国境炭素税の導入と酪農乳業への影響
EU、2026年から国境炭素税の導入を発表
世界は、気候変動に加え、生態系と生物多様性の危機、海洋プラスチック問題など、いわば地球の自然システムの限界とも言える環境課題に直面している。なかでも、2050年に向けたカーボンニュートラルの実現は、現在世界各国で最も重要な目標のひとつであり、2021年4月に行われた気候変動サミットでは、日本を含めた各国が、2030年度における GHG(温室効果ガス)削減目標の引上げを表明した。こうした中、EUは地球温暖化対策が不十分な国からの輸入品に事実上の関税を課すCBAM「国境炭素税(国境炭素調整措置)」の導入計画を発表した。しかし、気候変動問題を貿易に絡めるのは WTO(世界貿易 機関)の原則に反しており、経済成長に悪影響を及ぼすとの各国からの懸念の声もあがっている。本稿では、畜産動物の問題に特化する国際投資家ネットワーク、FAIRR(Farm Animal Investment Risk & Return)のレポートを基に、国境炭素税の導入が酪農乳業に与える影響について、ニュージーランドを例に考察する。