第4回 コレステロール学
コレステロールというと、健康の敵とみなされがち。
けれども、その正しい栄養価についてきちんと理解していますか?
牛乳・乳製品に含まれるコレステロールについて誤解している人も多いようです。
コレステロールも、人のカラダづくりに欠かせない大切な栄養のひとつです。上手に摂って、健康に暮らすための正しい知識を学んでいきましょう。
コレステロールも、人のカラダづくりに欠かせない大切な栄養のひとつです。上手に摂って、健康に暮らすための正しい知識を学んでいきましょう。
コレステロールは私たちのカラダに欠かせないもの
コレステロールは、「健康を害するものの代表」といったイメージをもつ人も少なくないようですが、コレステロール自体は、私たちのカラダに有害なものでも、健康の敵でもありません。
三大栄養素のひとつ、脂質の一種で、私たちのカラダに欠かせない生体構成成分です。
三大栄養素のひとつ、脂質の一種で、私たちのカラダに欠かせない生体構成成分です。
コレステロールの働きは、
(1)細胞を包んでいる細胞膜の材料になること
人間はおよそ60兆個の細胞でできており、細胞の内と外を隔てる細胞膜の働きで栄養分などさまざまな物質のやりとりが行われています。そのためコレステロールが不足するとその機能がうまく働かなくなってしまいます。
(2)脳細胞の神経線維を包む鞘(さや)の成分になること
(3)性ホルモンや副腎皮質ホルモンの材料になること
(4)胆汁酸の材料になること
胆汁酸は、脂肪の分解・吸収に必要なもので、肝臓でつくられ、胆のうにためられて、十二指腸に分泌されます。この胆汁酸の材料として、毎日たくさんのコレステロールが消費され、胆汁酸は腸管で再吸収されています。
(5)カルシウムの吸収をよくするビタミンDの材料になること
ビタミンDは、食品から摂取するほか、体内でコレステロールから合成されます。
このような働きがあることから、コレステロールは血液中に含まれてつねに全身をめぐり、脳や筋肉を中心に体内に広く存在しています。
私たちの体内には、100 - 150gくらいのコレステロールが存在し、成人1人当たり一日に1 - 2g程度必要とされています。
血液中に含まれるコレステロールの約2割は食事から摂取され、残りの8割はおもに肝臓で合成されます。
(1)細胞を包んでいる細胞膜の材料になること
人間はおよそ60兆個の細胞でできており、細胞の内と外を隔てる細胞膜の働きで栄養分などさまざまな物質のやりとりが行われています。そのためコレステロールが不足するとその機能がうまく働かなくなってしまいます。
(2)脳細胞の神経線維を包む鞘(さや)の成分になること
(3)性ホルモンや副腎皮質ホルモンの材料になること
(4)胆汁酸の材料になること
胆汁酸は、脂肪の分解・吸収に必要なもので、肝臓でつくられ、胆のうにためられて、十二指腸に分泌されます。この胆汁酸の材料として、毎日たくさんのコレステロールが消費され、胆汁酸は腸管で再吸収されています。
(5)カルシウムの吸収をよくするビタミンDの材料になること
ビタミンDは、食品から摂取するほか、体内でコレステロールから合成されます。
このような働きがあることから、コレステロールは血液中に含まれてつねに全身をめぐり、脳や筋肉を中心に体内に広く存在しています。
私たちの体内には、100 - 150gくらいのコレステロールが存在し、成人1人当たり一日に1 - 2g程度必要とされています。
血液中に含まれるコレステロールの約2割は食事から摂取され、残りの8割はおもに肝臓で合成されます。
コレステロールの善玉、悪玉とは?
