コラム、「ミルクの国の食だより」の第8回をお送りします。
「第7回 フランス食事情(1)普段の食事」に続き、フランス食事情(2)をお送り致します。
統計調査からみえる、食生活のお国がらとは?
調査からわかる食事の様子
フランス版国民栄養調査(*1)をもとに、フランス人が毎日どんな食品を消費し、どのくらいの栄養を摂取しているか見てみましょう。
(フランス:18-79才、日本:20才以上の結果を比較。日本は平成23年国民健康・栄養調査より)
(フランス:18-79才、日本:20才以上の結果を比較。日本は平成23年国民健康・栄養調査より)
栄養素の摂取
エネルギー
●2,162Kcal
日本人の平均より300Kcal以上多い。
日本人の平均より300Kcal以上多い。
パティスリー(ケーキ・ペストリー類)から129Kcal摂取していて、最も消費量の多い食品であるパン(317Kcal)に次ぐ摂取エネルギーに。
フランスは美味しいパティスリーが充実してるから仕方がない…!?
3大栄養素からのエネルギー摂取割合
●炭水化物44%・たんぱく質17%・脂質39%
日本人の平均(炭水化物 56%、たんぱく質 15%、脂質 26%)と比べ脂質が多く、炭水化物が少ない。
日本人の平均(炭水化物 56%、たんぱく質 15%、脂質 26%)と比べ脂質が多く、炭水化物が少ない。
フランスでの推奨量は、炭水化物 55%、たんぱく質 15%、脂質 30%。
カルシウム
●914mg (男性984mg 女性850mg)
18才以上の推奨量は900mg。
牛乳・乳製品からはおよそ 390mg、飲料水から 94mg、野菜から 48mgを摂取。
18才以上の推奨量は900mg。
牛乳・乳製品からはおよそ 390mg、飲料水から 94mg、野菜から 48mgを摂取。
女性の摂取量はすべての年代で推奨量を下回っている。
特に、男女とも10代のカルシウム不足が深刻で、10-18才の推奨量は1,200mgであるが、 約800mgしか摂れていない。
特に、男女とも10代のカルシウム不足が深刻で、10-18才の推奨量は1,200mgであるが、 約800mgしか摂れていない。
食品の摂取量
牛乳・乳製品の摂取量
●201g
日本人の2倍以上を摂取。牛乳 86g(*2)、チルド乳製品 82g(*3)、チーズ 33g。
日本人の2倍以上を摂取。牛乳 86g(*2)、チルド乳製品 82g(*3)、チーズ 33g。
牛乳は8割の人が朝食で摂っている。チルド乳製品は女性の方が多く摂取している。
チーズは男性の方が多く摂取しており、男女とも9割以上の人が食べていてる。
ほかに9割以上の人が食べている食品は、パン、野菜、肉、水。
ほかに9割以上の人が食べている食品は、パン、野菜、肉、水。
■チーズ売り場のほんの一部。フランスの食卓には欠かせない。
魚の摂取量
●27g
日本人の1/3しか食べていない。
子どもの摂取量は18gだが、これは金曜日の給食に魚が出るおかげ。
日本人の1/3しか食べていない。
子どもの摂取量は18gだが、これは金曜日の給食に魚が出るおかげ。
魚の摂取量に伴い、ビタミンDの摂取量も少ない。
魚に次いで卵、チーズがビタミンDの摂取源。ビタミンDを強化した牛乳も売られている。
魚に次いで卵、チーズがビタミンDの摂取源。ビタミンDを強化した牛乳も売られている。
■魚の消費に日本のSUSHIも貢献?
肉の摂取量
●120g
畜肉だけなら50gで日本人とさほど変わらないが、ハムやソーセージなどの肉加工食品を合わせると1.5倍の摂取量に。
畜肉だけなら50gで日本人とさほど変わらないが、ハムやソーセージなどの肉加工食品を合わせると1.5倍の摂取量に。
肉の種類は牛、豚、鶏のほか、仔牛、うさぎやジビエ(野鳥獣)も含まれる。
■スーパーマーケットで。生ハム、ソーセージ、パテなど、たくさんの肉加工品が並ぶ。
パンの摂取量
●115g
日本人の平均は33g。一方、米の消費量はフランス 25g、日本 319g。
日本人の平均は33g。一方、米の消費量はフランス 25g、日本 319g。
パンはフランス人のほとんどが、朝、昼、夕と食べる食品。日本の主食「米」に匹敵する。
パンは炭水化物のほか、食物繊維、マグネシウム、マンガン、銅などの微量栄養素の摂取源にもなっている。
野菜の摂取量
●139g
日本人に比べ、100g以上少ない。野菜をほとんど食べない人も少なくない。
日本人に比べ、100g以上少ない。野菜をほとんど食べない人も少なくない。
スーパーでは袋からだしてすぐ食べられるカットサラダが充実しているほか、冷凍や缶詰の野菜も多く利用されている。
■袋からだしてすぐ食べられるサラダ。レタス、ルッコラ、エンダイブなど種類も豊富。
食事を決めるのに大切だと考えることは?
この調査で、79%のフランス人が食事内容を決定する要因に”健康維持”を挙げてはいますが、食事のバランスは決してよいとはいえません。
肥満をはじめ、栄養摂取の過不足が要因の疾患が増加していることをうけ、社会問題健康省(Ministère des Affaires de Social et de la santé)による国民健康栄養プログラム(Programme National Nutrition Santé:PNNS)が2001年より促進されています。
*1 Individuelle Nationale des Consomations Alimentaires 2 -INCA 2 2006-2007-(第2回国民栄養調査)/Afssa(フランス食品衛生安全庁)
*2 牛乳、その他の乳、乳飲料、練乳、粉乳が含まれる
*3 発酵クリーム、ヨーグルト、フロマージュブラン、プティスイスが含まれる
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。