JR42 ミルクバリューチェーン
ミルクバリューチェーン
株式会社塚田牛乳(新潟県新潟市)
『120年の歴史の先で新しい魅力を発信する』
主力の瓶牛乳をシンボルに独自の「記念日」を制定
- 御社の創業以来の歴史と現在の事業概要をお聞かせください。
塚田正幸 氏(以下、塚田会長) 弊社の創業は1901(明治34)年です。初代社長の塚田甚太郎が、現在の上越市名立区で乳牛の飼育と牛乳の製造販売を始めました。戦後の1951年に法人を設立し、株式会社塚田牛乳となりました。
1964年の新潟地震では社屋や生産設備に壊滅的被害を受けましたが、被災を乗り越え、67年には当時として北陸随一の規模の工場を建設しています。
私が4代目の社長に就任したのは1991年です。社会的にもニーズが高まっていた品質管理をさらに強化したいと考え、99年に牛乳部門のHACCPを取得し、翌年には全ての瓶容器が自主回収容器に認定されました。
2000年代に入ってからは、廃水処理設備の増強や、工場熱源を重油から天然ガスボイラーに切り替えCO2と燃料費の削減を図るなど、環境に配慮した設備改修も進めてきました。こうした取り組みも評価され、2012年には牛乳等衛生功労者の厚生労働大臣表彰を受賞しています。
そして創業120周年にあたる今年、5代目社長に塚田忠幸が就任し、私は会長職に就いています。
塚田忠幸 氏(以下、塚田社長) 現在弊社は、県内約130の特約店を通じて宅配事業を展開しています。主力商品の「SEND牛乳」をはじめ、「フルーツミックス」、「塚田珈琲」、「あずきヨーグルト」などをいずれも瓶容器で提供しています。
店頭販売商品は、紙パック牛乳や乳飲料、生クリーム、バター、植物性乳酸菌ヨーグルト、ワッフル等があります。主な取引先は宅配、学乳に加えて、県内スーパー、ホテル、飲食店、洋菓子店、病院のほか、都内の一部コンビニでも販売しています。
今後も弊社の強みである宅配シェアをさらに押し上げつつ、新潟県ナンバーワン企業を目指し、量販店や観光施設等にも積極的なアプローチを行っていきたいと考えています。
- 創業120周年に合わせて、独自の記念日を制定されたことが話題になりました。
塚田社長 7月20日を「塚田牛乳SENDの日」とすることが、日本記念日協会によって認定されました。
120周年を迎えるにあたって、「塚田牛乳の誕生日をつくろう」という社内からの声がきっかけです。代表商品である「SEND牛乳」をシンボルに、環境にやさしく新鮮な宅配瓶牛乳の魅力や、県産牛乳と地域社会のつながりなどを発信する記念日にしたいと思っています。
認定のニュースは地元メディアで取り上げられ、SNS上でも多くの反響が寄せられました。皆さまからの塚田牛乳への愛情に対して、私たちもあらためて感謝する機会になりました。
瓶牛乳のオンライン販売で懐かしいあの味を自宅でも
- SNSやオンライン販売など、ネット利用も積極的に取り組まれていますね。
塚田社長 今年4月から公式SNSを開設して、日々の情報発信やコミュニケーションに活用しています。弊社からの発信だけでなく、地域のパン屋さんやカフェ、飲食店や個人のお客さまが、「#塚田牛乳」を使って投稿してくれることで輪が広がっていますね。
コロナ後の新たな生活様式の中では、コミュニケーションのあり方にも変化があると思います。時代にフィットするツールを活用しながら、お客さまや地域の皆さんと心の通うつながりをこれからも広げていけたらと思っています。
このSNSがきっかけとなった新たな取り組みのひとつが、瓶牛乳のオンライン販売です。
「学校給食で塚田牛乳を飲んでいたけど、今は県外に住んでいて手に入らない」、「帰省のたびに買っていたがコロナ禍で購入できない」といった声がSNSに寄せられたことから、学校給食で親しんだあの味を自宅でも楽しんでいただきたい、瓶牛乳を知らない世代にも良さを伝えたいと考え、オンライン販売を開始します。
