第54回 フランスのクリーム 泡立てのコツ その1

ミルクの国の食だより 連載一覧

コラム、「ミルクの国の食だより」の第54回をお送りします。
フランスで春を告げる果物、イチゴ。イチゴに欠かせないのがクリームですね。さて、フランスで売られているクリームは日本のものとだいぶ違うようです。

春を告げる果物、イチゴ

最高気温が氷点下の日も多くあり、2月は厳しい寒さが続きましたが、3月に入ると暖かい日と寒い日が交互に繰り返されるようになりました。
日が少しずつのびてきたり、木の芽がふくらんできたりしているのを見ると、春が一歩ずつ近づいていることを実感します。そしてこの時期、ワクワクした気分を盛り上げてくれるのが、マルシェに並び始めたイチゴ。フランス人の一番大好きな果物です。
フランスでイチゴの旬は5月から夏にかけてですが、3月には早生の品種ガリゲット(gariguette)が出始めます。日本のイチゴと比較するとだいぶ小粒で、甘みは強くありませんが、酸っぱすぎず、野生味を感じる素朴な味わい。早生なので価格は高めですが、見かけたらうれしくてつい買いたくなります。
■「マルシェに早生種のイチゴ(ガリゲット)が出始めると春の到来を感じる

甘いクリームをたっぷり添えて

そのまま食べても、または日本のように練乳をつけたり、砂糖と牛乳をかけて食べたりしても美味しいですが、クレーム・シャンティイをたっぷり添えて食べるのがフランス流。
クレーム・シャンティイ(crème chantilly)はふんわりとホイップした甘いクリームのことで、17世紀にシャンティイ城の宮廷料理人が発明したデザートが名前の由来ともいわれています。イチゴなどの甘さ控えめなフルーツにだけでなく、甘いもの好きなフランス人はアイスクリーム、ケーキやタルトにものせて食べます。
手作りのクレーム・シャンティイなら格別。クリームを買いにスーパーに行くと、売り場には想像以上に多くの種類のクリームが並んでいます。

クリームにもたくさんの種類が

日本で売られているような200mlの紙パックを想像していましたが、注ぎ口のついた紙パック、パウチ容器、プラスチックボトルなどいろいろあり、大きさも200ml、330ml、400mlなど様々。
チルド製品だけでなく、常温保存可能品もあります。
そして、クリームといえば液状とばかり考えていましたが、液状はもちろん、よりとろみがあるものや、半固形のようなテクスチャーのクリームも。日本ではお菓子作りやコーヒーに入れて使うのが主な用途ですが、フランスではクリームが日常欠かせない食品ということが一目瞭然です。
どのクリームを選べばよいか迷うところですが、泡立ての鉄則(冷やしたクリームを使う/使用するボウルや泡立て器は水気や油脂をよく取り除いて冷やしておく/クリームに対し10%程度の砂糖を入れる)さえ守れば、酪農大国ですし、どれでも美味しいクレーム・シャンティイができそうです。
ふんわりと気泡を取り込んだクリームにするために、
液体で、
脂肪分が高め、
常温でなく冷蔵で売られているクリーム
を選ぶことにしました。

なかなかホイップできないフランスのクリーム

家に戻り、よく冷えたクリームに砂糖を加えて泡立て開始。うっかり混ぜすぎて分離させてしまわないように最初は手動で泡立てしていましたが、疲れてきたので途中でハンドミキサーに変更し、10分、15分、、、と攪拌し続けましたが、思ったようには固まってくれません…。
6 - 7分立てくらいのトロッとした感じにはなりますが、ショートケーキにデコレーションできるくらいの固くピンと角が立つようなホイップクリームにはなりません。
クリームの入ったボウルを冷やしてもうまくいきません。いくつか他のメーカーのものでも試してみましたが、どれも同じような結果に。
日本のものと比べると、なぜか上手にホイップできないフランスのクリーム。
製造方法や種類など、詳しく調べてみることにしました。
■ イチゴにはホイップクリームをたっぷり添えて食べたいところ。フランスのクリームなかなか固まらないのはなぜだろう
※このテーマは次号に続きます
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。