コラム、「ミルクの国の食だより」の第49回をお送りします。
前回に続き、都会で開かれる農業イベントのご紹介です。いろいろな家畜に出会えて子供たちは大喜び!子どもたちが自国の農業を身近なものに感じる仕組みにもなっています。
青年農業者の誇り
さて、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地方の土地柄、生産に適していてかつ多様化しやすい農業として酪農、食肉生産、麦・菜の花・とうもろこしなどの耕作、果実、ぶどう栽培などがあります。
特産品は125を数え、優れた農産物に与えられる様々な公的食品品質証明*をこの地方の農場全体の1/4が取得しているそう。
農業と林業が土地の80%を占めるオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地方でも、地域の活力として、そして生きていくうえで不可欠な農業について意外と知らない市民たち。
今日食べたものがどこから来たものなのか、誰によって、どういうように生産されたものなのか。
今日食べたものがどこから来たものなのか、誰によって、どういうように生産されたものなのか。
その答えを導いてくれるのがここにいる青年農業者たちです。「食の原点を知ってほしい」「自分が営んでいる農業を知ってほしい」という情熱が伝わってくるのと、そして何よりも皆、生き生きとして楽しそうな表情で消費者と接する姿が印象的でした。
自分がフランスの食文化を支えているという誇りに満ち溢れている生産者たち。一方の消費者もまた、生産者の顔を見て、おいしいものを供給してくれる地元の農業を誇らしく感じたに違いありません。
秋休みには収穫祭へ
10月中旬から学校が秋休みに入るフランス。秋も半ばというのにリヨンは日中は夏の暑さが続いています。
収穫祭などのイベントが各地で開かれるこの季節、さて、子どもたちをどこに連れて行こうかしら。
*AOC(Appéllation d’Origine Controlée原産地管理呼称)、ラベル・ルージュ(食品品質保証マーク)、IGP(Indication Géographique Protégée地理的保護表示)を取得しています。
■トラクターもお目見え。青いテントの中では牛乳・乳製品の試食が行われている
■青かび、白カビのチーズとウォッシュチーズの試食。マイクを持った進行役がチーズの特徴などを説明している
■フレッシュチーズのフェッセルの試食。ヨーグルトよりカードがポロポロと硬い。ヨーグルトは発酵で加温するが、フェッセルは加温なしで発酵するらしい。チーズ臭があり、ピリッと炭酸のような刺激と少し苦味がある。好みでジャムといっしょに
牛乳の試飲と搾乳のデモンストレーション
■牛乳の試飲はセルフサーバーで。好みで杏、チェリーなどのシロップで味つけをしても
■搾乳の仕組みを伝える牛の人形
■ふれあい牧場に登場した牛はホルスタインとブラウンスイス。大きくて温かい牛に子どもたちも興味津々
■搾乳のデモンストレーション。搾乳後、生乳はバターと脱脂乳にわけられて…と説明が
子どもたちは家畜に大喜び
■鶏肉と同じくフランスでよく食べられる七面鳥
■小さなひよこのぬくもりを手のひらで感じる子ども
牧羊犬も登場
■牧羊犬がアヒルを追いかけるデモンストレーション。何羽もいるのにひとつの場所に集まる様子はおみごと
■特産のくるみをつかったパチンコで遊ぶ子ども
■かなづちでくるみの硬い殻を割る子ども
りんごジュースや焼きたてパンも
■古い圧搾機のデモンストレーション。売りものに不向きなりんごでもジュースに加工すれば美味しく
■ 薪を使ったパン焼き釜。あたりには香ばしい匂いが立ち込めていた。
子どもたちが自然と自国の農業を身近なものに感じる仕組みがそこにある
子どもたちが自然と自国の農業を身近なものに感じる仕組みがそこにある
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。