アジアの旺盛な需要が世界の牛乳乳製品消費の増加を牽引
FAOとOECDが「農業アウトルック2023~2032」を7月6日にリリース
経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は、7月6日に年次報告書「農業アウトルック(Agricultural Outlook)」 を発表し、世界の農業・食料生産は今後10年間増加を続けるが、人口増加率が次第に緩やかになる見通しから、農業・食料生産の増加のペースは過去10年間よりも鈍化することを予測した。また、過去2年間に経験した農業資材価格の高騰は、世界の食料安全保障に対する懸念を高めており、長期的な食料安全保障、手頃な価格、持続可能性の基礎を築いていくためには、イノベーションへの投資、生産性のさらなる向上、生産での炭素原単位の削減が必要であるとし、持続可能な農業食料システムへのより迅速な移行の重要性を強調した。この報告書の第7章「酪農乳業および乳製品」は、生乳、フレッシュ乳製品、バター、チーズ、脱脂粉乳、全粉乳などについて、最近の市場動向を解説するとともに、2023~2032年の世界の乳製品市場の消費、生産、貿易、価格の中期予測では、インドとパキスタンの旺盛な需要が世界の牛乳乳製品消費の増加を牽引することや、実勢の国際乳製品価格は下落傾向になることなどを予測している。また、環境と健康への関心がますます大きくなっていることや、地政学的な緊張、気候変動、動植物の病気、および価格変動などが長期的な不確実性をもたらす可能性について考察している。報告書の付表では、現在の一人当たりの消費量が比較的少ないベトナムやインドネシアなどの東南アジアの国々において、予測期間中にフレッシュ乳製品消費量の大きな伸びや加工乳製品の輸入増加が予測されていることも見逃せない。本稿では、第7章「酪農乳業および乳製品」の中から、第1節「予測の要点」及び第3節「市場予測」の「消費量」に関する項を仮訳として紹介する。なお、理解しやすさへの配慮から一部を編集している。