脂質の一種であるコレステロールは、そのままのかたちでは血液には溶けません。血液中では、リポたんぱく質というかたちに姿を変えています。
リポたんぱく質とは、コレステロールや中性脂肪を、水となじみやすいたんぱく質でくるんだものです。脂質とたんぱく質の間には、水と油のどちらにもなじむリン脂質が存在しています。
リポたんぱく質は、それぞれの脂質の構成比によって、カイロミクロン、超低比重リポたんぱく質(VLDL)、低比重リポたんぱく質(LDL)、高比重リポたんぱく質(HDL)の4種類に分けられます。(図1参照)
悪玉コレステロール、善玉コレステロールという言葉がよく使われますが、これはコレステロール自体のことではなく、リポたんぱく質の役割の違いを意味しています。
いわゆる悪玉コレステロールとは、LDL中のコレステロールのことで、末梢の血管にコレステロールを運び、血液中にLDLが多くなると動脈硬化などを引き起こす要因になります。
善玉コレステロールは、HDL中のコレステロールのことで、体内で余ったコレステロールを回収して肝臓に運び、血管の掃除屋ともいわれています。動脈硬化を予防するよう働きます。(図2参照)
リポたんぱく質とは、コレステロールや中性脂肪を、水となじみやすいたんぱく質でくるんだものです。脂質とたんぱく質の間には、水と油のどちらにもなじむリン脂質が存在しています。
リポたんぱく質は、それぞれの脂質の構成比によって、カイロミクロン、超低比重リポたんぱく質(VLDL)、低比重リポたんぱく質(LDL)、高比重リポたんぱく質(HDL)の4種類に分けられます。(図1参照)
悪玉コレステロール、善玉コレステロールという言葉がよく使われますが、これはコレステロール自体のことではなく、リポたんぱく質の役割の違いを意味しています。
いわゆる悪玉コレステロールとは、LDL中のコレステロールのことで、末梢の血管にコレステロールを運び、血液中にLDLが多くなると動脈硬化などを引き起こす要因になります。
善玉コレステロールは、HDL中のコレステロールのことで、体内で余ったコレステロールを回収して肝臓に運び、血管の掃除屋ともいわれています。動脈硬化を予防するよう働きます。(図2参照)
高コレステロール血症が動脈硬化を引き起こす一因に
コレステロールには、食事から摂取するものと肝臓で合成するものがあります。
本来、私たちのカラダでは、食事から摂るコレステロールの量に応じて、肝臓でつくられる量がうまく調整されているため、血液中のコレステロールの量はほぼ一定に保たれています。
ですが、遺伝的な背景や生活習慣などにより、この調整がうまくいかず、血液中のコレステロールの量が多くなってしまうことがあり、この状態を高コレステロール血症といい、動脈硬化と密接な関係をもっています。(図3参照)
本来、私たちのカラダでは、食事から摂るコレステロールの量に応じて、肝臓でつくられる量がうまく調整されているため、血液中のコレステロールの量はほぼ一定に保たれています。
ですが、遺伝的な背景や生活習慣などにより、この調整がうまくいかず、血液中のコレステロールの量が多くなってしまうことがあり、この状態を高コレステロール血症といい、動脈硬化と密接な関係をもっています。(図3参照)
ちょこっとコラム コレステロールの大きさが決め手
最近、LDLの中でも小型で比重の低いものが動脈硬化を起こしやすいことがわかり、これは「超悪玉コレステロール」と呼ばれています。小型のLDLほどコレステロールが本来持っている抗酸化物の割合が少ないので酸化されやすく、小さいので血管の壁から内膜に入りやすいためです。
マクロファージはLDLコレステロールなら何でも処理するわけではなく、活性酸素により酸化されたLDLコレステロースだけを「攻撃対象」と判断するようです。
最近、LDLの中でも小型で比重の低いものが動脈硬化を起こしやすいことがわかり、これは「超悪玉コレステロール」と呼ばれています。小型のLDLほどコレステロールが本来持っている抗酸化物の割合が少ないので酸化されやすく、小さいので血管の壁から内膜に入りやすいためです。
マクロファージはLDLコレステロールなら何でも処理するわけではなく、活性酸素により酸化されたLDLコレステロースだけを「攻撃対象」と判断するようです。
コレステロール過多にならないよう食生活、生活習慣から見直しを
LDLコレステロール | 140mg/dl以上 |
