フランスの冷たいデザート その3

ミルクの国の食だより 連載一覧

コラム、「ミルクの国の食だより」の第83回をお送りします。前回に続き、ミルクデザートの話題です。フランス菓子は、ミルクや卵など手に入りやすい材料で、様々なバリエーションを見せてくれます。

フランスのスーパーに行くと、ヨーグルトと並んで「冷製ミルクデザートdessert lacté frais」のコーナーがあり、その大きさに驚かされます。

14カテゴリー、3,000種類以上の商品がありますが、牛乳、クリーム、卵、砂糖によるカスタードを発展させたデザートの種類が豊富です。
  • 牛乳、クリーム、卵、砂糖によるカスタードを発展させたデザートの種類が豊富。
    (左から時計回りで、ウフ・オ・レ、リ・オ・レ、キャラメルクリーム、フラン、クレームブリュレ)

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 6. クレームブリュレ Les crèmes brûlées
クリーム(乳脂肪率30%以上)、卵(伝統的な家庭レシピでは10%以上)と甘味料から成るデザート。オーブンでの焼成が必須で、ゲル化剤は使用できません。焦がしたブラウンシュガーが表面を覆いパリパリとした食感が特徴。バニラ風味が一般的ですが、梨が入ったタイプも。


 7. イルフロッタント Les îles flottantes

「浮いている島」という意味で日本ではあまり見かけませんが、フランスでは伝統的な冷たいデザート。カスタードクリームに浮かぶメレンゲの島という様相。10%以上のメレンゲと、7%以上の卵黄を含むカスタードクリームから構成されていて、オーブンまたは湯せんで加熱調理されています。

 8. ガトー・ド・リ Les gâteaux de riz
牛乳でゆっくり炊いた米と卵で作ったデザート。ガトーはケーキの意味ですが、固い焼き菓子ではなく、米の粒感がある焼きプリンのような柔らかいデザート。伝統的な家庭レシピでは10%以上の米、5%以上の卵が使われます。

 9. ガトー・ド・スムル Les gâteaux de semoule
牛乳にセモリナ粉と砂糖などを加えて火にかけ、練り上げて作られるセモリナプディングと呼ばれるデザート。伝統的な家庭レシピではセモリナ粉の割合は7%以上。ガトー・ド・リと同様にバニラ、キャラメル、レーズン、ラム酒などの味があります。

 10. ウフ・オ・レ Les œufs au lait
伝統的な家庭レシピでは、卵は少なくとも15%の割合で構成されています。オーブンで調理され、ゲル化剤は禁止されています。固めの焼きプリンといった感じのテクスチャー。

 11. フラン Les flans aux œufs

ウフ・オ・レと同様に、牛乳が主で(50%以上)、卵は5%以上、小麦粉を使用し、固さがあるデザート。杏、梨、プルーンなどの果物が入ったものもあり、クラフティ(clafoutis)という商品名で販売されているものもあります。

 12. キャラメルクリーム Les crèmes caramels
伝統的な家庭レシピでは15%以上の卵(一般的には5%)、3%以上のクリーム、5%のキャラメルで構成されています。卵とクリームだけの凝固性を利用した、いわゆるカスタードプリン。

 13. リ・オ・レ Les riz au lait

伝統的な家庭レシピでは米は8%を占め、じっくり時間をかけて米から、うま味とデンプン質を牛乳に移すように調理されます。

 14. クレーム・オ・ウフ Les crèmes aux œufs

伝統的な家庭レシピでは、15%以上のクリームと10%以上の卵が含まれています。オーブンで湯せん調理された焦げ目と黄金色が特徴。
  • ガトー・ド・スムル(手前)とガトー・ド・リ。パッケージをよく見て買わないと間違えそうなくらい見た目は区別がつきにくい
  • ラムレーズンとキャラメルソースが入った ガトー・ド・スムルは少しモチモチ感があって口当たりは滑らか
  • キャラメルソースが入ったガトー・ド・リは米のつぶつぶ感が心地よい
  • こちらのクレームブリュレはブラウンシュガーを食べる時にかけてタイプ。砂糖のパリパリ感がおいしい。オーブンで温めてから食べても

手に入りやすい材料の組み合わせで、様々なバリエーションが生まれる

フランス菓子というと難しいとか高級というイメージがあるかもしれませんが、昔から家庭で親しまれてきたお菓子は決してそんなことはなく、むしろ定番の材料をササッと混ぜ合わせて作るシンプルなものがほとんど。
どこでも手に入る牛乳、クリーム、卵、砂糖の組み合わせ方と、配合する量によって様々なバリエーションを見せてくれます。

今日では手軽にスーパーで買うことができるフランスのママンの味は、本来、家庭で世代から世代へと受け継がれるもので、子供時代の思い出がよみがえる味なのです。

私の場合はというと、やっぱり日本のツルッとしたのど越しのゼリーが恋しいので、ゼラチンを買ってきて、冷蔵庫にある牛乳で、子供のころ日本で食べたミルクゼリーをこの夏の思い出に子供たちと一緒に作ろうと思っています。


参考資料
  • フランス酪農経済センター:Les desserts lactés
 https://www.produits-laitiers.com/les-desserts-lactes/
  • ミルクデザートの製造工程
 http://www.brebislait.com/fileadmin/user_upload/Provence-Alpes-Cote_d_Azur/052_eve-blp/Fichiers/Fiches_techno_MRE/Les-desserts-lactes.pdf
 
管理栄養士 吉野綾美

1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。