元気な1日は朝食から - その2

連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第65回をお送りします。前回に続き朝食のお話です。フランスの朝食といえばバターを塗ったバゲットとカフェオレを思い浮かべますが、それが定着したのは近年になってからのようです。

フランス語の朝食の語源とは?

フランス語で朝食は“petit déjeuner”(プティ デジュネ)といいます。

断食を意味する”jeûne”に否定の接頭辞をつけてdéjeuner(デジュネ)=「断食を断つ」というのが本来の意味です。

昔は午前10時~正午くらいにデジュネを摂り、その後17時~18時に二回目の食事を摂るという1日2回の食事が庶民では基本でした。

その日初めて食べる食事は、現代の時間にあてはめると昼食の頃になります。

現在もデジュネは、

1. 身体機能を覚ますために朝摂る食事
2. 一日の真中に摂る食事

という二つの意味があります。
両者を区別するため、一般的には朝食をpetit déjeuner(プティ デジュネ)と呼んでいます。*

労働時間が長くなり、食事の回数が1日3回に

“petit déjeuner”が朝食を示す言葉になったのは歴史的にみると、それほど古い話ではありません。

19世紀半ば、産業革命によって商工業従事者が増え、都市部では労働時間が長くなりました。夕食を摂る時間がどんどん遅くなり、労働者は午前の食事だけでは空腹を凌げません。

これまでの農業や畜産が主体となる生活形態においては、太陽のリズムで過ごしていたため、人々の時間感覚はおおざっぱ。

時間に生活が支配されるということは基本的になかった農村社会とは異なる工業社会に転換したことで人々は戸惑い、当初は何時に食事をとるべきかすらよくわからなかったようです。

結果的には、デジュネ を2回に分け、目覚めの時に食べる軽めの食事を第一のデジュネ( premier déjeuner)とし、正午頃に食べる食事を第二のデジュネ(second déjeuner)または主要なデジュネ( grand déjeuner)としました。

この新しい食習慣はパリから始まり、徐々に他の町々にも浸透していくことになります。

1日2回だった食事のリズムが朝9時、昼2時、そして就業後の3回になり、フランス社会に根付き始めた19世紀の終り、第一のデジュネに代わって「朝食」=petit déjeunerという言葉が生まれたのです。
  • 太陽の運行に基づいた自然と調和する生活から、時計を見ながら皆が同じリズムで生活する社会へ。時間が価値や富を生み出す重要な要素になった産業革命以降、フランスで朝食の習慣が生まれました

時代とともに変わる朝食メニュー

朝食に何が食べられていたかは社会階級や職種によって異なるので一概にはいえませんが、支配階級以外の多くの人々がスープ、またはワインに浸したパンだけだったそうです。

貧しい暮らしでは第二次世界大戦後までこのような朝食が続きました。

バターを塗ったバゲット、温かいカフェオレ…
私たちが思い描くフランスの朝食が定着するのは、もう少し先になります。

*Dictionnaire de l'Académie Française  9e édition
  • 19世紀、都市部であっても日々の食生活で欠かせなかったパン。労働者はパンを野菜スープに浸したものや、牛乳を入れたパン粥、何もなければワインに浸しただけのパンを朝食に摂っていたそう
※このテーマは次号に続きます。