HDLコレステロール | 40mg/dl未満 |
中性脂肪(トリグリセライド) | 150mg/dl以上 |
LDLは増えすぎないように、HDLは減りすぎないようにする必要があります。
食事が血液中の脂質に与える影響は少なくありませんが、最近では食事からのコレステロールの摂取量だけではなく、食べ過ぎや不規則な食生活、運動不足も問題と考えられています。
コレステロールを多く含む食事をしなくても、食べ過ぎが続くとコレステロールの合成が進んでしまいます。それを避けるためにも、総エネルギーに占める脂質の割合は20 - 25%に抑えたいものです。
野菜、果物、豆類、海藻類やこんにゃくに豊富な水溶性の食物繊維は、コレステロールが腸内で吸収されるのを妨げる働きがあります。
オリーブ油、なたね油、紅花油などの植物油、アジやサンマなど背の青い魚に多く含まれる不飽和脂肪酸もコレステロールを下げてくれます。
ただ、中には非常に酸化しやすく、酸化すると過酸化脂質に変化して動脈硬化を引き起こす原因になるものもあるので、新鮮なものを使うようにしましょう。
食事が血液中の脂質に与える影響は少なくありませんが、最近では食事からのコレステロールの摂取量だけではなく、食べ過ぎや不規則な食生活、運動不足も問題と考えられています。
コレステロールを多く含む食事をしなくても、食べ過ぎが続くとコレステロールの合成が進んでしまいます。それを避けるためにも、総エネルギーに占める脂質の割合は20 - 25%に抑えたいものです。
野菜、果物、豆類、海藻類やこんにゃくに豊富な水溶性の食物繊維は、コレステロールが腸内で吸収されるのを妨げる働きがあります。
オリーブ油、なたね油、紅花油などの植物油、アジやサンマなど背の青い魚に多く含まれる不飽和脂肪酸もコレステロールを下げてくれます。
ただ、中には非常に酸化しやすく、酸化すると過酸化脂質に変化して動脈硬化を引き起こす原因になるものもあるので、新鮮なものを使うようにしましょう。
血管の健康のために、毎日取りたい牛乳・乳製品
牛乳の脂質のほとんどは、直径が平均1μmの小さな脂肪球として含まれていて、コレステロールは、リン脂質や脂溶性ビタミンといっしょに、脂肪球の表面に存在しています。
最近、バターなどに代わるコレステロールを下げるといわれる食品も出てきていますが、バターや生クリームには豊かな味わいと風味があり、料理を引き立てるものとして欠かせません。
チーズやバターはコレステロールをたくさん含んでいると思っている人が多いようですが、一回で食べる量から考えると心配ありません。
私たちが一日に食事から摂るコレステロールの量は200 - 500mgといわれており、たとえばプロセスチーズの場合1切れ(20g)には16mgしか含まれていません (みんなのミルクデータ参照)。
牛乳も一日に600ml程度の量までなら、特にコレステロール値を上げる心配はないという試験結果も出ています。
むしろ牛乳や乳製品に豊富に含まれる良質のたんぱく質などが血管の健康を維持するために役立ち、動脈硬化を予防してくれます。
たとえば、野菜たっぷりのシチューやスープに、バターや生クリームを料理の仕上げに加えるなど、乳製品をかしこく利用しましょう。
ただし、やはりコレステロールが高めで気になるという人は、ショートケーキなら、果物が多めのものを選ぶのも一手。
また、コレステロールの吸収を妨げる食物繊維を多く含み、かつエネルギーの低い、きのこ類や海藻類を積極的に取り入れるなど、食生活全体からコレステロール対策を心掛けましょう。
最近、バターなどに代わるコレステロールを下げるといわれる食品も出てきていますが、バターや生クリームには豊かな味わいと風味があり、料理を引き立てるものとして欠かせません。
チーズやバターはコレステロールをたくさん含んでいると思っている人が多いようですが、一回で食べる量から考えると心配ありません。
私たちが一日に食事から摂るコレステロールの量は200 - 500mgといわれており、たとえばプロセスチーズの場合1切れ(20g)には16mgしか含まれていません (みんなのミルクデータ参照)。
牛乳も一日に600ml程度の量までなら、特にコレステロール値を上げる心配はないという試験結果も出ています。
むしろ牛乳や乳製品に豊富に含まれる良質のたんぱく質などが血管の健康を維持するために役立ち、動脈硬化を予防してくれます。
