BSE関連情報

BSEに関する参考文献、リンク集をご紹介します。

BSE発生情報

※厚生労働省「我が国におけるBSEの発生状況」より引用
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/shuninsha/pdf/1604_meguru_02.pdf

牛乳乳製品の安全性を示す根拠(2001年9月13日)

1. 出典
Taylor D.M., Ferguson C.E., Bostock C.J., and Dawson M. Absence of disease in mice receiving milk from cows with bovine spongiform encephalopathy. Vet. Rec.,(1995) 136, 592.

2. 概要
(1) 試験方法
BSEの症状を示している6頭の乳牛(搾乳初期、中期、後期各々2頭ずつ)から各々搾乳した1Oリットルの生乳を用いた。
A群の離乳直後のマウスには脳内(0.02ml)と腹腔内(0.1ml)に生乳を接種して653日目まで神経症状を観察した。また、この脳内接種法(0.02ml)はマウスに4リットルの生乳を飲用投与する試験に相当する。
B群の離乳直後のマウスには飲用水の代わりに生乳を1日当たり10mlを40日間給与(平均飲用量は300ml)して702日目まで神経症状を観察した。
(2) 試験結果
A群及びB群のいずれの離乳直後のマウスも神経症状、牛海綿状脳症、他の特異的な病理症状を示さなかった。
B群の飲用量を70kgの体重の成人に換算すると、BSEの症状を呈している乳牛の生乳を1日当たり568ml(1paint)を毎日6.75年間にわたって消費する量に相当する。
(3) 結論
BSEの症状を呈している乳牛由来の生乳を投与し、300日以上生存した乳のみマウス275匹のいずれにも神経症状を呈しなかった。

原文: Absence of disease in mice receiving milk from cows with bovine spongiform encephalopathy
D.M.Taylor,C.E.Ferguson,C.J.Bostock,M.Dawson
Veterinary Record (1995)136,592

NUMEROUS tissues and secretions from cattle confirmed to be naturally affected with bovine spongiform encephalopathy(BSE) have been injected into or fed to mice and, with the exception of brain and spinal cord, all have failed to transmit disease (Barlow and Middleton 1990, Fraser and others 1992, Fraser and Foster 1994). This brief report describes experiments in which milk from cows with confirmed BSE was given to mice by drinking or injection.

Ten liters of milk were collected from each of six pregnant cows showing clinical signs of having bovine spongiform encephalopathy(BSE) which was confirmed subsequently by neurohistopathlogcal examination. Two of the cases were in early lactation(EL), two in mid-lactation(ML) and two in late lactation(LL). Aliquots from each sample were injected into groups of RIII/FaDk weanling mice by the combined intracerebral (0.02ml) and intrapenitoneal (0.1ml) routes; following inoculation the mice were observed for up to 653 days for clinical signs of neurological disease. Other groups of RIII were permitted to drink each milk sample by substituting milk for drinking water at a rate of 10 ml per mouse pet day for a total of 40 days. Of the 40 ml of milk offered to each mouse the average consumption was 300 ml. These mice were observed for clinical nauropathological disease for up to 702 days. Brains from all mice were examined neurohistopathologically.

None of the mice developed clinical signs of neurological disease, spongiform encephalopathy or other specific pathology. Table 1 shows the numbers of mice in each of the injection or drinking experiments. As in all long term bioassays, there were interconnect losses. Those mice which died less than 300 days after the experiments were initiated have been omitted from the data because it is known from the titration of infectivity in three BSE-affected bovine brains that the minimum incubation period in RIII mice was 317 days. This compares with an average incubation period of 424 days in mice injected with limiting dilutions of infectivity (H, Fraser, personal, communication). Table 1 also identifies the numbers of mice surviving beyond 600 days which approximates to the longest incubation period observed in individual RIII mice injected with homogenized and diluted bur otherwise uncreated BSE infected brain or spinal cord material(Taylor and other 1994, H, Fraser, personal, communication).
The average volume of milk that was consumed by mice was 300 ml and represents the only controlled method to assay infectivity in large volumes of material by transmission to mice. Such a volume is equivalent, on a weight-to-weight basis, of an average human adult (taken as 70 kg) consuming a pint of milk from a BSE-affected cow per day for 6-75 years. Such a comparison may not accurately reflect the risk factor for man, since total dose of infectivity is more likely to be related to the absolute volume of milk consumed than to the relative volume related on a bodyweight basis. Even though negative transmission following intracerebral inoculation a very small volume (20μl) of milk, the failure to detect infectivity is reassuring. One estimate of the relative efficiency of the intracerebral versus the oral routes of infection of mice with BSE-affected material suggests that intracerebral injection is some 2×103 more efficient than oral challenge (Kimberlin 1994). On this basis an intracerebral inoculation of 20μl is an equivalent dose to a mouse orally consuming about 4 liters of milk.
The results show that no neurological disease occurred in any of the 275 mice which survived for more than 300 days after drinking or injection with milk from cases of BSE. This adds to the considerable number of bovine tissues and secretions which have failed to demonstrate any BSE infectivity in bioassay in RIII mice.

