第55回 フランスのクリーム 泡立てのコツ その2

ミルクの国の食だより 連載一覧

コラム、「ミルクの国の食だより」の第55回をお送りします。
第54回に続き、フランスのクリームの紹介です。1人当たりの消費量は日本の4倍。そして、常温保存可能なクリームが6割以上を占めます。

クリームの消費量は日本の4倍

いろいろな種類のクリームが存在する酪農大国フランス。
フランスでクリーム(crème)は「100gあたり30g以上の乳脂肪を含む乳」と定義されています。
生乳には3 - 5%の乳脂肪が含まれているので、1リットルのクリームを作るためには7 - 10リットルの生乳が必要になります。年間製造量は443,000トン、一人当たりの購入量は3.7kg(2016年)です。
ちなみに日本の一人当たり年間消費量は0.9kgなので、比較すると4倍!
家庭用のほか、業務用はデザート類やスープ類などの材料として、また、チョコレート店、パン屋などで多く使われています。
■ 冷蔵保存が必要なクリーム類。液状クリームのほか、半固形状クリームがある。紙パック、パウチ、プラスチックボトルなど容器も様々で、どれを選べばよいのかわからない

殺菌方法による4つの分類

殺菌方法の違いにより、次の種類があります。
1. Crème crue クレームクリュ(無殺菌クリーム)
「生の」「未加工の」を意味する「crue」 。
生乳を遠心分離して脂肪分が多い部分を取り出しただけのもので、加熱殺菌を行っていません。クリームの原型である液状で、一般的に脂肪分は他のクリームより高く、やさしいミルクの芳香が特徴。保存期間が短くデリケートな製品なので、スーパーでは売られていませんが、マルシェのチーズ屋に置いてあることがあります。冷蔵保存、消費期限は製造後約7日。
2. Crème pasteurisée  クレームパストゥリゼ(殺菌クリーム)
クレームクリュ(Crème crue )を72℃、15~20秒間の加熱殺菌をしたクリーム。このうち、24時間以内に加熱殺菌されたクリームのみ、「生の」「新鮮な」という意味を表す「fraîche フレッシュ」という文言を使うことができます。他の方法で加熱殺菌されたクリームには使えません。
液状のほか、 乳酸発酵により半固形状の質感を呈したクリーム( crème épaisseクレームエペス)があります。冷蔵保存、消費期限は製造後約30日。
3. Crème stérilisée クレームステリリゼ(滅菌クリーム)
充填後に115℃15~20分で加熱殺菌した液状のクリーム。長い加熱時間による加熱臭があるため、常温保存可能品としては、次のUHTクリームの方が加熱による品質変化がほとんどないので主流になっています。
4. Crème stérilisée UHT クレームステリリゼ UHT(UHT滅菌クリーム)
140~150℃、2秒間で超高温瞬間加熱殺菌されたクリーム。
液状のほか、粘度のあるタイプがあります。常温保存、賞味期限は製造後約120日。クリームの全生産量のうち常温保存可能製品が6割以上を占めます。
殺菌方法によりクリームの表示名が異なり、保存方法、保存期間及び味に違いが生じます。
殺菌方法、脂肪含有量、質感の組み合わせにより、多様なクリームが製造されています。
■ 常温保存のクリーム類。クリームの全生産量のうち6割以上が常温保存可能製品
※このテーマは次号に続きます
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。