たとえば、野菜たっぷりのシチューやスープに、バターや生クリームを料理の仕上げに加えるなど、乳製品をかしこく利用しましょう。
ただし、やはりコレステロールが高めで気になるという人は、ショートケーキなら、果物が多めのものを選ぶのも一手。
また、コレステロールの吸収を妨げる食物繊維を多く含み、かつエネルギーの低い、きのこ類や海藻類を積極的に取り入れるなど、食生活全体からコレステロール対策を心掛けましょう。
知っトク!コーナー
脂質のあれこれ
コレステロールは脂質の一種ですが、脂肪とはどう違うのでしょうか。
脂肪と脂質は混同されやすいのですが、実は脂肪も脂質の一種なのです。
脂質は、化学構造の違いから単純脂質(中性脂肪など)、複合脂質(リン脂質など)、誘導脂質(コレステロールなど)があり、単純脂質のひとつである中性脂肪を、通常、脂肪と呼んでいます。
ところで、最近よく見かける「コレステロールを下げる」という表示のあるマヨネーズタイプの調味料やマーガリンとは、どのようなものなのでしょうか。
コレステロールの吸収を抑制する働きのある「植物性ステロール」を配合することにより、コレステロールを下げるのが特徴です。
植物性ステロールは、穀類や野菜、果物、ナッツなどの食品の中に、ごく少量含まれていて、体内にはほとんど吸収されません。いずれにしても、気になる存在の脂質。表示を確かめて、自分にあったものを選ぶようにしましょう。
コレステロールは脂質の一種ですが、脂肪とはどう違うのでしょうか。
脂肪と脂質は混同されやすいのですが、実は脂肪も脂質の一種なのです。
脂質は、化学構造の違いから単純脂質(中性脂肪など)、複合脂質(リン脂質など)、誘導脂質(コレステロールなど)があり、単純脂質のひとつである中性脂肪を、通常、脂肪と呼んでいます。
ところで、最近よく見かける「コレステロールを下げる」という表示のあるマヨネーズタイプの調味料やマーガリンとは、どのようなものなのでしょうか。
コレステロールの吸収を抑制する働きのある「植物性ステロール」を配合することにより、コレステロールを下げるのが特徴です。
植物性ステロールは、穀類や野菜、果物、ナッツなどの食品の中に、ごく少量含まれていて、体内にはほとんど吸収されません。いずれにしても、気になる存在の脂質。表示を確かめて、自分にあったものを選ぶようにしましょう。
みんなのMILK DATA
コレステロールを摂取する食品群は、卵からがナンバー1。
日頃食卓で親しまれている牛乳・乳製品ですが、コレステロールやエネルギーが高いイメージがある方も多いようです。
では、実際、コレステロールをどの食品群から摂取しているのか調べてみると、卵からが一番多くて49.4%。次いで、魚介類、肉類となりました。
牛乳・乳製品はコレステロールが高い食品ではありません。
一食あたりに食べる量でコレステロール値を見ていくと一目瞭然。牛乳・乳製品はとても低いことがわかります。
牛乳一本で25mg。バターは動物性脂肪なので太ると思いこんでいる人もいるようですが、トースト2枚にバターを塗っても平均10g程度。コレステロールはわずか21mg、エネルギーも75kcalにすぎません。
動物性食品はコレステロールが高いという先入観から敬遠するのは、むしろ健康づくりにはもったいないこと。
牛乳・乳製品はたんぱく質やカルシウムも豊富。上手に食生活に取り入れてくださいね。
日頃食卓で親しまれている牛乳・乳製品ですが、コレステロールやエネルギーが高いイメージがある方も多いようです。
では、実際、コレステロールをどの食品群から摂取しているのか調べてみると、卵からが一番多くて49.4%。次いで、魚介類、肉類となりました。
牛乳・乳製品はコレステロールが高い食品ではありません。
一食あたりに食べる量でコレステロール値を見ていくと一目瞭然。牛乳・乳製品はとても低いことがわかります。
牛乳一本で25mg。バターは動物性脂肪なので太ると思いこんでいる人もいるようですが、トースト2枚にバターを塗っても平均10g程度。コレステロールはわずか21mg、エネルギーも75kcalにすぎません。
動物性食品はコレステロールが高いという先入観から敬遠するのは、むしろ健康づくりにはもったいないこと。
牛乳・乳製品はたんぱく質やカルシウムも豊富。上手に食生活に取り入れてくださいね。
j-milk magazine ほわいと2006春「ミルク解体新書 第4回 コレステロール学」より
(HP掲載にあたり、参照する統計データなどを更新)