コラム、「ミルクの国の食だより」の第50回をお送りします。
秋は収穫の季節。フランスでは地方色豊かな食材がマルシェを彩ります。
フランス料理を讃える記念日「美食の祭典」
街路樹の葉が黄色や赤に色づき、秋の深まりを感じるフランス。フランスの秋は日本の秋よりも短く、少しさみしくなる季節ですが、農業大国フランスのマルシェ(青空市場)には秋を代表する味覚がずらりと並び、賑わいを見せています。
日本ではみかけないきのこや根菜類など、夏よりもたくさんの種類の野菜や果物が溢れる秋は、食のイベントが多く開催される時期でもあります。
そのひとつがフランス料理を讃える記念日「Fête de la gastronomie = 美食の祭典」。フランス人が誇る料理という文化遺産を讃えるため、その豊かな食文化を紹介し広めるために2011年より、秋分の日の週末にフランス全土で開催されています。
■秋の味覚が出揃う土曜のマルシェは多くの買い物客で身動きができないほどごった返す
■フランス国内外で行われる観光イベント、美食の祭典。美食の都市リヨンをPRするパンフレットが並ぶ
「1つのマルシェ、一人のシェフ、1つのレシピ」
年ごとに、フランスの食について考え、その発見を促す特定のテーマが決められていて、今年のテーマは「Au coeur du produit = 食材中心」。
食材のもつ価値を改めて見直し、その土台となる土地と料理文化に焦点を当てた内容で、試食会、食にかかわる仕事場や農場の見学、展示会など、各地で行われますが、リヨン市が力を入れているイベントが「1 marché, 1 chef, 1 recette = 1つのマルシェ、一人のシェフ、1つのレシピ」。
レストランで働くシェフがマルシェで旬の食材を使ったレシピを即興で披露するものです。
リヨン市内1区 - 9区それぞれのマルシェと、リヨン市近郊9つの町のマルシェで開催された「1 marché, 1 chef, 1 recette」 。
シェフたちは決められた旬の食材(洋ナシ、プルーン、カリフラワー、ポロねぎ)を一つ選び、テーマにそった異なる二つのレシピを紹介するのが今年の課題です。さて、どんな料理に会えるのでしょうか。
■マルシェの中央あたりに設置された 「1 marché, 1 chef, 1 recette」
■この週の火曜には洋ナシを使ったレシピが披露されたそう
■今が旬のカリフラワー
牛乳とカリフラワーの絶品スープ
リヨン8区、モンプレジールのマルシェのシェフは、カリフラワーを使ったレシピを披露。
コリコリとした食感がおいしい生のカリフラワーを使ったクスクスのタブレ・サラダ、小麦粉を牛乳で溶いてふわっと軽い衣で揚げたカリフラワーのベニエ、牛乳とクリームで甘くとろとろに煮たカリフラワーのスープ。
■旬の食材カリフラワーを用いたシェフの料理は、手前からクスクスのサラダ、スープ、ベニエの3種類
生で、煮て、揚げてと、三種の調理法で料理されたカリフラワーは、どれも素材の持つ味を活かしたやさしい味わい。加熱の仕方で異なる美味しさが楽しめます。カリフラワーってこんなに美味しかったんだ!と再発見。
一株が大きくて、使いきれずに残ってしまうし、味付けもマンネリになるし。。。と、買うのを躊躇していた食材ですが、これなら家で手軽にできそうです。
一株が大きくて、使いきれずに残ってしまうし、味付けもマンネリになるし。。。と、買うのを躊躇していた食材ですが、これなら家で手軽にできそうです。
一株丸ごと使うスープは、茹でたら牛乳とクリームを入れるだけ。ブイヨンや肉を入れなくても、コクがあります。
「旬の食材はそれだけで味があるので、シンプルな料理が一番。特別な技は必要なく、食材の持つ力が料理を美味しくするだけ」とシェフのミカエルさんが話してくれました。
地方色豊かな食材で活きるフランス料理
旬の食材が暦のように四季の移ろいを知らせてくれるマルシェ。
地方色豊かな食材こそがフランス料理の価値を高め、またこの国の風景やその持続的発展にも貢献していることが間近に感じられる秋のひとコマでした。
■説明してくれた女性も熱々のベニエを試食
■シェフのミカエルさん。食のプロであるレストランのシェフともマルシェなら気軽に話せるのがいい
■美味しそうな匂いに誘われて足を止めるマルシェの買い物客
■栗、ぶどうなど、マルシェには秋色の食材が並ぶ
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。