豪州の酪農、その時何が?~コロナ禍での奮闘~
新型コロナウイルスの流行は、オーストラリアの酪農業界も大きく揺さぶった。2020年3月に連邦政府が国境を閉鎖したことで、移民労働者の割合が高いオーストラリア農業界では著しい労働力不足が発生、生乳の生産に影響が出た。また、感染拡大の防止を目的に導入されたロックダウン(都市封鎖)は、シドニーやメルボルンなど大消費地域の飲食業界の需要を奪い、一方で小売店には品薄を恐れた消費者が殺到し「パニック買い」が発生した。また、生乳生産量が減少したことで、乳業会社が酪農家に支払う生産者乳価は上昇し、過去最高の水準に達した。2021年後半以降、ワクチン接種の普及と連邦政府の規制緩和により、業況はコロナ前の状態に戻りつつあるが、物流の混乱やロシアのウクライナ侵攻により生産コストは高止まりしている。今後、サプライチェーン(調達・供給網)全体へのコスト圧力が更に増し、マージンへの影響は強まると予想される。本稿では、オーストラリアの酪農業界に新型コロナの感染拡大がどのような影響を与えたのかについて詳しく見てみたい。