Acknowledgement.- this work was funded by a grant from the Ministry of Agriculture, Fisheries and Food.

References
BARLOW,R.M & MIDDLETON,D.J(1990) veterinary Record 126,111
FRASER, H.,BRUCE,M.E.CHRES,A.,McCONNELL,I.& WELLS,G.A.H.(1992) Journal of General Virology 73, 1891
FRASER, H. & FOSTER,J.D.(1994) Proceedings of a Consultation on BSE with the Scientific Veterinary Committee of the Commission of the European Communities. Brussels September 14-15 1993. Eds R.Bradley and B.Marchant, p145
KIMBBRLIN, R.H.(1994) Proceedings of a Consultation on BSE with the Scientific Veterinary Committee of the Commission of the European Communities.
Brussels, September 14-15, 1993. Eds R.Bradly and B.marchant. p455
TAYLOR, D.M.,FRASER,H.,McCONNELL,I.,BROWN,D.A.,BROWN.K.L.,LAMZA,K,A, & SMITH,O.R.A(1994) Archives of Virology 139,313

BSEと牛乳の安全性(2002年4月1日)

 MILK通信II ほわいと(2002年春号より)
2001年9月10日、千葉県で飼育されていた1頭の乳牛がBSEの疑いがあることが発表され、日本全国が「狂牛病」パニックに襲われました。
BSEとはどんな病気であるのか?本当に牛乳・乳製品は安全なのかを検証していきます。

日本生物科学研究所理事・主任研究員 山内一也

BSEは、1986年に英国ではじめて発生が確認されて以来、90年代にはEU諸国に感染が拡大。96年に英国政府が、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の10人の若い患者が、BSEから感染した変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の可能性があると発表し、衝撃を与えました。BSEは、Bovine Spongiform Encephalopathyの略で、牛海綿状脳症と訳しています。「狂牛病」は、英国の農民がつけた名称の和訳で、正式な名称ではありません。

BSEは、牛どうしの接触や空気を介してうつることはなく、この病気にかかった牛の脳、脊髄、眼や回腸遠位部(小腸の最後の部分)に含まれる病原体(異常プリオンたんぱく)を、他の牛が摂取することで感染します。正常なプリオンたんぱくはいろいろな種類の組織、特に脳には多量に存在し、異常プリオンたんぱくと接触すると異常プリオンたんぱくへ変換され、組織に蓄積されます。そして異常プリオンたんぱくが増えることによって、脳細胞が死滅し、行動や運動の異常などの症状を示し、最後に牛は死にいたるのです。

さて、BSEが人にうつるとvCJDになるといわれており、その因果関係は学問的にはっきり証明されてきています。vCJDはこれまでに、英国で114名、フランスで5名、アイルランド、イタリア、香港で各1名の発症が確認されました。英国で発症例が多いのは、89年以前はミートパイなどに、異常プリオンたんぱくが多く蓄積するとされる牛の脳を使っていたことが原因ではないかといわれています。英国では公式に確認されただけで18万頭余の牛にBSEが発生していますが、実際には75万頭のBSE牛が食用にまわされたと推定されています。
わが国では、牛の脳・脊髄などを食用する習慣がないこと、またこれまでのBSE対策により、人がvCJDを発症する心配はほとんどないと考えられています。

