こどもを育む牛乳学

乳の知識

育ちざかりは伸びざかり!

カラダをつくる材料って?

カラダの発育が著しい時期は、一生に2回。身長が約2倍になる生後~乳幼児期、そして思春期です。この「発育」こそが、こどもの栄養を考えるときに大切なポイントになってきます。女子は小学校4年生くらいから中学にかけて、男子は中学の3年間で、身長がぐんと伸びます。
身長や体重が増加するためには、さまざまな栄養素が不可欠ですが、特に欠かせないのはカルシウムとたんぱく質。身長が伸びるこの時期は、骨量の増加率がもっとも高く、骨の材料となるカルシウムを十分に摂ることが大切です。
また、成長に大きな影響を与える成長ホルモンは、脳下垂体から分泌され、骨を伸ばすと同時に筋肉や皮下組織に働きかけてカラダを大きくします。ホルモンや筋肉など、カラダのあらゆるものの材料になるのがたんぱく質です。 

「発育」に欠かせない牛乳

発育に欠かせないカルシウムとたんぱく質を豊富に含む食品、それが牛乳です。
特に牛乳に含まれるカルシウムは、吸収されやすいというメリットがあります。
成長期に必要なカルシウムを十分に摂るために、厚生労働省・農林水産省がすすめている「食事バランスガイド」においても、牛乳・乳製品をおとなよりも多めに取るよう推奨しています。 

丈夫な骨をつくるには?

毎日つくりかえられている骨

 骨量(人の体内にある骨の全体量のこと)の増加率が一生のうちで最も高いのが、学童期から10代後半の間。20歳頃までは増え続け、成人期になると年齢とともに骨量は減っていきます。丈夫な骨をつくり、骨折や将来の骨粗しょう症を予防するためにも、骨量が一生のうちで最高になる最大骨量(ピーク・ボーン・マス)をできるだけ高めておく必要があります。そのためには、10代前半に骨の材料となるカルシウムを十分に摂ることが大切です。
骨は、カラダのほかの細胞と同じように、日々新陳代謝を繰り返し、つくりかえられています。骨代謝によって、骨が壊されては新しい骨がつくられますが、カルシウムが不足すると骨が壊されるばかりで、骨はどんどん弱くなってしまいます。だから毎日、牛乳や乳製品で上手にカルシウムを補給することが大切なのです。 

太陽の下で運動を

牛乳や乳製品は、吸収率のよいカルシウムを豊富に含むだけでなく、手軽に摂取できるのが特徴です。
骨の主成分はカルシウムですが、カルシウムの吸収を促すのはビタミンDで、キノコ類や魚類などの食品に豊富に含まれます。そして、ビタミンDのもとになる物質は、日光に当たることでビタミンDに変化します。
また、カラダを動かすと、骨に負荷がかかり、骨形成が促進されます。丈夫な骨をつくるためには、太陽の下で運動することも大切なんですね。 

毎日の元気のみなもと!

コップ1杯には元気のもとがいっぱい

牛乳には水分のほか、たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素やミネラル、ビタミン類など、カラダの成長や活動を支える栄養素が豊富に含まれています。
たんぱく質には骨を支える筋肉をつくる役割があり、骨の主成分であるカルシウムとともに成長期には大切な栄養素です。水分以外の栄養素でもっとも多く含まれているのが炭水化物で、その大半は乳糖です。脂質とともにエネルギーのみなもとになり、カルシウムの吸収も助けてくれます。
またビタミンB2は、成長を促進する作用があるので、成長期のこどもやスポーツ選手などは、より多くのビタミンB2が必要になります。

あたためて心もカラダもホットに

牛乳は加熱しても栄養成分に変化がないため、寒い時期にはあたためて飲むのもおすすめ。牛乳でおなかがゴロゴロする人も、あたためるとやわらげることができます。
朝ごはんや夜食にホットミルク、おやつにはココアやミルクティー。スープやカレーなど、こどもたちの好きなメニューに加えて、コクと栄養をプラス。
洋風雑炊やスープパスタなどは冬の夜食におすすめです。 

運動の後には牛乳を

運動の後には牛乳を

筋肉をつくる材料となるのはアミノ酸です。細胞・組織をつくるたんぱく質は、20種類のアミノ酸によって構成されています。その組み合わせや数、並び方の違いにより、さまざまなたんぱく質がつくり出されるのです。アミノ酸は筋肉を維持するほか、必要に応じて運動時のエネルギー源ともなります。
アミノ酸の中には、体内で合成できない種類があり、これを「必須アミノ酸」と呼んでいます。必須アミノ酸は、牛乳・乳製品や卵、肉、魚などに多く含まれます。必須アミノ酸の含有バランスがよい牛乳は、運動で使われた筋肉を修復するのに効果的です。
さらに牛乳には、カラダを支える骨をつくるカルシウムをはじめ、コンディションを整えるためにも重要な、ミネラルやビタミン類も含まれます。汗をかくと、汗から失われるミネラルを補う必要があるので、水分補給の意味も兼ねて、運動後の牛乳は積極的に取りたいですね。
 

日頃から牛乳で丈夫なカラダづくりを

もちろん、普段から牛乳を飲んで骨や筋肉、腱を強くしておくことも大切。カラダづくりだけでなく、けがの予防や早期回復にもつながります。
丈夫な骨をつくり、体調を整えるために、運動の前にも後にも、牛乳をこどもたちの食生活に取り入れましょう。

1杯の牛乳で、元気な1日のスタートを

朝ごはんは、なぜ大切なの?

