酪農家の仕事
酪農家の毎日の仕事には、以下のようなものがあります[図1-5]。
乳牛という生きものを飼育する酪農は、1年を通じて1日も休むことができません。また、本来であれば子牛が飲む乳を人間の食料として利用するため、酪農家が毎日乳を搾らなければ乳牛は体調を崩してしまいます。現在は、「酪農ヘルパー制度」があり、酪農家が休みを取るときには、有料で酪農ヘルパーを派遣してもらい搾乳や餌やりなどの作業を行ってもらうこともできます。これにより、酪農家も休暇をとることができるようになりました。
乳牛という生きものを飼育する酪農は、1年を通じて1日も休むことができません。また、本来であれば子牛が飲む乳を人間の食料として利用するため、酪農家が毎日乳を搾らなければ乳牛は体調を崩してしまいます。現在は、「酪農ヘルパー制度」があり、酪農家が休みを取るときには、有料で酪農ヘルパーを派遣してもらい搾乳や餌やりなどの作業を行ってもらうこともできます。これにより、酪農家も休暇をとることができるようになりました。
図1-5 | ある酪農家の1日のスケジュール
餌やり
1日に3回程度、決まった時間に餌と水を与えます[図1-6]。乳牛は草食動物ですが、草だけでは家畜として乳を出す能力を十分に発揮できないため、酪農家は粗飼料と濃厚飼料をバランス良く与えています[図1-7]。
粗飼料:青草や乾草、サイレージなど繊維質を多く含む飼料です。乳牛にとって主食であり、ビタミンやミネラルの供給源にもなります。サイレージとは草やトウモロコシの貯蔵性を高めるために乳酸発酵させたもので、人間の食べ物でいえば漬物のようなものです。人間は繊維質を消化できませんが、乳牛は第1胃に生息する微生物や原虫が繊維質も消化し、その代謝産物である脂肪酸が乳脂肪の材料となります。
濃厚飼料:トウモロコシや大麦などの穀類、米ぬかやふすまなどの糟糠 類、あるいはビートパルプ(砂糖大根の搾りかす)やビールかす、しょうゆかす、豆腐のおからや大豆ミールを使用した飼料で、乳牛にとってはおかずのようなものです。たんぱく質や炭水化物、脂肪など豊富な栄養を含み、乳牛の泌乳能力や生乳の無脂乳固形分(たんぱく質や乳糖、カルシウムなどミネラル)を高めます。濃厚飼料を数種混合した「配合飼料」などが一般的に利用されていますが、酪農家は乳牛に必要な栄養分を計算して飼料を給与し、優れた乳質と多くの生乳生産ができるように工夫しています。
乳牛の餌の生産と保管
牧草を育て、良い乳を出す餌を購入・保管し、乳牛の餌の準備をします。また、冬季の餌として牧草を刈り取り干し草にしたり、刻んだトウモロコシなどをサイロに入れて発酵させた餌(サイレージ)をつくったりもします。
酪農家による飼料生産とその活用
飼料には酪農家が自ら栽培して生産する「自給飼料」と外部から調達する「購入飼料」があります。自給飼料の安全性確保は酪農家が自らの責任で行い、購入飼料については法律(飼料安全法)が整備されています。非遺伝子組み換え(NON-GMO)やオーガニック(有機)に関しても消費者の関心が高まる中、多くの酪農家が日々努力と工夫を続けています。 近年は、酪農家が共同で飼料を生産・調整し供給する給食センター方式の「TMRセンター」の構築も推進されています。混合飼料ともいわれるTMR(Total Mixed Ration)は、濃厚飼料、糟類、粗飼料、ミネラルなど乳牛に必要な飼料を混合したものです。TMRセンター の普及により、作業の効率化や良質な飼料の安定供給が期待されています。 さらに、温室効果ガスGHG(GreenhouseGas)排出の削減と持続可能な畜産経営の確立を図るため、国産飼料の生産・利用拡大に向けたさまざまな取り組みも進められています。例えば、耕種農家が生産した飼料稲を発酵させたWCS(Whole Crop Silage:稲発酵粗飼 料)や飼料米を酪農家が利用し、家畜排せつ物に由来する堆肥を耕種農家に還元する「耕畜連携」は、水田の有効活用や食料自給率向上に貢献すると関心を集めています。また、食品残さ等を原料として飼料を製造する「エコフィード」は食品リサイクルにも役立っています。
粗飼料:青草や乾草、サイレージなど繊維質を多く含む飼料です。乳牛にとって主食であり、ビタミンやミネラルの供給源にもなります。サイレージとは草やトウモロコシの貯蔵性を高めるために乳酸発酵させたもので、人間の食べ物でいえば漬物のようなものです。人間は繊維質を消化できませんが、乳牛は第1胃に生息する微生物や原虫が繊維質も消化し、その代謝産物である脂肪酸が乳脂肪の材料となります。
濃厚飼料:トウモロコシや大麦などの穀類、米ぬかやふすまなどの糟糠 類、あるいはビートパルプ(砂糖大根の搾りかす)やビールかす、しょうゆかす、豆腐のおからや大豆ミールを使用した飼料で、乳牛にとってはおかずのようなものです。たんぱく質や炭水化物、脂肪など豊富な栄養を含み、乳牛の泌乳能力や生乳の無脂乳固形分(たんぱく質や乳糖、カルシウムなどミネラル)を高めます。濃厚飼料を数種混合した「配合飼料」などが一般的に利用されていますが、酪農家は乳牛に必要な栄養分を計算して飼料を給与し、優れた乳質と多くの生乳生産ができるように工夫しています。
乳牛の餌の生産と保管