臓器分類ごとの感染リスク区分
(EU医薬品審査庁によるスクレイピー感染羊の成績)表中の*印はBSE牛で感染が検出された臓器。
カテゴリー1
(高度感染性)
 脳*、脊髄*、眼*
カテゴリー2
(中等度感染性)
 回腸遠位部(尾に近い部分)、リンパ節、脾臓、扁桃、結腸近位部(頭に近い部分)、硬膜、松果体、胎盤、脳脊髄液、下垂体、副腎
カテゴリー3
(低感染性)
 結腸遠位部、鼻粘膜、末梢神経節、骨髄、肝臓、肺、膵臓、胸腺
カテゴリー4
(検出可能な感染性なし)
 凝血、糞便、心臓、腎臓、乳腺、乳汁、卵巣、唾液、唾液腺、精嚢、血清、骨格筋、睾丸、甲状腺、子宮、胎児組織、胆汁、骨、軟骨組織、毛、結合組織、皮膚、尿
 
牛乳の安全性は不変

とかく話題にのぼる「牛乳・乳製品、牛肉は食用しても安全なのか」という問いに対する答えはひとことでいえば「安全」ということになります。

BSEの病原体とみなされる異常プリオンたんぱくは、脳・脊髄などで見つかります。英国でBSEにかかった牛のいろいろな部分をマウスの脳内に接種した試験の結果、感染が見られたのは脳・脊髄・眼及び回腸遠位部などで、牛乳や乳腺、食用となる骨格筋では感染が見られませんでした。こうした結果から、牛乳・乳製品や牛肉は国際獣疫事務局(OIE)の基準でも規制の対象になっていません。また、EU医薬品審査庁の臓器のリスク区分(表)においてもカテゴリー4「検出可能な感染性なし」となっています。

牛乳の安全性について、もう少し詳しく説明しましょう。

BSEの牛の乳に人への感染性がないことは、マウスへの脳内接種で確認されてきました。脳内接種は経口接種(口から与える)の10万倍の感染効率があることが実験的に確かめられており、脳内に投与したサンプル量の10万倍の量を経口で与えたものと同等とみなされています。マウスはサルよりもBSEに対する感受性が高い動物です。したがって、サルと同じ霊長類である人には感染しないとみなせます。

さらに、牛の子も牛乳を飲んで育つということに注目してみましょう。牛という同じ種どうしでの経口接種です。ほかのプリオン病(人のクールーとCJD、羊のスクレイピー)でも同じです。そして96年に、WHOと欧州委員会の獣医科学委員会は、BSEが乳を介して牛の間で伝達されている証拠はなく、牛乳から人への感染の危険性は無視できると報告しています。同じ内容の結論を、英国の海綿状脳症諮問委員会が97年に発表しています。

また、2000年秋からのヨーロッパでのBSE急増を受けて、EUの科学運営委員会は、あらためて牛乳の安全性を検討し、01年3月に、以下の要点の見解を発表しました。

1.
 クールーやCJDの患者、BSEの牛、スクレイピーの羊のいずれでも、マウスへの脳内接種で、母乳に感染性が見つかったことはない。
2. 実験感染で、どのような種でも母から子に伝達性海綿状脳症が伝達された例がない。
3. 唯一の例外は、92年に孤発性CJDの妊婦の初乳が、脳内接種でマウスに感染を起こした報告だが、初乳接種後のマウスの脳に異常プリオンたんぱくは検出されず、初乳に感染性があったことは確認されていない。
4. クールーやCJDで母から子に病気がうつった疫学的また実験的証拠がない。
5. これまでにBSEの牛の母乳で育てられた子牛に病気がうつった例はない。
6. 英国でBSEを発病した牛から生まれた子牛でBSE例が多いということはなく、英国以外でBSEの牛からの子牛がBSEを発病した例も見つかっていない。

以上の検討結果から、これまでに何回かにわたって出されてきた牛乳の安全性に関する見解は、現在も変わってないのです。

行政のBSE対策

BSEの問題に対処するにあたって重要なことは、牛の間での感染の拡大を防ぐこと、そしてBSE病原体が人の体に入らなくすること、の2点です。
牛の感染拡大防止に関しては、すべての家畜への肉骨粉の使用を禁止した英国の政策が効果的であることは実証済みです。わが国でもBSEの主な感染源とされる牛の肉骨粉等について、すべての国からの輸入と国内での製造・出荷を一時停止にしました。BSEの感染経路が遮断されたといってもいいでしょう。牛などの反芻動物への反芻動物由来の肉骨粉の使用は、一時的でなく永久に禁止しなくてはなりません。

人への感染を防ぐという点では、特定危険部位を食用から排除、プリオン検査によってBSE感染牛を排除することによって、牛由来食品の安全性が確保されます。
牛乳はもともと安全であることから、とくに食肉への汚染を防止するために、農林水産省、厚生労働省が協力して以下の対策が実施されることになりました。

