コラム、「ミルクの国の食だより」の第13回をお送りします。
田舎に足を運ばなくても、住んでいるところで農業体験ができるイベント「田舎の日曜日」とは?
町でできる農業体験
本格的な夏にはまだ少し早い5月のリヨン。午前中はしっかりした上着が必要ですが、陽が高くなる午後は30℃を越える日も増えてきました。
夜も9時過ぎまで明るく、屋外で開かれるイベントが多くなる季節です。
夜も9時過ぎまで明るく、屋外で開かれるイベントが多くなる季節です。
5月中旬の日曜日、真夏日となったこの日はリヨン市内で”田舎の日曜日(Un dimanche à la campagne)”が開催されました。
これは、「田舎に足を運ばなくても住んでいるところで農業体験ができる」というファミリー向けイベント。
主催は35才以下の青年農業者によって組織される全国的組合組織、青年農業者組合のローヌ・アルプ地域圏支部(Les Jeunes Agriculteurs de Rhône-Alpes )。フランス全土で5万人の組合員を有し、青年農業者や青年新規就農者の利益保護と、農業者の世代交代促進に取り組んでいる団体です。
■「田舎の日曜日」会場全体の様子
■若い生産者で活気にあふれる直売所
■チーズを買い求める人たち
生産者と消費者の相互理解のために
生産者と消費者の間が分断されてきた都市部では特に、両者を再度結びつける必要がある今日。
このイベントを通して、若い生産者は自分たちの仕事について語り広く理解してもらい、消費者はそんな生産者の顔を知って、毎日食べている食べ物の背景を知る、そして最終的には新鮮で価値のある農産物を生産者が求める適正価格で消費者が納得して買い求める。この相互理解を再構築していく狙いがあります。
■農業には様々な仕事があることを紹介するパネル
おいしい特産品がずらり
リヨン8区の繁華街近くの広場に設置された「田舎の日曜日」には、ローヌ・アルプ地域圏の特産品がたくさん並びました。
ローヌ県のワイン、サヴォワ県とアルデシュ県からはチーズ、アン県の小麦を使ったパン、イーゼル県のくるみ、ドローム県のラベンダー、などなど…
牛乳の試飲もありました。ローヌ・アルプ地域圏で、生乳は最も多い生産額を誇る農畜産物です。
そして広場中央にはかわいい動物たちのミニ牧場。2頭の大きな乳牛のほか、羊、ヤギ、豚、鶏、ウサギが来ていました。
時間によって乳牛の搾乳の様子やチーズの作り方も披露してくれるそう。
時間によって乳牛の搾乳の様子やチーズの作り方も披露してくれるそう。
■この時はまだはしりのサクランボも瑞々しく甘くておいしい。しかも安い!
■ローヌ・アルプは農家手製のチーズが豊富なことでも知られている
■青いテントの中が牛乳コーナー
■テントの中とはいえ30℃を越える暑さで動物たちもたいへんそう
昔から使ってきた農機具で実演も
ほかにも、木製の器械でのりんごジュースの圧搾、くるみのオイルの圧搾、ラベンダーからエッセンシャルオイルを蒸留する過程など、昔から使われてきた農家の道具を使った実演も行っていて、田舎に遊びに来たような雰囲気をいっそう盛り上げていました。
子どもから大人まで楽しめ、地元の農業を再発見できた一日。
夏のバカンスの予定がまだでも、これを機に農家民宿でのグリーンツーリズムをバカンス先に考える家族も少なくなさそうです。
■りんごを圧搾し、傾斜した注ぎ口から出てきたジュース。自然な甘みでおいしい
■ぬり絵をしたり案山子を作ったり、子供向けのワークショップもいろいろ
■牛乳パックで遊ぶ子どもたち
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。