塚田会長 1960年代に全国で学校給食への国産牛乳の提供が始まったころ、弊社でも県内での学乳提供を開始し、現在は約130校に供給しています。
近年、学校給食の安全性や品質への関心が高まっていることを受け、2010年に学乳専用瓶をつくり、品質に一層の注意を払って提供しています。大切な成長期に弊社の牛乳を飲んで、健康で大きくなってほしいという思いで毎日出荷しているので、学生時代に飲んだ牛乳を大人になってからも懐かしみ、お求めいただけるのはうれしいことです。
- 地域の企業や店舗とのコラボではどんな事例がありますか。
渡邊翠 氏(以下、渡邊) 県内最大規模の産直通販サイト「新潟直送計画」さんで昨年から弊社乳製品を販売しています。今年9月には直送計画がオープンした実店舗「KITAMAE」(新潟市中央区)さんと店内カフェのスイーツなどでコラボさせていただいております。
新潟市秋津区の「にいつ駄菓子の駅+昭和のなつかし屋」さんとは公式インスタグラムを通じてつながりが生まれました。
昭和レトロをイメージした店内には学校の教室を模したスペースもあり、弊社の瓶牛乳をはじめ、学校給食の再現商品の展開などでコラボしています。巨大な蓋開けピックや塚田牛乳の牛がデザインされたスタンドなども作っていただき、新たな「塚田牛乳スポット」として地域のお客さまに親しまれています。
若手研究者の育成も支援 多面的に深める地域との絆
- オンライン販売や新たな取引先との関係づくりを進めるうえで、どんな課題がありましたか。
渡邊 乳製品のオンライン販売は初めてだったので、手探り状態からのスタートでした。商品を選ぶとき、届いたとき、箱を開けて味わったとき、かつて学校給食で親しんだ「懐かしさ」と、現在の塚田牛乳がお届けする「新しさ」の両方を感じていただきたいと考えました。
課題となったのがギフトボックスの作成で、瓶やプリン、ワッフルなどさまざまな形状の商品を箱詰めして、いかに美しく届けられるかという点が難しかったです。パッケージ業者と話し合いながら、配送テストを繰り返して修正を加えていきました。
また、オンライン販売という新しい取り組みに対する社内での理解醸成と情報共有にも時間をかけて取り組みました。お客さまへの思いを形にしてお届けすることがこんなにも難しく、また楽しいことだと感じ、関われたことに感謝しています。
- 持続可能な企業として、地域とのさらなる連携などで検討されていることは。
塚田会長 弊社は新潟大学農学部とのつながりが長く、授業の一環として飼育している牛の乳を毎日受け入れているほか、学生さんのインターンシップにも対応しています。また3代目社長の塚田実津江が創設した「新潟大学塚田医学奨学基金」を通じて若手医学研究者への助成活動も行っています。
今後も県内の企業やイベントとのコラボや協力を通じて、地元新潟とのつながりを深めてほしいと思っています。
- Jミルクへのご要望などをお聞かせください。
塚田社長 今年の牛乳の日・牛乳月間に開催した「#ミルクのバトンリレー2021」企画は、牛乳の普及に関して同じ志を持つ仲間が集まれば、発信力がもっと大きくなると思い参加させていただきました。
弊社では工場で働く社員たちの牛乳や商品への思いを知ってほしいと考え、任意で撮影に協力してもらいました。見ていただいたお客さまとの距離が近づき、乳業会社の仕事を伝えるという点でも、いいきっかけになったと感じています。
Jミルクさんは酪農乳業全般に関する多くの情報を提供されており、私たちもいつも勉強させていただいています。今後も地域の乳業メーカーや酪農を支えるさまざまな取り組みを期待しています。