第11回 美食の町-リヨンの歴史2-

ミルクの国の食だより 連載一覧

コラム、「ミルクの国の食だより」の第11回をお送りします。
フランス革命による食文化の変化・・・「美食の町リヨン」誕生の歴史です。

宮廷料理と郷土料理

このような背景(美食の町-リヨンの歴史1-参照)からもわかるように、フランスで料理はもともと貴族や富裕層のための宮廷料理として発展していきました。
美食のためにお金と手間をいとわず工夫をしてきた宮廷料理というのは、言いかえれば王侯貴族の娯楽として特別に発展した食文化といえます。
一方の庶民は、毎日生きるための栄養をとるために家庭料理があり、それを発展させていきました。
中世の時代、一握りのお金持ちたちと一般庶民との生活には天と地ほどの差があったのです。
対極にあるように見えるそれぞれの食文化ですが、いかに贅を尽くした宮廷料理といえども、その地域、風土の郷土食材をベースに発展したものには違いありません。

フランス革命と郷土料理の発展

そして、このふたつのフランス食文化が出会うきっかけになったのがフランス革命。
この大革命によって、権力の座から失墜した貴族たち。
彼らのお抱え料理人たちも職を失い、新しい仕事先として自ら街場でレストランを開きました。
これにより、今までは一部の特権階級しか接することができなかった料理やその技術が、一般の庶民にまで広まることになりました。
特にリヨンでは、大きなブルジョワ家庭に仕えてた女性たちがレストランを開くことになります。
”リヨンのお母さん”と呼ばれた彼女たちが、絹織工や絹織業従事者向けの食堂を開き、ブルジョア料理と家庭料理を融合させ、シンプルで質の高い料理を作りだし、誰にでもふるまったのです。
こうして今日まで伝わるリヨンの郷土料理が生み出され発展していきました。
■ローヌ川の向こう側に絹職工が暮らしていた

ブション(Bouchon)

伝統的なリヨンの郷土料理は現在、ブション(Bouchon) と呼ばれるレストランで食べることができます。
ブションとは、典型的なリヨン風(庶民的)な雰囲気のなか、地元料理とワインを食べられる店のこと。
しかし、リヨンの観光の目玉としてあまりにも名物になりすぎ、観光客相手の偽ブションが乱立したため、近年ではブションの定義に基づいて称号を認定をしているそう。
”本物のブションは,真の地域産物をベースにし,リヨン料理の神髄の伝統を受け継ぐとともに,喜びと愉快さに満ちた暖かな家庭的な受け入れ場でなければならない”
豊富な肉製品と乳製品からなるリヨンの郷土料理は次回紹介します。
■開店前のブション。郷土料理を楽しむお客のわいわいとした愉快な声が聞こえてきそう
■ワイングラスをもった人形のついたマークは本物のリヨンのブションである称号
※このテーマは、次回に続きます。
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。