コラム、「ミルクの国の食だより」の第4回をお送りします。
フランス政府が提唱する大規模な食のイベント「Fête de la gastronomie(美食の祭典)」のご紹介です。
美食の祭典
フランス国内で、7200以上のイベント
ぶどう、かぼちゃ、ジロール茸…、秋の味覚の到来とともにFête de la gastronomie(美食の祭典) が秋分の日の週末3日間、フランス全土で行われました。
美食の祭典は2010年、フランス料理がユネスコの無形文化遺産に登録されたことを受け、フランスの食の豊かさを称えるイベントとして、2011年にフランス政府の提唱によって始められました。
この祭典は文化的な側面と経済的な側面をもち、農業、漁業、農産加工業、外食業、食関連産業、食卓用品産業など多数の部門がかかわり、食に関する国策に則ってすべての省庁が協力をし、全国で7200以上の多種多様なイベントが繰り広げられました。
シェフ考案「廃棄物ゼロ」のスープ
”1 chef, 1 recette, 1 marché ”
私の住むローヌ県でのイベントのひとつは、l’ADPM*(マルシェの発展振興会)の主催で、”1人のシェフ、1つのレシピ、1つのマルシェ”をテーマに行われました。
季節の野菜や果物を使い、かつ廃棄率ゼロのレシピを、地域のマルシェ(市場)のために考案するのがシェフの任務です。
これは、2014年が「ヨーロッパ反食品廃棄年」になることをふまえた企画で、指導者であるシェフのこの挑戦により消費者とマルシェの出展業者を感化する狙いがあります。
■「美食の祭典」会場の一つ、ヴィルルバンヌのマルシェ
種や皮もおいしく調理
日曜の午前、立ち寄ったヴィルルバンヌのマルシェでふるまわれたのは、かぼちゃとじゃがいものスープでした。
考案者は、この近くにある料理専門学校のシェフ。
じゃがいもを皮ごと使い、かぼちゃは皮と種をスープのトッピングに利用する、まさに廃棄ゼロの、丸ごと食べるレシピです。
じゃがいもを皮ごと使い、かぼちゃは皮と種をスープのトッピングに利用する、まさに廃棄ゼロの、丸ごと食べるレシピです。
素朴な味わいのスープは最初の一口、少し物足りなさを感じましたが、添えられたトッピングが効いています。
焼いた種はカリッと香ばしく、ローストして挽いた皮はパルメザンチーズと混ぜてあり、口の中でスープと絡み合うと程よい塩味を演出します。
焼いた種はカリッと香ばしく、ローストして挽いた皮はパルメザンチーズと混ぜてあり、口の中でスープと絡み合うと程よい塩味を演出します。
おいしい~! やさしい味は子どもの離乳食にもよさそう。
■スープの材料はこちら
■かぼちゃとじゃがいものスープ
■300人分の試食が振る舞われました。
■かぼちゃの種や皮でつくったトッピングで、スープがいっそう美味しくなります。
マルシェが閉まるお昼までに300人分の試食が用意されていました。
シェフを含めスタッフはすべてボランティア。食品店を営む女性は「顔を見ながらアピールできるし、店側にもとてもよいこと」と話していました。
このイベントの後、昨年は出展業者がマルシェがある日は終了後の清掃を確約し、清潔度がアップし、ゴミが減ったことで、清掃に使われる水の使用量も削減した、などといった成果があったそうです。
「文化と料理の関係を考察する」それが gastronomie
美食と訳されることが多いフランス語の gastronomie(ガストロノミー)。
「美味しく料理を調理して味わうこと」と解釈されがちですが、本来は「文化と料理の関係を考察する」という意味があります。
「美味しく料理を調理して味わうこと」と解釈されがちですが、本来は「文化と料理の関係を考察する」という意味があります。
料理に関係する文化は芸術だけでなく、物理学、生物学、地質学、農学、人類学、歴史学、哲学、社会学ほか、多岐に渡ります。
このことは、私たちが食育で目指す道すじを示しているような気がします。
このことは、私たちが食育で目指す道すじを示しているような気がします。
*l’ADPM (Association pour le développement et la promotion des marchés)
■会場のポスター
■町の美化にも役立ちました。 (写真は昨年の様子)
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。