1.
 と畜場において、食肉処理を行うすべての牛について、BSE迅速検査の実施 
2. と畜場においてBSE感染性がある特定部位である脳、脊髄、眼、回腸遠位部についての除去・焼却 
3. 農場において、BSEが疑われる牛、その他中枢神経症状を呈する牛などについて、BSE検査を含む病性鑑定の実施。検査結果にかかわらず、と体はすべて焼却 

これにより、今後は安全な牛からのものだけが、と畜場から市場に出まわり、それ以外のものは食用としても飼料原料としてもいっさい出まわることがなくなりました。

グローバリゼイションが進んだ現在、感染症の予防対策は、非常に難しいことです。今後は農林水産省、厚生労働省だけでなく、家畜衛生、公衆衛生、臨床医など、幅広い人材を集めての科学的検討を行う独立したシステムができることが望まれます。

山内一也(やまのうち・かずや)
日本生物化学研究所理事・主任研究員
東京大学名誉教授、国際獣疫事務局(OIE)学術顧問。専門はウイルス学。1931年生まれ。54年東京大学農学部獣医学科卒業。北里研究所、国立予防衛生研究所を経て、79年東京大学医科学研究所実験動物研究施設教授。92年現職に。主な著書に『キラーウイルス感染症』(双葉社)、『プリオン病』(近代出版)、『狂牛病(BSE)・正しい知識』(河出書房新社)などがある。

ヨーロッパにおけるBSEの発生状況と牛乳乳製品の消費動向(2001年9月13日)

 - BSE発生後も、牛乳乳製品の消費量は減少していない - 

EUでは、まず、イギリスで1980年代後半から牛海綿状脳症(BSE)を発症する牛が増加し、他のヨーロッパ諸国でも90年代後半以降、BSEの発症が増加する傾向にある。
こうした中で、96年3月にイギリス政府が、BSEと人の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJV)との関係を完全に否定できないと発表してから、いわゆるBSE騒動が発生した。

しかし、その間のEUでの牛乳・乳製品の消費動向を見ると、ほぼ安定的に推移している。また、チーズの消費量については、増加傾向で推移している。

こうしたことからも分かるように、BSEに対する牛乳乳製品の安全性は、消費者の間で十分認識されている。

1. 牛海綿状脳症(BSE)の発症状況
2. 牛乳乳製品の消費動向

BSEに関する消費者向けQ&A (米国FDAより)(2001年9月13日)

米国の食料医薬品局(FDA: US Food and Drug Administration)は、2001年3月に消費者及びEUへの旅行者を対象に、牛海綿状脳症(BSE)に関するQ&Aを作成しました。本件は、そのうち、牛乳乳製品の記述部分を抜粋し、仮訳したものです。

Q: 米国内で購入した食品を摂取することにより、vCJD(変異型クロイツ・フェルト・ヤコブ病)に感染する可能性はありますか?
 
A: (一部抜粋)
牛乳及び乳製品については、BSEが発生又は発生するおそれのある31カ国から米国へ引き続き輸入されている。なぜなら、牛乳及び乳製品を通して、BSEが人へ伝播するいかなるリスクがないとされるからである。専門家によれば、BSEに感染した牛からの生乳を通しては、同種または他の実験動物に感染を引き起こすことはないことが証明されている。

【原文】
Q: Is it possible to get vCJD from eating food purchased in the United States ?

A: Milk and milk products continue to be imported into the US from these countries(the 31 countries identified as having BSE or at risk for having BSE) because milk and milk products are not believed to pose any risk for transmitting BSE to humans. Experiments have shown that milk from BSE-infected cows has not caused infections in the same species or in other test animals.

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Q: 米国の消費者がヨーロッパを旅行した場合、vCJD(変異型クロイツ・フェルト・ヤコブ病)に感染するリスクはどのようなものか。

A: (一部抜粋)
乳牛からの牛乳及び乳製品を通してBSEが伝播するいかなるリスクはないとされている。
なぜなら、専門家によれば、BSEに感染した牛からの生乳を通しては、同種または他の実験動物に感染を引き起こすことはないことが証明されているからである。

 【原文】
Q: What is the current risk to American consumers traveling to Europe of acquiring vCJD ?

A: Milk and milk products from cows are not believed to pose any risk for transmitting the BSE agent because experiments have shown that milk from BSE-infected cows has not caused BSE in cows or other test animals.