牧草を育て、良い乳を出す餌を購入・保管し、乳牛の餌の準備をします。また、冬季の餌として牧草を刈り取り干し草にしたり、刻んだトウモロコシなどをサイロに入れて発酵させた餌(サイレージ)をつくったりもします。
酪農家による飼料生産とその活用
飼料には酪農家が自ら栽培して生産する「自給飼料」と外部から調達する「購入飼料」があります。自給飼料の安全性確保は酪農家が自らの責任で行い、購入飼料については法律(飼料安全法)が整備されています。非遺伝子組み換え(NON-GMO)やオーガニック(有機)に関しても消費者の関心が高まる中、多くの酪農家が日々努力と工夫を続けています。 近年は、酪農家が共同で飼料を生産・調整し供給する給食センター方式の「TMRセンター」の構築も推進されています。混合飼料ともいわれるTMR(Total Mixed Ration)は、濃厚飼料、糟類、粗飼料、ミネラルなど乳牛に必要な飼料を混合したものです。TMRセンター の普及により、作業の効率化や良質な飼料の安定供給が期待されています。 さらに、温室効果ガスGHG(GreenhouseGas)排出の削減と持続可能な畜産経営の確立を図るため、国産飼料の生産・利用拡大に向けたさまざまな取り組みも進められています。例えば、耕種農家が生産した飼料稲を発酵させたWCS(Whole Crop Silage:稲発酵粗飼 料)や飼料米を酪農家が利用し、家畜排せつ物に由来する堆肥を耕種農家に還元する「耕畜連携」は、水田の有効活用や食料自給率向上に貢献すると関心を集めています。また、食品残さ等を原料として飼料を製造する「エコフィード」は食品リサイクルにも役立っています。
図1-6 | 餌やり
図1-7 | 乳牛の餌(粗飼料・乾草)
乳牛の餌(濃厚飼料)
牛舎の掃除
牛の寝床の清掃や糞・尿の処理をし、牛舎を毎日清潔に保ちます[図1-8]。また、牛の体を拭くなど、牛自身を清潔にすることも大切な仕事です。牛舎の種類としては、つなぎ飼い方式、フリーバーン方式、フリーストール方式が主流となっています。
つなぎ飼い方式:牛舎の牛房に牛を1頭ずつ繋留して飼うもので、搾乳作業は人が移動しながら行うため、50頭程度までの牛舎に多く見られます。
フリーバーン方式:牛舎の中で乳牛を放し飼いするもので、大規模牛舎に多く採用されています。搾乳は別の場所にある搾乳室(ミルキングパーラー)に牛自身を移動させて行い、飼料は所定の給餌場で自由に摂食させるなど省力化を図ることが可能です。
フリーストール方式:両者の中間的なものです。乳牛は原則として放し飼いで、搾乳室へも牛自身が移動するシステムですが、牛舎の中に1頭ずつ区分された休息場が設けられており、飼料の摂食などは休息場で行います。
つなぎ飼い方式:牛舎の牛房に牛を1頭ずつ繋留して飼うもので、搾乳作業は人が移動しながら行うため、50頭程度までの牛舎に多く見られます。
フリーバーン方式:牛舎の中で乳牛を放し飼いするもので、大規模牛舎に多く採用されています。搾乳は別の場所にある搾乳室(ミルキングパーラー)に牛自身を移動させて行い、飼料は所定の給餌場で自由に摂食させるなど省力化を図ることが可能です。
フリーストール方式:両者の中間的なものです。乳牛は原則として放し飼いで、搾乳室へも牛自身が移動するシステムですが、牛舎の中に1頭ずつ区分された休息場が設けられており、飼料の摂食などは休息場で行います。
搾乳
牛の乳を搾ることを「搾乳」といい、一般的に朝と夕方の2回行います[図1-9]。搾乳の前には、牛の乳頭を消毒して清潔にします。現在の搾乳は主にミルカーと呼ばれる搾乳機で衛生的に行い、4℃以下に設定した冷蔵タンク(バルククーラー)に貯乳します。搾った生乳は、サンプリング検査と計量の後、タンクローリーで乳業工場に運ばれます。
乳牛の健康管理
乳牛に良い乳を出してもらうには、一頭一頭の健康管理がとても大切です。牛は暑さに弱い動物なので、暑い季節は牛舎内にある扇風機を回すなどして過ごしやすい環境にして飼育環境を管理しています。乳牛が風邪を引いたり、病気になったりした場合は獣医師を呼び、診療をします。人工授精や出産、子牛に乳を与える作業(哺乳)、成長期に合った給餌も重要な仕事です[図1-10]。
母牛は、子牛を産んで40日以降に再び妊娠し、乳を出しながら、おなかの中でつぎの子牛を育てています。酪農家は、妊婦の状態である乳牛に対し、餌の与え方や健康管理に昼夜を問わず細心の注意を払っています。
近年はIoT(Internet of Things/モノのインターネット化)技術の発展により、乳牛にセンサーをつけてその動きをモニタリングし蓄積したデータをAI(人工知能)で分析して繁殖や病気の予防に生かすなど、「スマート酪農」も進みつつあります。
母牛は、子牛を産んで40日以降に再び妊娠し、乳を出しながら、おなかの中でつぎの子牛を育てています。酪農家は、妊婦の状態である乳牛に対し、餌の与え方や健康管理に昼夜を問わず細心の注意を払っています。
近年はIoT(Internet of Things/モノのインターネット化)技術の発展により、乳牛にセンサーをつけてその動きをモニタリングし蓄積したデータをAI(人工知能)で分析して繁殖や病気の予防に生かすなど、「スマート酪農」も進みつつあります。
図1-9 | 搾乳
図1-10 | 子牛に哺乳