第40回 2月2日はクレープの日 その1

連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第40回をお送りします。
フランスでは2月2日はクレープの日。クレープの種類や、クレープが生まれた歴史をひも解いていきます。

クレープは定番のおやつ

フランスが発祥のクレープは、日本でも誰もが知っていて人気のあるお菓子のひとつですね。
フランスでは、小さな子どもから大人まで、ちょっと小腹がすいた時によく作って食べます。
地域のイベントや大型スーパーの店先などでは必ずといっていいほど屋台で売られている定番のおやつです。
■ 英仏海峡と大西洋に突き出た半島で海に囲まれたブルターニュ地方。豊かな自然と独自の文化をもつことで知られている

甘味と塩味、2種類の生地

日本では、ホイップクリームや果物、チョコレートなどのトッピングをのせてくるくるとラッパ状に巻き手で持って食べるクレープを見かけますが、フランスでは、ただジャムをぬったり、砂糖をふりかけて四つ折にしただけのシンプルな食べ方が一般的。
温かいクレープをフォークとナイフを使って食べます。
生地には2種類あります。
小麦粉で作ったものは甘いものを包んでデザートとして食べるクレープ・シュクレ(crêpe sucrée /砂糖味のクレープ)。
そば粉の生地はハムやチーズ、サラダなどを包んで食事として食べるクレープ・サレ(crêpe salée /塩味のクレープ)で甘くないクレープです。
■ブルターニュは乳製品も豊富で他の地方では食されていない有塩バターを生産している。 
こちらは有塩バターをたっぷり使った塩キャラメルのデザートクレープ
■ ハムやチーズなどをのせて食事として食べるそば粉のクレープ(ガレット)

クレープの始まりは、そば粉のガレット

クレープの発祥はフランスの北西部ブルターニュ地方。
この地方はもともと土地が痩せていて雨と霧が多く、日照時間が少ないため小麦の生産が困難なことから、救荒作物としてそばの栽培を行うようになりました。
中世の頃には庶民は貧しく、そば粉を水で溶き、炉端の平たい石の上で薄く焼いたもの(ガレット)が何世紀もの長い間パンに代わるこの土地の人々の主食でした。
このガレットがクレープの原型で、その後、宮廷料理(参考:美食の町-リヨンの歴史2- )に取り入れられて、そば粉に替わって小麦粉が、粉と水と塩のみであった生地に牛乳やバター、卵、砂糖などが加えられるように変化していきました。
名前も薄く焼いた生地が布地のクレープ(ちりめん)に似ていることから、そう呼ばれるようになったそうです。
■ 魚介類を包んだガレットは海産物が豊富でおいしいブルターニュならでは

カフェの数より多いクレープ専門店

また、ブルターニュでも 19世紀に入り、鉄道の発展で物資の往来が自由になると小麦粉のクレープも作られるようになったそう。
現在では、家にある材料で手軽にできるので、フランス家庭の代表的なお菓子です。
そして、毎年2月2日はクレープの日なんです。
年中食べられているクレープですが、この日は特に家族や友人らと願いを込めてクレープを焼いて食べる習慣があります。
■カフェの数より多いといわれるクレープリー(クレープ専門店)はブルターニュの町のいたるところに
※このテーマは次回に続きます。お楽しみに。
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。