西村一弘・駒沢女子大学人間健康学部 教授
高齢者の健康と食事 - 筋力低下、骨量低下、高血糖の予防のために -
新型コロナウイルス感染拡大に伴って外出自粛が長引いたことで、高齢者の体力低下など二次的な影響が懸念されています。5月に緊急事態宣言は解除されましたが、“第2波”への警戒などから外出を控える生活は今後もある程度、続く可能性があり、これまで以上に健康・栄養面に気を配る必要がありそうです。高齢者や、一緒にお住まいの家族が在宅生活で気を付けたいポイントについて、緑風荘病院(東京都東村山市)と併設の介護老人保健施設グリーン・ボイス(同)などの医療と介護施設の現場で、栄養指導に従事されている西村一弘先生(駒沢女子大学人間健康学部教授)に、注意すべきポイントをうかがいました。
適度な運動、アミノ酸、カルシウム吸収を意識して
——外出自粛によって、高齢者の生活に健康や栄養面でどのような懸念が生じてくるのでしょうか。
高齢者の場合は、ちょっとした運動不足が筋肉低下に直結し、これを取り戻すには若者の何倍もの時間や労力を要するため、筋肉を減らさない工夫が必要になってきます。室内でできる筋トレやストレッチなどの運動を毎日行うと同時に、筋肉の成長を促すアミノ酸を豊富に含む牛乳・乳製品などの食品を毎日欠かさず、普段より多めに摂取することが重要です。
——アミノ酸、たんぱく質以外にも欠乏しやすい栄養素はありますか?
外出が減ることでカルシウムの吸収が下がる心配があります。カルシウムの吸収にはビタミンDが重要な役割を果たしており、ビタミンDは日光の紫外線を適度に浴びることにより体内で活性化されます。イエナカ生活によりビタミンDが不足すると、カルシウムをとってもなかなか吸収できず、骨量の低下が起きる恐れがあります。外出が難しい状況下では、ベランダや庭先でよいので陽に当たる習慣をつけるほか、料理に牛乳を使う(例:【乳和食レシピ集】https://www.j-milk.jp/nyuwashoku/)、ヨーグルトやチーズなどの乳製品をとるなどの工夫をし、普段より多くカルシウムを摂取していただきたいです。
高齢者の場合は、ちょっとした運動不足が筋肉低下に直結し、これを取り戻すには若者の何倍もの時間や労力を要するため、筋肉を減らさない工夫が必要になってきます。室内でできる筋トレやストレッチなどの運動を毎日行うと同時に、筋肉の成長を促すアミノ酸を豊富に含む牛乳・乳製品などの食品を毎日欠かさず、普段より多めに摂取することが重要です。
——アミノ酸、たんぱく質以外にも欠乏しやすい栄養素はありますか?
外出が減ることでカルシウムの吸収が下がる心配があります。カルシウムの吸収にはビタミンDが重要な役割を果たしており、ビタミンDは日光の紫外線を適度に浴びることにより体内で活性化されます。イエナカ生活によりビタミンDが不足すると、カルシウムをとってもなかなか吸収できず、骨量の低下が起きる恐れがあります。外出が難しい状況下では、ベランダや庭先でよいので陽に当たる習慣をつけるほか、料理に牛乳を使う(例:【乳和食レシピ集】https://www.j-milk.jp/nyuwashoku/)、ヨーグルトやチーズなどの乳製品をとるなどの工夫をし、普段より多くカルシウムを摂取していただきたいです。
免疫機能を下げる高血糖にならない食事の工夫とは
——特に、介護を受けている高齢者のいる家庭で、簡単に実践できる食生活の工夫について教えてください。
要介護状態になると飲み込みが悪くなり、ミキサー食などが必要になるケースもありますが、調理する際に水やだし汁だけでなく牛乳もあわせて使う乳和食では、とろみが付き嚥下(飲み込み)しやすくなることも分かっています。牛乳が入っていることも分かりにくいため、牛乳を飲むことが苦手と感じている高齢者にもおすすめできます。
また、緑風荘病院では実際に牛乳を使った乳和食を給食献立で週に4~5品提供していますが、同じ食材・カロリー量の通常食に比べ、食後の血糖値が上がりにくくなることが報告されています(※1)。高血糖になると免疫機能も下がってしまいますので、食事と牛乳乳製品の食べあわせは新型コロナウイルス対策にも適していると思います。
要介護状態になると飲み込みが悪くなり、ミキサー食などが必要になるケースもありますが、調理する際に水やだし汁だけでなく牛乳もあわせて使う乳和食では、とろみが付き嚥下(飲み込み)しやすくなることも分かっています。牛乳が入っていることも分かりにくいため、牛乳を飲むことが苦手と感じている高齢者にもおすすめできます。
また、緑風荘病院では実際に牛乳を使った乳和食を給食献立で週に4~5品提供していますが、同じ食材・カロリー量の通常食に比べ、食後の血糖値が上がりにくくなることが報告されています(※1)。高血糖になると免疫機能も下がってしまいますので、食事と牛乳乳製品の食べあわせは新型コロナウイルス対策にも適していると思います。
筋力や認知機能の低下リスクにも注意して
——今後、高齢者の間でどのような問題が起きる可能性が考えられますか?
多くの高齢者の間で筋力低下が進んでしまう可能性があります。また高齢者サロンや認知症カフェなどの地域活動が自粛によりなくなってしまったことで、認知症の方も増えてくる可能性もあり、筋力低下・認知度低下の両面から要介護者が増える心配があります。
過去の研究では牛乳乳製品の摂取とアルツハイマー型認知症の予防との関連が報告されています(※2)が、認知症予防のためにも食事に気を配る必要があるでしょう。
牛乳・乳製品も含めた食品を栄養バランスよく食べること、室内でもできる筋トレやストレッチなどの運動を持続することが、要介護の危険因子となる筋力低下、骨量低下、高血糖などの予防につながります。
※1 若木陽子他 Health Sciences 17 ; 2001
※2 Ozawa M, et al. J Am Geriatr Soc 2014; 62(7)
多くの高齢者の間で筋力低下が進んでしまう可能性があります。また高齢者サロンや認知症カフェなどの地域活動が自粛によりなくなってしまったことで、認知症の方も増えてくる可能性もあり、筋力低下・認知度低下の両面から要介護者が増える心配があります。
過去の研究では牛乳乳製品の摂取とアルツハイマー型認知症の予防との関連が報告されています(※2)が、認知症予防のためにも食事に気を配る必要があるでしょう。
牛乳・乳製品も含めた食品を栄養バランスよく食べること、室内でもできる筋トレやストレッチなどの運動を持続することが、要介護の危険因子となる筋力低下、骨量低下、高血糖などの予防につながります。
※1 若木陽子他 Health Sciences 17 ; 2001
※2 Ozawa M, et al. J Am Geriatr Soc 2014; 62(7)