コラム、「ミルクの国の食だより」の第17回をお送りします。
第16回に続き「ビオ乳の日」有機農産物の朝食会の後編です。朝食後には、酪農生産の課題についても聞きました。
ビオ乳の生産者のお話
朝食後は、臨時に設けられた直売スペースで買い物をしたり、牧場の施設を見学したりと思い思いに過ごします。
生産者からお話を聞くこともできました。
生産者からお話を聞くこともできました。
リウさんの牧場での「ビオ乳の一日」は、この地域でビオ農産物を生産している6戸の農家による共同経営農業グループ、”GAEC(*1)du Mûrier” の主催によるもので、「ビオ乳の一日」には2011年から参加していて、今年で3年目になるそう。
GAEC du Mûrier は1998年、2戸の酪農家のグループだったのが、2011年より肥育農家、鶏卵農家がそれぞれ2戸加わり、計6戸の農家の共同経営組織になりました。
■はちみつ、パン、チーズなど、本日の食材の生産者名が書かれている
酪農生産の課題
共同経営の酪農場では、乳牛はモンベリアード(Montbéliarde)が主で、他にはホルスタインとアボンダンス(Abondance)、計105頭が飼育されています。
乳の生産量は年間646,000リットルで、そのうち630,000リットルがビオ乳として集乳されています。
ちなみに、フランスでは酪農家1戸当たりの飼養頭数は40~50頭が平均です。(*2)
ちなみに、フランスでは酪農家1戸当たりの飼養頭数は40~50頭が平均です。(*2)
乳牛の飼料については、8割近くが自農場内で生産され、夏季は放牧草とサイレージが半々、冬季は放牧草は少なく、夏に収穫されたとうもろこしなどの穀物や干草が与えられています。
酪農、肥育、鶏卵の中で最も生産額の多い酪農部門。
グループの経営状況が生乳の価格変動に左右されないためにも、乳だけに頼らず、他の農産物の多様化の機会、差別化を追求していくのが今後の課題のひとつ、とのリウさんのお話でした。
グループの経営状況が生乳の価格変動に左右されないためにも、乳だけに頼らず、他の農産物の多様化の機会、差別化を追求していくのが今後の課題のひとつ、とのリウさんのお話でした。
■食事の後は、子牛とふれあったり、ヤギや羊、にわとりなどのミニ動物園を見たり、子どもは外を駆け回ったり、牧場の朝を満喫しました
フランス全土で15,000人が参加
そんな生産者の思いの中、開かれた「ビオ乳の一日」。
2011年当初から大好評で、この日も300人分の朝食が用意されたそう。
ビオについて理解を深めることはもちろん、みんなで分け合って食事をするのは何よりの喜びです。
ビオについて理解を深めることはもちろん、みんなで分け合って食事をするのは何よりの喜びです。
この日、フランス全土では15,000人が牧場を訪れ、10,000人が朝食を共にしました。
皆で美味しい朝食を食べるというレクリエーションとしての面だけでなく、誰もが有機農業の舞台裏を発見できるようにする教育の面からのアプローチも充実。
訪れた人々をおなかいっぱい楽しませる「ビオ乳の一日」でした。
■お土産は、カフェオレボールと、直売所で購入したビオの卵と、ビール
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。