●おとなの食育(2/7)
ずっと元気でいるためには骨の健康が大切。牛乳・乳製品が応援します。
監修:吉川直美(管理栄養士)
毎日つくりかえられているわたしたちの骨
成長期が過ぎ、身長の伸びがとまると、骨には何も変化が起きないのでしょうか。いいえ。骨も皮膚などと同じように毎日新陳代謝が繰り返されているのです。
カラダの中では、常に古い骨の細胞が壊され、新しい骨がつくられています。その一連の流れを骨代謝といい、3年くらいですべての骨がつくりかえられています。しかし、カルシウム不足やホルモンバランスの変化などにより、骨が壊される一方で、新しい骨の形成が追いつかない状態が続くと、骨は軽石のようにスカスカになり、もろく、骨折しやすい状態になってしまいます。この状態を「骨粗しょう症」といいます。
年を取ると、食事の量が減ることで栄養バランスが悪くなったり、また、活動量が低下して骨への負荷が減ることから骨の強度が弱くなったりします。そのため、高齢になると骨粗しょう症患者が多くなるのです。
健やかな老後生活のために、骨粗しょう症対策は重要
背骨が曲がる、背が低くなるといったカラダの変化も骨粗しょう症による症状のひとつですが、はっきりとした自覚症状はなかなか現れません。高齢者が、転んだり、ちょっと手をついたりして、思いもよらない骨折を起こしてはじめて、骨粗しょう症であるとわかることもあります。
骨粗しょう症は、骨がスカスカな状態のため、足のつけ根(大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ))や背骨(脊椎(せきつい))、手首(橈骨遠位部(とうこつえんいぶ))など、カラダの土台となる部分の骨が折れやすくなります。こわい点は、骨折することによって日常生活に支障をきたし、寝たきりや認知症につながる例が多いことです。健康で自立した老後を送るためにも、骨粗しょう症の予防はとても重要です。
若いときからはじめたい丈夫な骨づくり
体内の骨量は、性ホルモンや食事・運動などの影響を受けて増加し、10代後半頃に最大骨量(ピーク・ボーン・マス)をむかえます。その後、年齢とともに徐々に減っていく傾向にあります。特に女性の場合、閉経により女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下することで、骨量もいちじるしく減少します。これは、エストロゲンに、カルシウムの吸収を助け、骨形成を促進する働きがあるからです。もちろん、男性にも骨量の減少はありますが、女性の閉経期のようにホルモン分泌に急な変化がないこと、最大骨量も女性より高いことから、一般的には、骨粗しょう症は男性よりも女性に多いといわれています。
しかし、男女とも、若い頃の最大骨量をできるだけ高めておき、その後も骨の材料となるカルシウムを十分に摂取し続けることで、加齢による骨量の減少をゆるやかにすることができます。つまり、骨粗しょう症を予防することができるのです。
骨粗しょう症予防に有効なカルシウム
骨粗しょう症予防には、食事や運動などの生活習慣が大きく関係していますが、特にカルシウムは、骨形成に必要な栄養素です。骨量が減少しやすい高齢期でも、カルシウムの摂取量を増やすことで、骨量の減少を抑えることができます。
2006年に発表された「骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン」(骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編集、ライフサイエンス出版)では、骨粗しょう症の予防と治療のために1日800mg以上のカルシウムを摂取することが推奨されています。
カルシウムを多く含む食品の代表は、牛乳・乳製品です。その他、豆腐・納豆などの大豆製品やホウレン草・小松菜などの青菜、海藻類、骨ごと食べることができる小魚類にも豊富に含まれますが、カルシウムの吸収率では、牛乳・乳製品が特に優れています。
カルシウムの吸収を促すのは、ビタミンD。魚介類やキノコ類に多く、また牛乳にも含まれています。食べ合わせの面からも、カルシウムの効果的な摂取を考えたいですね。
カルシウムが骨に吸収されるためには、運動も欠かせません。激しい運動ではなくて、ウォーキングでも十分。骨には適度な刺激が与えられ、また日光に当たることでビタミンDは体内でもつくられますから、丈夫な骨づくりには気軽にできて効果的です。さらに、ウォーキングの前後に牛乳を飲むようにすれば、ばっちりですね。
骨の健康のために毎日、おいしく牛乳・乳製品を
牛乳・乳製品を使った料理というと、洋食メニューを想像しがちですが、下の食事例でわかるように和食メニューでも大活躍。そして、冬のあたたかな料理にもぴったりです。相性のよい味噌を使い、旬の野菜や鶏肉などを入れて煮込んだ牛乳鍋は絶品。ビタミンDが豊富な鮭やキノコでつくった、シチュー、グラタンなどのアツアツメニューも楽しみたいですね。食後や休憩のコーヒーは、牛乳たっぷりのカフェオレもおすすめです。
日々のちょっとした心がけで骨の強度は守られます。牛乳・乳製品を毎日の食事に取り入れて、おいしさも楽しみながら、骨の健康を考えていきましょう。
ほわいと(2007冬)より