分(ホエー)を除くために、専用のカッターで細かく砕くと、たちまち小さくなり、ホエーがたくさん出てきました。砕いたカードを穴のあいた容器に移し、上からギュッと押して水切りをしたら、フレッシュチーズのできあがり。
触ってみると、もっちりとした弾力。味や香りがほとんどないので、香辛料やハーブで味付けをしていただきます。
硬い熟成チーズは、さらに丸一日水切りしたものを塩漬けし、乾燥、熟成を経て作られます。
硬い熟成チーズは、さらに丸一日水切りしたものを塩漬けし、乾燥、熟成を経て作られます。
■カードをカッターで細かくします。
■これはフレッシュチーズを24時間水切りしたもの。おいしそう!!
チーズ作りの体験教室は約20分、午前・午後あわせて3回行われました。ほかにも乳搾りや子羊へミルクをあげる体験もあり、牧場では毎日どんな仕事をしているのか、いつも食べている製品はどんなふうに作られているのか、酪農の魅力を、余すところなく体験できる一日でした。
子どもたちにとっては初めてのチーズ作り。
こうした五感を使った体験の積み重ねが、食文化を大切にする国民性を育むのかもしれません。
こうした五感を使った体験の積み重ねが、食文化を大切にする国民性を育むのかもしれません。
*CIVAM:Centre d'Initiatives pour Valoriser l'Agriculture et le Milieu rural
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。