第3回 ビタミン学

ミルク解体新書

第3回 ビタミン学

ビタミンには、ビタミンAやビタミンB群、ビタミンDなどよく耳にするものから、パントテン酸や葉酸など馴染みの薄いものまでさまざま。しかしいずれも、微量でも重要な生理機能を果たすものばかりです。

そんな、私たちの健康維持に欠かせないビタミンについて、また、実はビタミン充実飲料である「牛乳」についても学んでいきます。

ビタミンは微量でも生命活動に必須の栄養素。

世界で最初に発見されたビタミンはビタミンB1です。1911年、鈴木梅太郎博士が見つけました。博士は米ヌカから取り出したこの物質に「オリザニン」(コメの学名)という名前をつけました。しかし、鈴木博士の発表は日本語だったため、世界的には認められず、翌年、ポーランドのフンク博士が同様の物質をビタミンと名づけると、この名前が世界的に認知されました。

VITAMINのVITAは、ラテン語で「生命」という意味です。

ビタミンは、炭水化物や脂質、たんぱく質のように、エネルギー源やカラダの構成成分にはなりませんが、これらの栄養素の働きをスムーズにする潤滑油のような役割を持っています。また、血管や粘膜、皮膚、骨などの新陳代謝を促し、健康な状態に保ちます。そして、不足するとそれぞれのビタミンに特有の欠乏症を引き起こします。

ビタミンB1の発見後、さまざまな種類のビタミンが見つかり、現在、ヒトに不可欠なビタミンは13種類あることがわかっています。
最近では、ビタミンの作用として、栄養素の働きを助け、カラダの機能を整えるだけでなく、生活習慣病を防ぐ効果も注目されています。 

脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン。

13種類のビタミンについて、それぞれの働きを表にまとめました(下表参照)。

水に溶けにくく、油脂やアルコールに溶ける性質のあるビタミンA、D、E、Kを脂溶性ビタミンと呼びます。脂溶性ビタミンには、細胞の老化を防いだり、血液凝固に関与するなど、おもにカラダのいろいろな働きを助ける作用があります。

ただ、脂溶性ビタミンは摂り過ぎると体内に蓄積されるため、吐き気や頭痛などの過剰症を起こします。これは、サプリメントなどで摂り過ぎた場合に起こります。通常の食生活ではその心配はありません。

水に溶けやすく、油脂に溶けにくいビタミンを、水溶性ビタミンといいます。ビタミンB群とビタミンCがこれに当たります。ビタミンB群は主として、代謝にかかわる酵素の働きを活性化する補酵素として機能します。
水溶性ビタミンは、過剰に摂取しても尿中に排出されるので過剰症の心配はありませんが、一定量は毎日の食事で摂る必要があります。

潜在的にビタミンが不足している可能性も…。

平成23年国民健康・栄養調査(厚生労働省)の結果を見る限り、日本人はビタミンの必要量をほぼ満たしています。
しかし、これはあくまで平均的なデータです。加工食品やスナック菓子をよく食べる最近の食生活では、ビタミンが不足している人も多いといわれています。

たとえば、グラフ1のように、ビタミンCは季節によってその含有量が変わってきます。また、加熱による損失が大きく、ストレスによる消耗も激しいといわれています。

ビタミンC以外では、ビタミンA、D、B1、B2も不足しやすいといわれています。これらのビタミンは、ふだんの食生活で、常に少し多めに摂るよう心がけたいものです。

最近では、手軽に手に入ることからも、サプリメントなどの栄養補助食品等からビタミンを摂っている人も見受けられます。しかし、サプリメントはあくまで補助的なもの。毎日の食事で十分なビタミンが摂取できるようにしたいものですね。
  • 「野菜のビタミンとミネラル—産地・栽培法・成分からみた野菜の今とこれから」
    著/辻村卓・佐藤達也・青木和彦 (女子栄養大学出版部)

牛乳や乳製品で効率よくビタミン補給。

牛乳や乳製品といえば、カルシウムや良質なたんぱく質の供給源としてのイメージが強いのですが、実はビタミンも豊富です。たとえば、牛乳の場合、ビタミンA、B2 、B12、パントテン酸をたくさん含んでいます。ちなみにビタミンB2は、牛乳から発見されたビタミンで「ラクトフラビン」とも呼ばれ、なんとコップ一杯の牛乳で、成人女性の1日の推奨量の約1/4が摂取できるのです。

牛乳や乳製品なら、調理しなくても手軽にビタミンを摂ることができます。ビタミンB2、B12など水溶性のビタミンは、調理によって栄養分がいくらか損失してしまいますが、乳製品は無駄がなく理想的です。

主食、主菜、副菜とバランスの取れた食事と、一杯の牛乳を飲むことで、効率よくビタミンを補給することが可能です。前述した潜在的なビタミン不足の状態を改善するためにも有効な方法です。

ただ、このように栄養豊富な牛乳ですが、ビタミンCとEの含有量は少なくなっています。そのため、これらのビタミンを多く含む食品と牛乳を組み合わせて食べると、バランスよくビタミンを摂取することができます。

牛乳仕立てのスープやシチューの、ベースやトッピングとしてビタミンCやEが豊富な食材をプラスするのもひとつです。手軽に栄養バランスがアップする組み合わせをいくつか紹介しましたので、ぜひ参考にしてみてください。

知っトク!コーナー

最初に発見されたのに、どうしてビタミンBなの?
日本の鈴木梅太郎博士によって、はじめて発見されたビタミンはビタミンB1です。

その後、次々と新しいビタミンが見つかり、脂溶性のものと水溶性のものがあることがわかりました。そして、脂溶性のものをビタミンA、水溶性のものをビタミンBと決めました。だから、ビタミンB1は最初に見つかったにもかかわらず「B」という名前がついてしまったのです。

8種類あるビタミンBは、まとめてビタミンB群と呼ばれます。これは、これらのビタミンが私たちのカラダの中で補酵素として、共通の性質を持っているからです。

ビタミンA、B、C、D、Eの次がFでなくKなのも不自然です。これは、ビタミンKが血液の凝固にかかわる物質として発見されたからです。ドイツ語で凝固のことを意味するKoagulationの頭文字から取られているからなのです。

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ビタミンB12、B2をはじめ、ビタミンのバランスがよい牛乳。

牛乳には、カルシウムやたんぱく質はもちろんのこと、いろいろなビタミンがバランスよく含まれています。牛乳の優れた点は、コップ一杯の量で摂取できるビタミンについて、さまざまな飲み物と比較してみるとよくわかります。

朝食一食あたりの摂取量をみてみると、ビタミンB12やビタミンB2なら十分摂れますし、パントテン酸は7割、ビタミンAは6割を満たすことができます。また、カルシウムの吸収を促すビタミンDを併せて摂れるのも魅力です。

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一方、ブラックコーヒーの場合、ほとんどビタミンを摂取できませんが、牛乳を足して楽しめば、ぐんとバランスのいい飲み物に。

また、牛乳には少ないビタミンCやEなどに関しては、他食材と組み合わせて補完するように摂るとよいでしょう。

たとえば、ビタミンCが豊富な100%オレンジジュースとミックスして飲めば、不足していたビタミンがプラスされて栄養価が向上。ほかにも味と栄養のバランスを考え、ビタミン補給飲料としても牛乳を上手に取り入れていきたいですね。
  • 出典:五訂増補食品成分表2010(女子栄養大学出版部)
j-milk magazine ほわいと2005冬「ミルク解体新書 第3回 ビタミン学」より
(HP掲載にあたり、参照する統計データなどを更新)