第十四話 今日の牛乳、おいしい!

元気くん一家のミラクルミルクライフ

日本初! 食育小説「元気くん一家のミラクル ミルク ライフ」の第14回です。

お母さんが牧場のお土産に、大きなビン入りの牛乳をもらいました。さて、どんな味がするのかな?

第十四話 今日の牛乳、おいしい!

お母さんが仕事から帰ってきて、晩ご飯の支度をしにキッチンへ。おばあちゃんは風邪気味でお部屋にいます。寂しかった愛ちゃんは、

「お母さん、ノド渇いた~」と部屋から出てきました。

いつもと違う牛乳なのかな?

「今日、ステキなお土産をもらったの。旅行で牧場に行ったお友達のお土産よ。」

冷蔵庫から、大きなビンが出てきました。

「牛乳かぁ。でも飲んでみる。」まだちょっと牛乳は苦手な愛ちゃん。

愛ちゃんの大好きなキャラクターがついた、お気に入りのグラスにお母さんが注いでくれました。

「あれ、いつも飲んでるのとは、ちょっと違う味。濃いね!」

「茶色いジャージーという種類の牛の牛乳なのよ。いつも飲んでいるのは牧場で見た白と黒のホルスタイン。それよりは体が小さいけど、乳脂肪が多い乳を出すの。だから濃く感じるのね。」とお母さん。

「ただいま~。」部活を終えて、元気くんも帰宅しました。

「あー、お腹すいた!愛ちゃん、美味しそうだね。」

「元ちゃんも飲むよね?」

ノンホモって、どんな牛乳?

「もちろん!運動直後の牛乳は筋肉にいいんだよ。」

愛ちゃんが大きめのコップを持ってきて、上手に注ぎました。

「おっ、美味しいなぁ。お代わりしたいよ。」

「ダメ!お母さんたちの分を取っといて。2杯も飲んで晩ご飯、食べられる?」

「大丈夫だよ。じゃ、いつもの牛乳でいいや。」

牛乳を飲み終わった愛ちゃんは、ビンと紙の容器を見比べています。

「お母さん、ビンにノンホモって書いてあるけど何のこと?」

「飲んだ時にちょっと白いものが浮いてなかった?」

「これかな?飲み終わったコップに小さな白いかたまりが付いてる。」と元気くん。

「そう、それは乳脂肪、つまりクリームが浮き上がったものなのよ。普段、お家や給食で飲んでいる牛乳はホモジナイズと言って、工場で小さな穴に牛乳を通して、クリームが浮き上がらないように脂肪の粒を細かくしているの。ノンホモというのはホモジナイズをしていないということなの。」

「振って飲みましょうって、ビンに書いてあるよ。浮いてるまま注いだら、その人だけ濃いのになるね。」

「愛は最初だったから、その濃いのを飲めたんだね。」

「ちょっと愛ちゃんには難しいけど、ホモジナイズすると、乳脂肪が細かくなって、消化吸収も良くなるし、乳脂肪に溶けているビタミンAなども分散するの。」

殺菌温度が違うと風味が変わる

飲み終わった元気くんもビンと紙の両方の容器の表示を見比べています。

「僕はビンの方が後味があっさりした気がしたな。ニオイも少ないから、愛が飲みやすかったんじゃないかな。」

「四角く囲ったところにどちらも殺菌温度の表示が書いてあるでしょう?」

「あるある。ビンの方は63℃30分間。紙容器の方は130℃2秒間。紙の方が2倍くらい温度が高いね。温度が低いと、殺菌の時間は長くなるんだね。」

「栄養は変わらないのよ。牛乳はもともと熱に弱いビタミンCが無いから。でも卵が火を通すと固まるように、たんぱく質は熱で性質が変わるの。変性というんだけど、63℃の方が熱変性が少ないから、あっさりした味わいに感じるのね。」

「僕はいつも飲んでいる方が好きかも。」

「美味しさは人によって感じ方が違うから、好みは違っていいのよ。」

紙容器の成分グラフ(*)を見ると

「紙容器に面白いグラフが付いているよ。」元気くんが気づきました。

「乳脂肪と無脂乳固形分の成分変化だって。」

「ムシー?」愛ちゃんがキョトンとしています。

「無脂乳固形分は牛乳の水分を除いた固形分のうち、乳脂肪を除いた固形分のこと。簡単に言うとたんぱく質やカルシウムなどのミネラル、ビタミン類などのこと。牛乳で摂りたい栄養ネ。」

「どっちも冬の方が高いね。」

「牛は寒いところの動物なので、冬の方が元気で乳をいっぱい出すし、濃いの。」

「夏と冬、比べてみたいな。」と愛ちゃん。

「残念でした。賞味期限の長い牛乳でもそこまでもたないから、飲み比べはできないわ。」

「紙容器の方は無脂乳固形分8.3%以上、乳脂肪分3.7%以上って書いてある。」

「夏場の最低値が表示されているの。グラフでは冬の乳脂肪は4%くらいになっているでしょう?」

「牛は生き物だから、変わるんだね。」と元気くん。

「そうよ。工場で容器に詰めるから工業製品のように思っている人がいるけど、野菜と同じ農産物ですもの。」

(*)一部の種類別 牛乳の側面の広告欄に付いてます。

風邪の予防に

おばあちゃんが部屋から出てきました。「にぎやかだね~。」

「おばあちゃん、だいじょうぶ?」具合が悪いのか愛ちゃんが心配しています。

「ちょっと喉が変なんだ。熱も出ていないよ。」

「よかった。おばあちゃんも何か飲む?」

「もう作ったわ。さあどうぞ、特製ショウガ入り甘酒ミルクです。」

「愛もこれがよかったー。」

「ご飯食べられなくなると困るから、明日作ってあげる。ココア入りの甘酒ミルク。甘酒が苦手な人も飲みやすいのよ。」

今回登場したレシピはこちら

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管理栄養士のお母さんから

牛乳は、乳牛の生乳100%である農産物。
野菜や果物と同じように、同じミルクでも環境や育て方などで風味に違いがあります。
さらに乳牛は人間と同じ哺乳動物で、母牛が子牛を出産することでミルクを出します。
そんな乳牛という生き物からの恵み「牛乳」だからこそ、風味にも個性があります。
詳しくはこちらからご覧ください。
もっと知って、もっとおいしく 牛乳は生きている(印刷用リーフレット)
管理栄養士・消費生活アドバイザー・フードコーディネーター 加藤明子
牛乳・乳製品の相談業務を平成6年より担当し、食育授業、料理講習会、勉強会等で講師を務めている。近年は小中学校における食育授業、学校栄養職員、教諭、PTA等の研修や講習会、大学での授業、フードコーディネーター養成講座の講師など、東京、埼玉、千葉、神奈川を中心に活動している。