ウワサ32 乳糖不耐は改善できる?

牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!

ウワサ32 乳糖不耐は改善できる?

牛乳乳製品の摂取を徐々に増やすことで、乳糖不耐を改善できる可能性があります。

 乳糖不耐は改善できる
牛乳乳製品に含まれる「乳糖」の消化不良による腹痛や下痢などの不快症状を、「乳糖不耐」といいます。決して病気ではなく、アレルギー(免疫反応)とも違うものですが、「体質だから」とあきらめている人も少なくないでしょう。
ですが、もしかすると、「おなかゴロゴロ…」は一生モノではないかもしれません。最新の研究から、乳糖不耐は摂取の仕方によって改善できる可能性があることがわかってきたのです。

 ポイントは「少しずつ」「続ける」こと
乳糖不耐の人でも、牛乳を少量から徐々に増やして飲み続けることによって、おなかをこわさず飲めるようになるという結果が、国内の臨床試験で報告されました(2020年)。
この試験では、乳糖不耐と診断された32人に、医師による指導のもと少量の摂取から始め、約40日後には29人(91%)が200mL程度の牛乳を飲めるようになりました。*1
また、乳糖不耐のアフリカ系アメリカ人を対象とした研究(2015年)では、乳糖を含む乳製品を6〜12週間にわたって摂取し続けることで、不快症状が改善したと報告されています。*2

 乳糖の「プレバイオティクス効果」って?
「おなかゴロゴロ」の原因と考えられる乳糖ですが、健康増進につながる大切な役割も担っています。
「善玉菌」や「悪玉菌」って聞いたことありますか? ヒトの腸内に常在する細菌の中で、ビフィズス菌や乳酸菌など健康にとって良い作用をするのは「善玉菌」。ブドウ球菌や毒性の高い大腸菌など、健康にとって悪い作用をするのが「悪玉菌」と呼ばれています。また、普段はどっち付かずで、何かのきっかけによって悪さを始める「日和見菌」もいます。近年、腸内細菌のバランスは免疫など全身の健康に大きく影響することが分かり、大変注目されています。
乳糖は、「善玉菌」であるビフィズス菌や乳酸菌の優れた栄養源(餌)になります。腸内細菌のバランスにおいて「善玉菌」が優勢となれば、健康増進につながることが期待できます。そして乳糖は「善玉菌」によって乳酸や酢酸に、さらにその他の腸内細菌によりプロピオン酸や酪酸などの「短鎖脂肪酸」に変わります。特に酪酸は、大腸で吸収されて腸管細胞のエネルギー源となります。
このように、有用菌の餌となって大腸で代謝されることで有用菌を活性化し、代謝産物で腸内環境の改善に寄与する食品を「プレバイオティクス」といいます。乳糖もまさにプレバイオティクスの一つです。

 腸内環境が良くなる→乳糖不耐の改善、という好循環
最新の研究から、腸内環境の改善によって乳糖不耐を解消できる可能性のあることが示されています。*3 乳糖不耐の人は小腸で十分に乳糖を消化できず、大腸へ行った乳糖の浸透圧効果で下痢を誘発していると考えられます。それでも、大腸内で善玉菌が優勢であれば乳糖は分解され、下痢にならないということです。
「牛乳を飲むと、おなかゴロゴロ」を感じている人も、少量から摂取を続けることで腸内細菌のバランスの改善につながり、さらには乳糖不耐の解消にもつながる、そんな好循環が生まれることが期待されます。
 
*1 第50回日本小児消化管機能研究会(乳糖不耐症臨床研究報告)より「牛乳乳製品摂取でおこす腹部自覚症状の原因検索の試み」
「乳糖吸収不全における牛乳漸増負荷治療の有用性と腸内細菌叢の変化」
*2 Adaptation to Lactose in Lactase Non-Persistent People: Effects on Intolerance and the Relationship between Dairy Food Consumption and Evaluation of Diseases (Nutrients 2015;7:6751-6779)
*3 Oku T, Nakamura S, Ichinose M. Maximum permissive dosage of lactose and lactitol for transitory diarrhea, and utilizable capacity for lactose in Japanese female adults. (J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2005;51(2):51-57)
 

もっと知りたい!その「おなかゴロゴロ」は、乳糖のせいではないかも?

「自分は乳糖不耐だから」という思い込みが、本当は乳糖不耐ではない人の体調にも影響する−−。そんな研究結果が報告されています。
前述の国内研究で、「牛乳を飲むとおなかをこわす」という自覚症状のある人(46人)に、乳糖吸収不全の確定診断のための検査をしたところ、陽性を示した真の乳糖不耐の人は35人(76%)でした。4人に1人は、おなかをこわす原因が乳糖ではない可能性があるということです。
偽薬なのに「この薬は効く」と信じて飲むと症状が良くなったように感じる効果を「プラセボ効果」といいます。その反対で、「これは身体に悪いものだ」と思うと、害のない食品を食べても具合が悪くなる(ように感じる)効果を「ノセボ効果」といいます。海外の研究では、「牛乳を飲むとおなかをこわす」という思い込みがあると、牛乳乳製品が含まれていることを知らずに食べているうちは何ら症状を感じないのに、知らされると症状を感じてしまうというノセボ効果事例も報告されています。
栄養学の専門家は、こうした思い込みによって牛乳乳製品の摂取を控えてしまうことで、栄養の偏りや不足につながるデメリットの可能性を懸念しています。

乳糖不耐について

乳糖不耐については「ファクトブック よくわかる乳糖不耐」で詳しく解説しています。
https://www.j-milk.jp/report/study/h4ogb40000003zae.html

また、ウワサ16「日本人のほとんどは、牛乳を飲むとおなかをこわす」では、おすすめの飲み方を紹介しています。