第24回 味の発見、チーズとパンのマリアージュ-4

連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第24回をお送りします。
チーズとパンの相性について、おいしくいただく講座のレポート完結編!

匂いが強いウオッシュタイプ

4.マンステール-Le Munster-
まわりを塩水で洗うウオッシュタイプのチーズで、表面は湿っていて黄色っぽいオレンジ色。
匂いも強く、鼻が曲がりそう。しかし強烈な匂いの割には味はマイルドで意外に食べやすい、といわれます。
しかし、この匂いに慣れないとなかなか食べてみようとは思えません。でもよく観察してみると、このクサヤのような匂いの下からほのかにミルクの香りが感じられます。
食べてみると、確かに塩辛さや刺激などはなく、匂いの強烈さに比べれば穏やかな味わいです。
■修道院を意味するモスナールという言葉が由来のマンステール。ウォッシュタイプのチーズらしく匂いは強烈だが、味は意外にもマイルド

マンステールにはクミンの芳香のライ麦パン

このマンステールにぴったりなのがクミンシードが入ったライ麦パン。
カレーに代表されるスパイシーで強いクミンの芳香はマンステールのそれとも負けていません。いっしょに食べると、クミンのおかげでマンステールの匂いが和らいで、これならいけます。
でもマンステール好きの人にとっては香りがそのまま味わえるので、クミンがない方が好きなようです。
クミンは消化を促進する作用があるので、マンステールの生産地であるアルザス地方のクリスマスにはこのチーズとクミンが欠かせないとか。
■クミンシードと一緒に食べると、マンステールとの相性の良さを楽しめる

チーズの「五味」で味覚の感覚が開花

4種の個性的なチーズとそれぞれに相性がよいとされるパンを試食し、味の発見をした今回のアトリエ。
講義は大変興味深く、あっという間の30分でした。
印象的だったのが、「人によって味の感じ方が違うのは当たり前」という講師の言葉。
性別、年齢に加え国籍や文化的背景の違いによって、随分と変わるものだと改めて気づかされました。またそればかりでなく、味覚と匂いの嗜好は、幼児期からの学習の積み重ねによる賜物です。
今回のアトリエでは冒頭の講師の言葉のとおり、チーズに五味があることを意識して食べると、味覚の感覚が開花する気がしました。大人でも、こうした味の気づきが好奇心を刺激し、食への関心をさらに高め、味覚が磨かれていくのだと感じました。
子どもの頃からたくさんのチーズを食べ慣れているフランス人にとっても、チーズを食べる受け皿でしかなかったパンがチーズの味にこれほどまで変化をもたらすのは、目から鱗だったようです。
でも最後はやっぱり、「これでワインがあればパーフェクトだったのに~」ですって・・・!
■”チーズなくしてフランスにあらず”というほど多くの種類を誇る。一人当たりのチーズ消費量は26.2kg(2012年度)で世界第一位 
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。