2013年に開催されたWorld Dairy Summitのプレゼン資料(日本語版)です。
座長 前田浩史 一般社団法人Jミルク 専務理事
座長 Sarah Paterson Director of Policy and Advocacy, Fonterra Current Chair of IDF SC of DPE
座長 Sarah Paterson Director of Policy and Advocacy, Fonterra Current Chair of IDF SC of DPE
セッションの狙い
このSessionは、酪農産業が発展し成熟している欧米諸国とは異なる国や地域、具体的にはアジアの国々からの報告です。
このSessionの狙いは、それぞれの農業資源や食文化を背景に、独自の発展を遂げつつあるアジアの国々における、酪農生産、農場経営、乳業産業、牛乳乳製品の市場や消費について、その成り立ち、現状、課題などを報告してもらい、それを踏まえて、世界の酪農乳業の将来を展望することです。
このSessionの狙いは、それぞれの農業資源や食文化を背景に、独自の発展を遂げつつあるアジアの国々における、酪農生産、農場経営、乳業産業、牛乳乳製品の市場や消費について、その成り立ち、現状、課題などを報告してもらい、それを踏まえて、世界の酪農乳業の将来を展望することです。
ディスカッションのポイントと2つの論点整理
次に、私から、このSessionに参加する全ての方々が、深い情報共有が出来るようにするため、主に二つの問題意識・論点を提起したいと思います。
なお、この論点整理に当たっては、同じアジアの国として、短期間の中で、乳利用の食習慣がある程度定着し、また酪農産業の発展と成熟化が急速な勢いで進んだ日本の経験を踏まえました。
なお、この論点整理に当たっては、同じアジアの国として、短期間の中で、乳利用の食習慣がある程度定着し、また酪農産業の発展と成熟化が急速な勢いで進んだ日本の経験を踏まえました。
ポイント1
先ず、第1の論点です。
日本の酪農乳業は、近代化とともに、その産業的なスタートを切りました。それは、明治時代の初期、今からおよそ150年前のことです。
日本の酪農乳業は、近代化とともに、その産業的なスタートを切りました。それは、明治時代の初期、今からおよそ150年前のことです。
その後の発展のプロセスを振り返ると、常に二つの要素が相互に補完し合いながら、産業やマーケットの発展を促してきました。
それは、一つには酪農生産の技術的発展であり、もう一つは牛乳乳製品消費の拡大です。
これを、少し大きな枠組みで捉え直すと、一つは農業生産や農村の変化であり、もう一つは人々の食生活の構造的変化です。
そして、この二つの側面を、繋いできたのが、乳業の技術や企業活動の発展です。
これを、少し大きな枠組みで捉え直すと、一つは農業生産や農村の変化であり、もう一つは人々の食生活の構造的変化です。
そして、この二つの側面を、繋いできたのが、乳業の技術や企業活動の発展です。
現在の日本は、前者の酪農生産の技術的水準という点では、世界のトップ水準に達しました。
後者の食生活という点でも、人々の食生活の隅々に牛乳乳製品が定着し、伝統的な食生活の中に乳が全く存在しなかった国や地域の中では、日本人の消費量はかなり多いと思います。
後者の食生活という点でも、人々の食生活の隅々に牛乳乳製品が定着し、伝統的な食生活の中に乳が全く存在しなかった国や地域の中では、日本人の消費量はかなり多いと思います。
そして、乳業の技術や企業活動も大変先進的です。
しかし、そうした日本においても、チーズなどの多くの乳製品を海外から輸入しています。現在の日本の牛乳乳製品マーケットにおける国産製品の割合は数量ベースで3分の2程度です。
酪農生産とマーケットのそれぞれの発展においてアンバランスが生じているといっても良いと思います。
そのアンバランスを埋める働きをするのが、牛乳乳製品の国際市場の本来の役割でしょう。
酪農生産とマーケットのそれぞれの発展においてアンバランスが生じているといっても良いと思います。
そのアンバランスを埋める働きをするのが、牛乳乳製品の国際市場の本来の役割でしょう。
私は、各スピーカーから提出された講演要旨を、それぞれの国や地域の酪農乳業産業が、どのような発展の歴史的位置にあるのか、日本のこれまでの産業的展開のどのステージに当てはまるのか、それとも全く異質の歴史的展開にあるのかを想像しながら、読みました。
世界の酪農乳業は、過去から現在そして未来という時間的展開の中で、それぞれに異なったステージに立っています。当然、それぞれの歴史には共通する部分もあり異なった部分もありますが、それらを互いが学びあうことを通して、それぞれの国、特にアジアの地域や国々の酪農乳業の発展を相互に支援することが可能です。
このセッション2の参加者は、発表される国や地域の酪農乳業の現状を、自国の酪農乳業の歴史の位相と比較して、聞いて欲しいと思います。
ポイント2
このセッションで重要なもう一つの論点は、牛乳乳製品の消費の構造を、その地域や国々の食文化、そして経済的発展に伴う食生活の構造変化という二つの視点から、考えることです。
食文化という観点では、乳を利用する文化が古くからある国と、そうでない国では、酪農乳業の産業的展開は全く異なるということです。
前者の国では、すでに農業生産活動の中に乳の伝統的生産方式が存在し、それが自律的に変化し発展する必要があります。
今回の発表では、トルコやモンゴルがこれに当たります。
前者の国では、すでに農業生産活動の中に乳の伝統的生産方式が存在し、それが自律的に変化し発展する必要があります。
今回の発表では、トルコやモンゴルがこれに当たります。
しかし後者は、酪農生産に係る現代的技術を国の外側から短期間に導入することになります。日本もその中に含まれ、モンスーンアジアの農業生産環境のなかで、急速な酪農生産の拡大が必要である故に、乳の生産方式などに工夫が凝らされてきました。本セッションでは中国、タイ、インドネシアがこれに当たります。
一方、乳を利用する文化が全くなかった国でも、経済発展によって食生活が変化する中で、牛乳乳製品の利用が始まります。
この場合は、所得の高い富裕層や若者から、すなわち変化に積極的に対応できる層から利用がはじまり、徐々に、他の消費者にも普及していきます。
日本の経験からすると、飲用牛乳の利用が定着し、その後に、チーズやヨーグルトの利用が増加すると、逆に飲用牛乳の利用が若者層を中心に減少し始めるという歴史があります。
この場合は、所得の高い富裕層や若者から、すなわち変化に積極的に対応できる層から利用がはじまり、徐々に、他の消費者にも普及していきます。
日本の経験からすると、飲用牛乳の利用が定着し、その後に、チーズやヨーグルトの利用が増加すると、逆に飲用牛乳の利用が若者層を中心に減少し始めるという歴史があります。
いずれにしても、牛乳乳製品の消費構造の変化は、酪農乳業の産業構造の変化をもたらします。
こうした問題についても、比較検討していくことが、それぞれの国の今後の酪農乳業の産業的発展の方向性を考えるうえで大変重要な情報となるでしょう。
以上が、このセッションに対する論点提起です。皆さんの参考となれば光栄です。
このプレゼン資料の詳細版です。(1.0MB)
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酪農政策と経済 - セッション2 - このセッションのねらい -日本の経験を踏まえて-