将来、寝たきりにならないためにコツコツ予防、骨粗しょう症

乳の知識/ミルクでヘルスケア

骨がスカスカになってしまう骨粗しょう症。お年寄りの病気と思われがちですが、最近は若い人の間に予備軍が増えています。

従来から高齢の女性に骨が弱くなる骨粗しょう症が多いことは知られていました。
しかし、最近は若い人でも食生活のカルシウム不足や無理なダイエットによって骨粗しょう症予備軍が増えているばかりか、すでに骨粗しょう症に近い状態の場合もあるといいます。

牛乳はカルシウムを豊富に含み、またカルシウム摂取に適した食品です。
牛乳で効果的にカルシウムを摂って、骨粗しょう症予防に役立てましょう。

骨がもろく、骨折しやすくなる病気

カルシウムといえば、骨や歯を作るのに大切な栄養素ですが、同時にたんぱく質の代謝や神経細胞、筋肉の動き、ホルモン分泌など体のあらゆる活動に必要な栄養素でもあります。そのため、血液中のカルシウム濃度は一定に保たれるようになっていて、カルシウム摂取が充分の場合は骨に蓄えられ、不足している場合は逆に骨を溶かしてカルシウムを補います。骨が「カルシウムの銀行」と呼ばれるのはこのカルシウムの出納があるからです。

そのため、カルシウム不足の食生活が続いたり、腸からのカルシウム吸収が悪くなってきた高齢者の場合は、骨からどんどんカルシウムが溶けだしてしまいます。その結果、骨はもろくスカスカになってしまいます。

また、骨は成長しても皮膚や細胞と同じように新陳代謝を繰り返しています。常に古い骨を壊して(骨吸収)新しい骨を作って(骨形成)いるのです。通常、この骨形成と骨吸収がバランスを保っていますが、加齢や疾患など様々な理由で骨吸収のスピードに骨形成が追いつかなくなると、これもまた骨を弱める原因になります(図1)。

以上のように、カルシウム不足や骨吸収の過剰によって骨がもろく骨折しやすくなるのが「骨粗しょう症」です。
(図1)骨吸収と骨形成のバランス

初期は自覚症状がないから恐ろしい

骨粗しょう症は、初期では何の自覚症状もありません。しかし病状が進行してくると、立ち上がったり重いものを持ったりしたときに腰や背中に痛みを感じる、背中や腰が曲がってくる、身長が縮んでくるなどの症状があらわれます。

さらに進行すると、痛みで起きあがれなくなったり、何かに軽くぶつかったり転んだだけで骨折しやすくなります。もろくなった骨の骨折は治りにくいだけではありません。大腿骨骨折の場合は人工の骨を入れる手術が必要になったり、あるいはそのまま「寝たきり」になることもあります。

実際、骨折して初めて骨粗しょう症が見つかることも少なくなく、自覚症状がないからといって軽く考えてはいけない病気です。
現在、国内の骨粗しょう症患者は女性約800万人、男性約200万人、合計約1,000万人と考えられています。骨粗しょう症予備軍も入れるとその数はさらに多くなります。 

閉経を過ぎた女性は要注意

特に女性が注意しなければならないのが、閉経によって女性ホルモン(エストロゲン)分泌が減少するのをきっかけに発症する閉経後骨粗しょう症です。
エストロゲンは骨の形成を促進し、カルシウムが骨から溶け出すのを抑える働きを持っています。エストロゲンの分泌がピークに達する20~30歳代は、骨量を維持できます。

しかし、閉経によって急激にエストロゲン分泌が低下すると、骨密度も急激に下がるため、骨粗しょう症になりやすくなります(図2)。残念ながら閉経は避けられません。骨密度が下がっても骨粗しょう症にならないように、10代の間に骨量のピークを高くしておくことが大切になります。 
(図2)エストロゲン分泌と骨量の推移 

若い人にみられる骨粗しょう症予備軍

骨を弱らせる無理なダイエット

また、最近、増えているのが若い人にみられる骨粗しょう症予備軍です。カルシウムが一番必要となる成長期に無理なダイエットを行うことなどが原因と考えられます。特に女性の場合、ダイエット、ストレス、不規則な生活などによって生理が止まってしまうと、ホルモンバランスが崩れ、閉経後のような骨密度の減少をみることも少なくありません。

外見はキレイに見えても、内側の骨が老人のようでは健康を損なってしまいます。ダイエットするなら、カルシウムをはじめ栄養バランスのよい食生活と適度な運動で健康的に行うべきです。そして、自分なりのリラックスできる場所や時間を見つけては気分転換を心がけ、日頃からストレスをためないことも大切です。 

生活習慣を変えて、脱・骨粗しょう症

女性にとって閉経は避けられませんが、骨粗しょう症は生活習慣や環境による危険因子も多く、これらは若い頃から気をつけることで充分改善できます。

一番重要なことはカルシウムとカルシウムの吸収に必要なビタミンD、ビタミンKやたんぱく質を日頃からしっかりと摂って、骨量を減らさない、むしろ増やす努力を続けることです。

また、適度な運動も必要です。
運動は骨量を増やすだけでなく、高齢者の場合は足腰に筋肉をつけることで「すり足」による転倒が防げ、骨折を未然に避けることができます。
そして、日焼けしない程度の日光浴。適度な日光浴により皮膚でビタミンDが作られ、これが体内で活性化され、カルシウムの吸収を促進します。

嗜好品では、喫煙はカルシウムの吸収を妨げ、女性ホルモンの分泌を減少させます。
できればタバコはやめるのが望ましいでしょう。

また、アルコールやコーヒーは適量なら問題ありませんが、多量に摂るとカルシウムが尿中に放出されてしまいます。
ほどほどを心がけるか、コーヒーには牛乳を加えるなどの工夫が必要です。 

牛乳はカルシウム吸収率の優等生

カルシウム摂取の推奨量は年齢や性別によって細かく決められています。(詳しくはこちらを参照)

カルシウムを多く含む食品は、牛乳・乳製品をはじめ、小魚や海草、豆類や野菜などがありますが、吸収率の点で一番効率がよいのはやはり牛乳・乳製品です。
牛乳・乳製品に含まれている乳糖や、カゼイン(たんぱく質)が消化される途中でできるカゼインホスホペプチド(CPP)はカルシウムの吸収を促進します。そのため牛乳はカルシウムの吸収率が約40%と、小魚、野菜に比べて非常に高いのです(図3)。

しかも牛乳はそのまま飲めますし、調理性も高い食品です。牛乳を冷蔵庫に常備しておけばいつでも手軽にカルシウム補給ができます。
骨は一日にしてならず。コツコツ予防して、骨の健康を守りましょう。 
(図3)カルシウム吸収率の比較

若いうちに1度、閉経後は年1回、骨密度検査を

最近は、健康保険組合や自治体などの検診で簡単な骨密度検査が実施されています。できれば骨密度の変化が少ない20 - 40歳代の間に一度測定をして、「若いときの骨密度」を知っておくと、現状の生活習慣を振り返るきっかけにもなりますし、また老年期になって比較するときに役立ちます。

そして、閉経後は年一度検査を受けるようにしましょう。もし骨密度に急激な減少がみられるようなら、早めに専門医を受診し、早期治療を始めましょう。