現在の日本は飽食の時代といわれて久しいですが、その一方で子どもや若い世代には飽食の中の偏食や欠食が多く見られる傾向があります。
野生動物の場合、食べ物が毎日必ず得られる保証はありません。人間も原始時代は同じ境遇だったため、現在の人間の体にも、食べられないときのためにエネルギーのもとになる栄養素を脂肪（脂質）の形で蓄えるシステムがあります。また、脂肪には臓器の保護をする役割もあります。
エネルギーの必要量より摂取量が多いときは、脂質だけでなく、炭水化物やたんぱく質も脂肪として体に蓄えられます。脂肪を蓄える組織は皮膚の下部組織、肝臓、血液の3カ所で、蓄える量が多すぎると肥満体質になったり、肝臓の機能低下や脂質異常症などの生活習慣病になりやすくなります。

肥満の判定には、BMI（Body Mass Index）が使われます。BMI値は、体重（kg）÷（身長（m）×身長（m））で求められます。成人男女ではBMI＝22を標準とし、18.5未満を「低体重」（やせ）、25以上を「肥満」と判定しています（一般社団法人日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」より）。
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」によると、20歳以上で「肥満」と判定される人の割合は、男性33.0％、女性22.3％です。この10年間で見ると、男性、女性共にやや増加傾向にあります。一方、「やせ」と判定される人の割合は男性3.9％、女性11.5％であり、この10年間で見ると両性とも大きな変化は見られません。ただし、他の年代に比べ、20 歳代の女性は「やせ」の割合が高く、20.7％となっています。
現代の日本人は、このように成人男性に多い過栄養と若い女性に多い低栄養という、2つの相反する栄養不良問題を抱えています。この「栄養不良の二重負荷」が健康寿命の延伸と次世代の健康に影を落としていると指摘されています。
「食生活指針」では「適度な運動とバランスの良い食事で、適正体重の維持を」と呼びかけています。また、体重だけではなく、健康状態にも留意し、無理な減量はやめるよう促しています。