ウワサ1 ホモゲナイズされた牛乳の乳脂肪は“錆びた脂”

牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!

ウワサ1 ホモゲナイズされた牛乳の乳脂肪は“錆びた脂”

乳脂肪は、ホモゲナイズしても酸化しません。

● 外気と触れないから酸化の可能性がない
ホモゲナイズ(均質化)という工程は、外気と直接触れない装置の中で行われています。酸素(O2)が牛乳に溶け込むのは難しく、乳脂肪が酸化される可能性はほとんどありません。 

● 乳脂肪は脂肪球膜に包まれ、酸素と接触しない 
牛乳中には酸素がほとんど含まれていないので(※)、乳脂肪が酸素と接触する機会はほぼありません。そして乳脂肪は、乳たんぱく質の薄い膜に包まれており酸化されにくい形態になっています。 
※牛乳の酸素濃度は6ppm(100万分の6)ですから、ほとんどないといえます。 

● 酸化しやすい脂肪酸がもともと少ない 
もともと乳脂肪には、酸化しやすいといわれる二重結合の多い「多価不飽和脂肪酸」(リノール酸やリノレン酸)は少ししか含まれていません。 
実際に、生乳と紙パック入り牛乳について乳脂肪の酸化の程度を測って比べましたが、まったく差はなく、どちらも酸化は認められませんでした(財団法人日本食品分析センター2006年分析結果)。 

参考資料 
・ 文部科学省, 日本食品成分表2010, 東京, 2010.13. 乳類 
・ 林弘通, 福島正義, “乳業工学”, 幸書房, 1998, 23-36.

そもそも・・・「ホモゲナイズ」とは?「錆びる」ってどういうこと?

「ホモゲナイズ」とは?

牛乳工場では、生乳に圧力をかけて、図のようにせまい空間を通すことで、乳脂肪の塊(脂肪球)を小さくしています。この工程を「ホモゲナイズ」または「均質化」といいます。

搾ったばかりの生乳は脂肪球が大きく、脂肪は比重が軽いので浮いて分離してしまいます。ホモゲナイズによって乳脂肪を細かくすることで消化吸収を良くするとともに、乳脂肪分の分離を防いでいます。ホモゲナイズしても牛乳の成分はまったく変わりません。

「錆びる」ってどういうこと?

自転車が錆びてしまったという経験のある人は多いでしょう。これは、自転車の金属部分が空気中の酸素と水分に触れることによって起こります。一般的に「錆びる」とは物質が酸素と反応する化学変化を指し、この化学変化を「酸化※」といいます。

オイルポットに入れてあった食用油の風味が落ちた、これも酸化です。油が空気中の酸素に触れているうちに変質してしまったのです(厳密には酸素のほか水分や温度、光、微生物なども影響して劣化します)。

しかし、酸素の少ない環境下では、酸化は進みません。食用油も、封を切っていなければ保存がききます。食品の酸化を防ぐためには、空気に触れない状態にしておくことが大切です。

※正確には、原子あるいは分子が電子を失う化学反応のことです。 

もっと知りたい! 牛乳の脂肪分、「乳脂肪」のはなし

消化吸収されやすい乳脂肪分

  • 牛乳中の乳脂肪
    Schlimme & Buchheim「乳とその含有成分」
牛乳を光学顕微鏡で見ると、丸い球(脂肪球)がいくつも見えます。これは、牛乳の脂肪(油滴)です。
牛乳の脂肪は「乳脂肪」といい、牛乳1mL中に20.60億個も含まれています。乳脂肪はコクのある牛乳のおいしさのもとであり、大切なエネルギー源です。

乳脂肪は、脂肪球の1つ1つがたんぱく質を主成分とする膜(脂肪球膜)に包まれ、脂肪球どうしがくっつかないような状態で牛乳中に浮遊しています。この膜は、牛の乳腺上皮細胞から脂肪滴が出るときに、まるで包み紙のように脂肪球を覆います。このように乳脂肪は、小さい粒子として分散したまま存在するため消化・吸収されやすいのです。

そして、牛乳の製造過程では「ホモゲナイズ(均質化)」が行われ、乳脂肪はさらに小さくなってより多く舌にあたるようになり、濃くおいしく感じられるようになります。また、乳脂肪の消化吸収はさらに良くなります。

酸化・変質しにくい性質を持つ

乳脂肪には、酸化・変質しにくいという物理的特性があります。

脂肪酸は炭素原子が鎖状につながった分子で、炭素の二重結合がない飽和脂肪酸と、二重結合のある不飽和脂肪酸があります。脂肪の酸化のされやすさは、脂肪酸の二重結合(不飽和結合)の多さで決まります。

一般的な食用油である大豆油の場合、酸化されやすい二重結合が2個ある「リノール酸」や、3個ある「リノレン酸」が多く、牛乳は二重結合を1個だけ持っている「オレイン酸」の多いことが特徴です。したがって、乳脂肪は植物油に比べずっと酸化されにくいといえます。