ウワサ28 牛乳中の飽和脂肪酸は生活習慣病の原因? -その3-
脳卒中のリスクが高まる!?

牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!

ウワサ28 牛乳中の飽和脂肪酸は生活習慣病の原因? -その3- 脳卒中のリスクが高まる!?

牛乳を摂取する習慣は、脳卒中の予防に有効です。

● 要介護となる原因の第1位は、脳卒中
脳の血管が詰まる(脳梗塞)、破れる(脳出血)などによって、脳細胞に血が通わなくなり、脳が障害を受ける病気を総じて「脳卒中」といいます。脳梗塞、脳出血は、脳の血管が動脈硬化によって塞がってしまったり、もろくなって破れてしまうことが原因で起こります。
脳卒中を発症する人の数は年間約29万人。発症者の半数以上が死亡、あるいは一命をとりとめても脳に障害が残り、介護が必要な状態となります。
下のグラフを見ると、65〜70歳代が寝たきりになる原因の第1位は「脳血管疾患」(主に脳卒中)です。 

 

介護が必要になった主な原因

● 脳卒中は、牛乳摂取量の少ない人に多い?
ウワサ26「牛乳中の飽和脂肪酸は生活習慣病の原因? その1〜心臓血管病のリスクが高まる!?」でも紹介しましたが、動脈硬化はLDL コレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の増えすぎが原因であり、LDL コレステロールの血中濃度を上昇させる働きのある飽和脂肪酸を摂りすぎると動脈硬化が進行する、すなわち飽和脂肪酸を含む牛乳・乳製品は動脈硬化を進行させるというのがウワサの元のようです。
しかし、ウワサ26で結果を示したように、多数の疫学研究を統合的に解析したメタ解析によって、牛乳・乳製品の摂取は心臓血管病の発症を予防するという最新結果が得られました。そして脳卒中については、むしろ飽和脂肪酸の摂取量が少ない人に、脳卒中による死亡や罹患の増加が認められるという結果が出ている研究が以前から報告されていました。

● 東アジア地域の人にとって予防効果が高い!
ここでは、アメリカ心臓協会誌に掲載されたメタ解析結果を紹介します。


脳卒中と牛乳摂取習慣の疫学研究とメタ解析

この論文では、全体の統合解析を行う前に、まず東アジア諸国と欧米諸国の結果を分けて統合解析を行っています。なぜ東アジアと欧米を分けたのでしょうか?
心臓血管病は、欧米に多く、東アジア地域では比較的少ない病気です。一方、脳卒中は、欧米では少なく、東アジア地域に多い病気です。そして牛乳・乳製品の摂取量は、欧米では多く、東アジア地域では少ないことが知られています。この有意差ゆえに、論文の筆者は2つの地域を分けて解析したのです。
メタ解析を行ってみて分かったことは、牛乳を摂取する習慣は、脳卒中の予防に有効であること、特に東アジアの人にとって予防効果がより大きいということでした。
これまでみてきた研究結果はすべて、心臓血管病、糖尿病、脳卒中に牛乳・乳製品はむしろ予防的であることを示していました。そして飽和脂肪酸は、多すぎても少なすぎても生活習慣病のリスクを高める原因になることがわかっています。
「飽和脂肪酸は健康に悪い、だから飽和脂肪酸が含まれる牛乳も健康に悪い」といった短絡的なものの見方は、優れた栄養食品である牛乳に「濡れ衣」を着せるだけでなく、生活習慣病を予防するための適切な生活習慣をも妨げる可能性があることを知っておきたいものですね。

●疫学研究とメタ解析については、「ちょっと気になる基礎知識 疫学研究って?」にて詳しく掲載しています。疫学とはどのような研究であり、メタ解析はどのように行われるのか、メタ解析図の見方などいついて分かりやすく解説しています。ニセ科学にだまされないために、基礎知識を学んで情報を読み解く力をつけよう!