新年のフランス伝統菓子‐ガレット・デ・ロワ その1

連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第62回をお送りします。日本で七草がゆを食べるころ、フランスでは濃厚なパイ「ガレット・デ・ロワ」を食べて、エピファニー(Epiphany 公現節)を祝います。

1月の伝統菓子

あけましておめでとうございます。

1年で最も町が華やぐクリスマスが終わり、年が明けてもまだツリーやイルミネーションが街のあちらこちらに見られる1月のフランス。

ご馳走が続き、すっかり胃袋が疲れ気味となる七草の頃、1年の無病息災を願って食べる日本ならではの行事食が七草粥。
一方、同じ頃フランスで食べられている伝統菓子といえば、ガレット・デ・ロワ(galette des rois)です。
  • 1月終りまでパン屋の店先に並ぶガレット・デ・ロワ。12/26〜1/6間に毎年3000万個も食べられているそう

ガレット・デ・ロワ=王様の菓子

ガレット・デ・ロワはアーモンドペーストとカスタードクリームを併せたフィリング(フランジパーヌ frangipane)が入った円形状の平たいパイのこと。
アーモンドの風味が強く濃厚な甘さが特徴で、ボリューム感がある焼き菓子です。

キリスト教の行事、エピファニー(Epiphany 公現節)を祝うための伝統菓子で、フランスの新年には欠かせません。
エピファニー とはクリスマスの12日目にあたる1月6日に、アジア、アフリカ、ヨーロッパの3大陸から訪れた東方三博士が幼子イエスを礼拝し、贈り物をした日とされています。

「ロワ rois」=「王たち」とは東方三博士のことで、彼らが持参した供物のシンボルがガレット・デ・ロワ=王様の菓子なのだそう。

エピファニーは6日と決まっていますが、実際は1月の第1日曜日が慣習となっていて、この日は家族で集まってガレット・デ・ロワを食べ、クリスマスを締めくくるというのが習慣になっています。

1月に入ると町のパン屋やケーキ屋のウインドウは、この伝統菓子でいっぱいになるのがフランスではおなじみの光景です。

冬至を祝う菓子が起源?

実はガレット・デ・ロワを食べる習慣は、キリストが生まれるずっと昔、古代ローマの農耕神サトゥルヌスを称える、冬至祭が起源であると考えられています。

冬至といえば、1年で一番夜が長い日。この日を境に徐々に昼が長くなるため、古代の人々にとって冬至は太陽の復活の日‐新しい年の始まりでした。

新年祭の儀礼でもあった冬至祭はその年の最も重要な農業行事で、12月中旬から数日間にわたって行われ、豊穣を祈願してご馳走を食べたり、「幸運の贈り物」と称したプレゼントの交換も行われていたそうです。
クリスマスの原型はこの冬至祭ともいわれています。

この祭で庶民や奴隷にはイチジクとデーツ、はちみつで作った丸い形の菓子が分け与えられ、皆で冬至を祝福しました。

菓子の中には生命のシンボルでもあったソラマメが入れられ、そのソラマメにあたった人は奴隷でさえも祭りの期間だけ、饗宴の王の座が与えられたのだそうです。

現在のガレット・デ・ロワの中にもひとつだけ、フェーヴ(fève 仏語:ソラマメ)と呼ばれる小さな陶器が入っているのはこの風習に由来します。

今はソラマメ程の陶器のミニチュア

  • その昔、菓子の中にはソラマメを忍び込ませていたが、今はソラマメ程の陶器のミニチュアが入っている
※このテーマは次号に続きます。