第14回 ビオ乳の一日(1) -ビオについて-

ミルクの国の食だより 連載一覧

コラム、「ミルクの国の食だより」の第14回をお送りします。
フランスでは、有機農業への理解を深める目的で毎年行われるイベントがあります。
このイベントではなんと、有機農産物だけでつくった朝食をいただけるそう!

”みんなで牧場で朝食を食べよう”

今年の牛乳の日は日曜日でしたね。
この日、フランスは「ビオ乳の日」でした。
2005年から毎年6月第一日曜日に行われ、今年で10年目となる ”la Fête du lait bioビオ乳の一日”。
毎年共通のテーマが ”Partageons le petit déjeuner à la ferme みんなで牧場で朝食を食べよう” なんです!
新鮮な空気の下、田園風景を眺めながら食べる朝食。しかも食材は牛乳はもちろん、すべてがビオ。
これは行かないわけにはいきません。どんな朝食が用意されているのか楽しみです!

「ビオ」とは?

その前に、気になるビオについてお勉強。
フランスでビオ(Bio)とは、Agriculture Biologique(有機農法)によって生じる生産物・製品全体を指し示す用語です。
そして有機農法とは、化学合成物質の使用を行わない農業のこと(フランス農業省定義)。
これは農薬を使わないという単純な意味ではなく、自然有機産物の地域内循環、栽培の輪作、家畜の自然な飼育を基本とし、土壌に存在する有機物の均衡を目指す生産方式をいいます。
関連して遺伝子組み換え物質の使用も禁止されています。

有機畜産の生産基準

植物栽培、畜産物、それぞれに、EU規則に準拠した有機生産基準があります。
有機畜産では、土地・植物と家畜の調和のとれた結び付きを発展させること、および家畜の生理学的および行動学的要求を尊重することが、生産基準の基本概念にあります。
とりわけ草食家畜においては、放牧草地があることが義務付けられていて、気象や土壌条件などの制限がない限り、放牧草地が最大限に使用されなければなりません。
これは家畜が外で自由に運動できるという動物福祉の観点からだけではなく、放牧は牛が直接草を食べ、ふん尿は草地に還元される省力的で物質循環に優れている、という技術的・経済的な観点からも重要視されます。
また、放牧地、畜舎、どちらにおいても単位面積当たりの家畜頭数が制限されています。
家畜にとって快適であることはもちろん、糞尿による汚染を防ぐことにもなります。
■リヨンから車で30分、ロワール県サンジョセフにある牧場

家畜の餌も「ビオ」

そして、与えられる飼料はすべて有機生産されたものに限られていて、草食家畜であれば少なくとも飼料の60%は自農場内で生産されている必要があり、仮に困難な場合は近隣地域の農家と協力して生産することとなっています。
また、飼料の構成、原材料についても厳密に管理されます。
家畜の疾病については予防を原則としています。
これは、有機農業における環境のシステムである「抵抗性のある系統の選定」、「有機的に栽培された良質な飼料の給与」、「適切な飼養密度、行動学的要求に応じた動物の飼養体系」を利用することが、病気抑制につながるからです。

ビオの考え方をまとめた図

人間活動の維持、動物本来の生活を尊重、健康の維持などなど、場面ごとにわかりやすくまとめられています。

”La bio en questions - 25 bonnes raisons de devenir bio consom'acteur”より翻訳
※このテーマは4回にわたって掲載します。次回をお楽しみに。
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。