フランス人にとって日常欠かせない食品
その3

ミルクの国の食だより 連載一覧

コラム、「ミルクの国の食だより」の第76回をお送りします。前回に続き、フランスで欠かせない食品の紹介です。外出制限下では、牛乳乳製品の販売量が前年を大きく上回ったようです。

フランス人にとって日常欠かせない食品 その3

10位 サラダ

調理されたものではなく、レタス、サラダ菜、エンダイブなどのちしゃ類、生で食べる葉もの野菜をフランスではサラダと呼びます。
スーパーでは洗浄済みでパックされたサラダも種類が豊富です。

季節の野菜はマルシェ(野外市場)で買い求める人が多いのですが、外出制限中は閉鎖中。

その解決策として地元で生産された野菜、果物、肉、卵、チーズなどの農産物を購入できる場所をオンライン地図上に示したり、それらを調達するための方法を示したりするなど、地域の農家と消費者をつなぐプラットフォームがこれまで以上に広がりを見せています。
  • 「コロナ危機の間にリヨンで地元食品を食べる」と題し、調達方法別に色分けされて消費者に共有された地図。3月末には約83の生産者と約70の食料品店が掲載された(画像は5月中旬のため、再開されたマルシェも掲載されている)

11位 バター

家庭での料理や菓子作りに欠かせないバター。
外出制限期中、子供たちと菓子やパン作りを行う家庭が多くあり、小麦粉、卵と同様にバターも品数は少なくなりました。

自宅待機中は日光を浴びる機会が少なくなりビタミンD不足が懸念されることから、バターなどの食品から摂取をすることが推奨されています。
  • 菓子作りに欠かせないバター、卵、小麦粉は外出制限中、スーパーでの欠品が目立った食品

12位 牛乳

ライフスタイルの変化に伴い消費量は減少してはいますが、牛乳はフランス人にとって日常欠かせない食品です。
そのまま飲む人は少なく、カフェオレやショコラショーなどの形で飲まれたり、菓子作りに利用されたりしています。

フランスでは飲用乳全体の約 9 割が常温流通可能なUHT 牛乳なので、買い置きに便利。乳脂肪量によってキャップが色分けされていて、赤が全脂乳、青が低脂肪牛乳、緑が無脂肪牛乳という具合。
流通量が多いのは青いキャップの低脂肪牛乳ですが、育ち盛りの子供がいるわが家では、脂溶性ビタミン量が多い赤いキャップの全脂乳を購入するようにしています。外出制限期間中は全脂乳は欠品が多く、ほとんど低脂肪牛乳ばかり並んでいました。

家庭での消費は急増しましたが、UHT牛乳、クリーム、シュレッドチーズなどスーパーマーケット向けに大量生産される品は不足することはありませんでした。

一方、レストラン閉鎖などにより原産地呼称製品など小規模生産されているチーズなどの乳製品は需要が激減しました。
牧草が豊かになる4月は乳の生産がピークとなる時期において、酪農家は生乳の生産量を減らすよう求められています。
  • フランスではUHT牛乳が多いので、買い置きに便利。脂肪量によってキャップの色が異なり、赤は全脂乳
    詳細は 第2回 牛乳の選び方-1 をご覧ください

13位 砂糖

甜菜(テンサイ)から作られるグラニュー糖と未精製のサトウキビから作られるブラウンシュガーが利用されています。
日本の手作り菓子に比べ砂糖をたくさん入れたレシピが多くあります。

卵、小麦粉と同じく品薄状態が続きました。

14位 米

長粒米が多く、輸入で賄われています。パスタと並んで保存がきいて主食になる食材のため、欠品が目立ちました。

15位 お茶



コロナと付き合い続ける社会で求められる消費行動とは

フランスで暮らすいち消費者としては、酪農大国でしかも食料自給率120%を超えるのだから、牛乳はもちろん、ほかの農畜産物についても入手できなくなるということはないだろうと安易に考えていました。
実際、時折欠品はあったものの、代替品を見つけることもでき日常の食品調達に困ることはありませんでした。

しかし、農業大国といえども小麦粉やパスタだけでなく、果物と野菜においてはフランス国内で栽培できる領土があるにもかかわらず、消費されているうちの50%近くを価格が安い外国からの輸入に頼っています。
トラック輸送、航空交通の急減によって生鮮食品の長距離輸送能力が大幅に失われている今、入手可能性ということだけを考えても自分たちの食の基本は国内の農産物だということを自覚するべきだと強く感じました。

フランス人にとって生活に欠かせない食品は多々ありますが、現在の健康危機に直面して以来、地元産品を消費したいという欲求や持続可能な生産と生活を支えるために、責任のある消費行動をしたいと考える人が増えています。

コロナと付き合い続けることが求められた今、食べ物を身近で賄うこと、食品の廃棄を減らすことは、すべての人が最優先に考えなければならない課題なのだと思います。

スーパーマーケットなどにおける外出制限中の牛乳乳製品販売量

グラフ解説

  • フランス Web-agri のニュースサイト より
  • 表題:スーパーマーケットなどにおける外出制限中の牛乳乳製品販売量 / (重量あたり2019年比較/単位=%)/ 出典: CNIEL/IRI(フランス全国酪農経済センター)
  • 棒グラフ左から バター、クリーム、牛乳類、チルド乳製品類、パッケージチーズ
  • S11:3/9-15、S12:3/16-22、S13:3/23-29、S14:3/30-4/5、S15:4/6-12、S16:4/13-19
  •  外出制限中、牛乳乳製品はどれも販売量が増加したが、特に牛乳類は3/9~3/22の間は前年比で70%以上増加した。
 
管理栄養士 吉野綾美

1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。