朝ごはんは、眠っていたカラダや脳を起こし、体温を上げ、エネルギーを補給して、元気な1日をスタートするための食事。
朝ごはんを食べずに学校へ行くと、眠気やだるさが残って勉強に集中できなかったり、筋肉もスムーズに動かないので、けがをしやすくなったりします。
ほとんどのこどもは、毎日朝食を食べていますが、「こどもだけで朝食を食べる」割合は、小中学生ともに増加傾向にあります。
朝は忙しくて・・・という家庭でも、牛乳ならさっとシリアルにかけたり、そのまま飲むだけでも手際よく朝の栄養補給をサポートしてくれます。
元気な「行ってきます!」の前に、短い時間でも家族そろって朝ごはんを食べられるよう心がけたいものですね。冷蔵庫には牛乳・乳製品をお忘れなく。

おうちでも、しっかり牛乳!

小中学生は、カルシウム摂取量の約半分を牛乳から摂っています。
ところが、学校給食のない日は、カルシウムの摂取量がグンと落ちており、家庭での牛乳の摂取量が少ないことを示しています。
週末や夏休みなどの学校給食のない日に、牛乳を飲む機会が減ってしまわないように、まず朝ごはんで牛乳を飲む習慣をつけて、カルシウムが不足することがないようにしましょう。
また暑い夏には、のどの渇きをいやす飲み物としてもおすすめです。 

ほっとひと息、おやつタイムにも牛乳を

おやつは食事の一部

おやつは、こどもにとって楽しみな時間。おやつというと甘いお菓子を想像しがちですが、こども、特に幼児にとっては、食事の一部です。胃が小さく、3回の食事だけでは1日の必要量を食べきれないため、3回の食事+おやつ(間食)という食生活が基本になります。
ところが、その内容や質については、3回の食事では気をつけていても、おやつとなるとあまり気にしていない人も多いようです(グラフ参照)。
おやつに望ましいのは甘いものやスナック菓子よりも、エネルギー源になるおにぎりやパン、イモ類、ミネラルやビタミンを含む牛乳・乳製品、果物です。

カルシウム補給にもおやつを活用

おやつで摂るエネルギーは、幼児期から学童期にかけては、およそ200kcal前後、中高生で250kcal前後が目安になります。
牛乳コップ1杯(200ml)で138kcalですから、パン(ロールパン1個程度)や果物(バナナ小1本程度)と組み合わせると適量になります。
また、コップ1杯の牛乳には227mgのカルシウムが含まれているので、1日に必要とされるカルシウム量の約1/3~1/4を摂ることができます。
10代になると摂りたいカルシウムの目安量もグンと増えますから、おやつの時間も有効に使って、不足しないようにしたいですね。 

風邪の予防にも牛乳を

牛乳で風邪に負けないカラダづくり

冬になると、風邪が流行します。それは、風邪の原因となるウイルスが活発になるから。ウイルスがカラダに侵入しようとすると、カラダは鼻水やせき、くしゃみなどで外に追い出そうとします。
このウイルスに対するバリアの働きをしているのが鼻やのどの粘膜で、風邪の予防には粘膜を丈夫に保つことが大切です。
ビタミンAには、粘膜を丈夫に保つ働きがあります。ニンジンやカボチャ、ホウレン草などの緑黄色野菜に多く含まれていますが、牛乳もビタミンAが豊富です。
また、細胞の再生や成長に欠かせない栄養素であるビタミンB2も多く含んでいます。
また、風邪に負けないようにするために、たんぱく質もしっかり摂りたいもの。
日頃から良質のたんぱく質をたっぷり含んだ牛乳を飲んで、丈夫なカラダづくりを心がけましょう。 

しっかり休養することも大切

風邪気味かな?と思ったら、早めに休養を。そしてカラダをあたため、栄養を摂ることが一番です。寝不足や栄養不足は、風邪をこじらせてしまう原因になりかねません。
ホットミルクやクリームシチューなどのカラダをあたためる料理は、血液の循環がよくなり、免疫機能をサポートする働きがあります。
何よりこの時期は、外から帰ってきたら手洗いとうがいをお忘れなく!ウイルスの侵入を未然に防ぎましょう。 

寝る子は育つ?

眠っている間に分泌される成長ホルモン

睡眠は、カラダや脳を休ませ、細胞を修復し、明日への活力を蓄えます。また、眠っている間に成長ホルモンが分泌され、骨やカラダの各組織の成長と代謝を促します。つまり、こどもの成長にはしっかり睡眠を取ることが大切なのです。
文部科学省の全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果から、小中学生の睡眠時間と肥満度には相関関係があることがわかりました。1日の睡眠時間が6時間未満になると、男女とも肥満度が高くなる傾向に。また、朝ごはんを食べないこどもも同じ傾向にあります。 

お休み前の牛乳で心地よい眠りへ

睡眠時間の乱れは生活習慣の乱れ。就寝時刻を一定にして、規則正しい睡眠から生活リズムを整える「早寝早起き朝ごはん」が大切です。ぐっすり眠ると朝の目覚めもよく、食欲もわき、1日を元気に過ごすことができます。
そして快眠のためには、まず心をやすらかに。牛乳に含まれるカルシウムには、神経の興奮を抑える働きがあります。また、必須アミノ酸のひとつトリプトファンは、鎮静作用をもつ神経伝達物質セロトニンの材料に。トリプトファンはいろいろな食品に含まれますが、就寝前なら消化・吸収のよい牛乳はおすすめです。 
ほわいと(2007夏 - 2009春)より