第十九話 発酵の不思議(2)

元気くん一家のミラクルミルクライフ

日本初! 食育小説「元気くん一家のミラクル ミルク ライフ」の第19回です。

前回に続き、発酵食品のお話です。おうちで作れるヨーグルトのご紹介も!

乳酸菌とヨーグルト

家族そろっての日曜日の朝食が終わるころ、愛ちゃんが食べていたヨーグルトをスプーンでかき混ぜ始めました。

「食べ物で遊んじゃダメだよ。」見ていた元気くんが注意すると

「だって、おもしろいよー。のむヨーグルトみたいになってきたもん。」

「わぁ、ホントだ。」元気くんまで、真似し始めました。

「二人してなにしているの?」お母さんが気が付きました。

「これはね、乳酸菌が固めたヨーグルト、固まった状態をカードというんだけど、かき混ぜたことでカードがくずれたのね。」

「そうなんだ。飲んでみよう。味は変わんないね。」

「売っている、のむヨーグルトも工場のタンクの中で羽根が回って、カードをくずしているのよ。」

「前に栄養は食べるヨーグルトと変わらないって言ってたね」とおばあちゃん。

ヨーグルトは家でも作れる

「今日は予定もないから、これから家で作ってみましょうか?」

「えーっ、ヨーグルトって家で作れるのか?」お父さんも興味がありそうです。

「今から作れば、午後のおやつに間に合うと思うわ。」

「材料はあるの?」と愛ちゃん。

「ええ、牛乳とプレーンヨーグルトでできるから、あるわよ。」お母さんがキッチンに向かいました。

「器具は?」元気くんが聞きました。

「これよ。」お母さんが戸棚から取り出したのを見て「何?初めて見た。」と愛ちゃんが尋ねると「懐かしいね。最近は使うこと無くなったけど『魔法瓶』って言うんだよ。お湯を沸かして入れておくと冷めないの。」とおばあちゃんが答えました。

「ヨーグルトメーカーという専用の電気で作る器具があるし、電子レンジで作る人もいるみたい。温度が重要なの。」お母さんが、やかんでお湯を沸かし始めました。

魔法瓶でヨーグルト作り

やかんから湯気が出てきたので沸騰した湯を、きれいに洗った魔法瓶に入れました。
そして魔法瓶の中がしっかり温まってから湯を捨てました。冷蔵庫から封を切っていない新しい牛乳を開けて、魔法瓶に入れます。

「ヨーグルトの量は牛乳の1割くらい。100g量って入れるわね。」

「楽しみだね~。」

昼食の時、愛ちゃんが中を見たいとせがみました。

「ちょっとだけ出してみましょう。」「まだあまり変化はないね。」

「本当は中の温度が下がるといけないから開けたくなかったのよ。」

「味は?」

「少しだけ酸味が出てきたよ。」

「愛も味見する。」

「牛乳の中の糖分、乳糖というんだけど、ヨーグルトの中の乳酸菌が分解して乳酸を作り出すの。これが発酵ね。さわやかな酸味が生まれるわ。」

牛乳が固まるナゾ

「そろそろ、いいんじゃないか。」お父さんもリビングに来ました。

「お腹すいた。」愛ちゃんが言うと

「お昼食べたのにもう?」とおばあちゃんが笑っています。

「僕も早く食べたいよ。」

「どうかな。いつも食べてるプレーンヨーグルトよりはちょっとゆるいけど固まったね。」

「不思議。」愛ちゃんが目を丸くしています。

「どうして固まったの?」と元気くん。

「たんぱく質は酸で固まる性質があるの。牛乳の中のカゼインというたんぱく質が乳酸菌が作った乳酸で固まったのよ。」

「売っているヨーグルトは1ml中、1㎝×1cm×1cmの中に1億くらいの乳酸菌がいるの。そこまで増えたかはわからないけど、乳酸が増えて酸っぱくなるのと同時に、乳酸菌も栄養をもらって増えていくのよ。」

詳しい説明に「魔法瓶はヨーグルトの工場だね。」元気くんが言うと、

「愛には難しいな。魔法瓶の中で魔法が起きたみたい。」

みんなで試食

「先ずそのまま食べて、好みでハチミツをどうぞ。」「美味しいね。」「うん。」「手作りする時に注意することはある?おばあちゃんも作ってみたいから。」

「清潔な容器を使って、温度を40℃くらいに保つようにすることですね。今日は6時間くらいかかりました。作ったヨーグルトは早めに食べてくださいね。今晩何にしようかしら。」

元気くん、愛ちゃん、2人そろって「カレー!」

「では、ごぼうがあるからヨーグルトカレーを作るわ。」

「やったぁ。」

「ごぼう食べられるかな。」ちょっと不安そうな愛ちゃんでした。

管理栄養士のお母さんから

■ゴボウと舞茸のヨーグルトカレー (画像クリックでJミルク レシピサイトへ)
 

ヨーグルトの製造方法

■ヨーグルトの製造方法
手作りヨーグルトの作り方も掲載されています。
http://www.j-milk.jp/findnew/chapter3/0502.html  (Jミルク 牛乳乳製品の知識 find newへ)
※このテーマは (3)チーズに続きます。
管理栄養士・消費生活アドバイザー・フードコーディネーター 加藤明子
牛乳・乳製品の相談業務を平成6年より担当し、食育授業、料理講習会、勉強会等で講師を務めている。近年は小中学校における食育授業、学校栄養職員、教諭、PTA等の研修や講習会、大学での授業、フードコーディネーター養成講座の講師など、東京、埼玉、千葉、神奈川を中心に活動している。