牧場を訪ねて

食育実践記 ミルクに学ぼう

牛の乳房って大きい!牛のお乳ってあたたかい! これが牛乳になるんだね。

【食育実践記】ミルクに学ぼう(1/8) 
見て、聞いて、さわって、牛乳の原点を感じてみよう!
今回は、高橋さんと太田さん親子が牧場を訪問。乳しぼりやエサやりを体験してきました。

牛たちが暮らす牧場は牛乳のふるさと。毎日どんな生活をしているのかな?

牧場体験の前に牛の種類や特徴、世話をするときの注意を聞きます。牛はおとなしいけれどこわがりだから、大きな音で驚かせたりしない、危ないところには入らない、牛の世話をしたら手をよく洗うことを約束。

牛は体重が600~700kgもある草食動物です。牧場には子牛を産んだお母さん牛がたくさんいて、1頭で1日約25リットルものお乳を出しています。

牧場の大切な仕事は、牛のいる場所を清潔に整え、栄養バランスの良いエサを食べさせて健康に過ごさせること。こうした毎日の世話が、良い牛乳をたくさんつくるためには欠かせません。牧場で働く人たちは牛のお母さんになったつもりで、毎日、牛の世話をしているそうです。
  • ▲朝、この牧場でしぼった牛乳を試飲。いつもの牛乳と違う味?

牛はデリケート。季節やエサ、体調によってお乳を出す量が変わります。

この牧場では朝の6時からお乳をしぼり(さく乳)ます。

まず、牛の乳房をきれいに拭いてミルカーという機械をつけます。ミルカーは子牛がお乳を飲むのと同じように乳首を吸引し、お乳をどんどん吸い込む機械です。

昔は手でしぼっていましたが、この機械を使うと、牛の乳房から出たお乳は牛舎の中のパイプラインを通って、外気に触れることなく清潔に一カ所に集められ、すぐに冷却されます。

1頭につき5分ぐらいでしぼれるので7時には作業が終了。9時ぐらいまでは牛舎の掃除をします。 
  • ▲上手にお乳をしぼると牛はごきげん。お乳を出さずにいると病気になることも。
牛は寒さには強く、暑さに弱い動物です。体調が悪くなると、お乳もよく出ません。

暑い時期には大きな扇風機で牛舎内を涼しくしてやります。エサも乾草だけではお乳の量が少なくなってしまうため、トウモロコシや大麦といった栄養たっぷりの飼料を、牛の体調に合わせて与えます。

そして、夕方になったら、もう一度、掃除をしてエサをやり、6時から7時ごろまでさく乳。
牛たちが気持ちよく休めるように、きれいな「おがくず」や「稲ワラ」をしいて、牧場の一日の仕事はおしまいです。
  • ▲大量の乾草をあっという間に食べてしまう牛の胃袋は4つ。

毎月、2~3頭の子牛が生まれ、子牛たちは粉ミルクで育てます。

お母さん牛にエサをやったら次は子牛の食事です。牧場では1年を通じて平均的な量の牛乳を生産するために、計画的に妊娠・出産をさせており、毎月2~3頭の子牛が生まれます。
そして300日ぐらいのさく乳期間後、2~3カ月の休みをとって次の出産に備えるのです。

お母さん牛が出す最初のお乳「初乳」は子牛に飲ませ、子牛の免疫力を高めます。
その後、子牛は粉ミルクを飲んで育ちます。そして「初乳」後のお乳は、人間がもらっているのです。
 
牛の出産や出荷、全体の管理をしながら、ミルカーなどの洗浄、牛舎から出た糞や尿をおがくずと混ぜて堆肥にしたり、といった仕事も行ないます。
 
どれも、安心でおいしい牛乳をつくるために大切な牧場の仕事なのです。
  • ▲勢いよく粉ミルクをゴクゴク。健康で丈夫な牛に育ってね。

ペットボトルでバター作り体験。アイスクリームもおいしいよ。

当日の朝にさく乳したばかりの牛乳を使い、バターやアイスクリームをつくりました。
牛乳をペットボトルに入れて15分ほど振っていると、牛乳に含まれる脂肪の粒同士がだんだんくっついて、かたまりになっていきます。
茶漉しで漉すと、ほんのひとかたまりのバターがあらわれました。

バターを取った後の液体は無脂肪牛乳です。

アイスクリームは、卵と砂糖、牛乳、生クリームを混ぜ合わせ、アイスクリーマーに入れてぐるぐる混ぜればできあがり。

どちらも新鮮な牛乳のおいしさがたっぷり味わえました。

  • ▲塩で味つけすればバターの完成

体験しての感想

●高橋さん親子(神奈川県川崎市在住)
「牧場のみなさんが牛に名前をつけ、顔が見分けられると聞いて大切に育てているんだなあと感心しました。本来、子牛が飲むお乳を人間がいただいていることに感謝したい。牛を身近に感じられる体験でした。」(彰美さん)「エサやりが楽しかった。牛は大きかったけどこわくなかったよ。」(健悟くん)

●太田さん親子(神奈川県横浜市在住)
「エサやり、乳しぼりなど貴重な体験ができて良かったです。バターづくりでは、元の牛乳の量に比べて少しのバターしかつくれないのを知り、ありがたいものだと思いました。」(信子さん)「乳しぼりでピュッと出たお乳が手にあたって、お乳があたたかいのがわかった」(開(はるき)くん) 

食育コラム:知識より体験を

管理栄養士 吉川直美さん

最近のこどもは牧場に行って、「コーヒー牛乳を出す牛はどれ?」って聞くとか。牛乳が、牛のお乳だということは知っていても、どんな風にお乳が出てくるのか、しぼるのか、知らないこどもが増えてきているようです。こどもばかりではなく、おとなも同じようなものかもしれません。牛乳とジュースの違いについて、考えてみてください。

牛乳は、「いのち」につながるものですが、スーパーで牛乳を買う暮らしの中では、それを実感できることはありません。今回、牧場体験に参加した健悟くんと開くんは、牛のようすを見ながら、すべての牛にエサをあげました。「いのち」を感じた瞬間だったのではないでしょうか。たくさんの言葉より体験することが大切だと思います。 
ほわいと(2005夏)より