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ビフィズス菌とは

ビフィズス菌は、1899年、フランスの細菌学者ティッシェーにより母乳児の便から発見された腸内細菌です。
私たちの腸内には数百種類、100兆個(もっと少ないという説もあります)を超える細菌がすみついているとされ、それらを総称して「腸内細菌叢」と呼びます。最近のメタゲノム解析では、腸内細菌の数も1,000種類以上おり、遺伝子量ではヒト全ゲノムの150倍も存在するという報告もあります。
この中には私たちの体に良い働きをする菌(善玉菌)、悪い働きをする菌(悪玉菌)、どちらでもない菌(中間菌)があり、健康と深い関わりを持っています。
良い働きをする菌の代表が乳酸菌とビフィズス菌です[表3-9]
表3-9 | 乳酸菌・ビフィズス菌の特徴と主な菌種
    属名 発酵形式 発育 主な菌種:その利用と分布
乳酸菌 球菌 ラクトコッカス
(Lactococcus)
ホモ ラクチス、クレモリス:バター、チーズ、ヨーグルト
ストレプトコッカス
(Streptococcus)
ホモ サーモフィルス:ヨーグルト、チーズ
ペディオコッカス
(Pediococcus)
ホモ ハロフィルス:みそ、しょうゆの熟成、漬物(耐塩性)
ロイコノストック
(Leuconostoc)
ヘテロ メゼンテロイデス:発酵食品
桿菌 ラクトバチルス
(Lactobacillus )
ホモ ブルガリカス:ヨーグルト、乳酸菌飲料
へルベチカス:チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料
アシドフィルス:ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳酸菌製剤
ラクチカゼイバチルス
(Lacticaseibacillus )
ホモ カゼイ:チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳酸菌製剤
リモシラクトバチルス
(Limosilactobacillus )
ヘテロ ファーメンタム:発酵産物
レビラクトバチルス
(Levilactobacillus )
ヘテロ ブレビス:発酵産物
ビフィズス菌 ビフィドバクテリウム
(Bifidobacterium)
ヘテロ ブレーべ、ビフィダム、インファンティス、ロンガム、アドレセンテス:
乳児または成人の腸管、ヨーグルト、乳酸菌製剤

注 酸素存在下での発育性

ビフィズス菌の特微

図3-30 | ビフィズス菌
ビフィズス菌
写真提供:雪印メグミルク株式会社
 ビフィズス菌も当初は乳酸球菌や乳酸桿菌と生物学的に近い仲間として乳酸菌に分類されていましたが、下記のように多くの点で性質が異なっているため、独立したBifidobacterium(ビフィズス菌)となりました。
①棒状の桿菌:ビフィズス菌は棒状の桿菌で、増殖するときに枝のように分岐してY型となります(ビフィズスとはラテン語で2つに分かれるという意味です)[図3-30]
②偏性嫌気性菌:空気(酸素)を嫌います。他の乳酸菌は酸素があるところでもある程度増殖しますが、ビフィズス菌は酸素があると生育しない偏性嫌気性菌です。
③へテロ型発酵:ぶどう糖(グルコース)から酢酸と乳酸をつくります。多くの乳酸菌はぶどう糖を分解利用して乳酸のみを生成しますが(ホモ型発酵)、ビフィズス菌は乳酸よりも酢酸を多く生成します(酢酸:乳酸≒3:2)。

体内のビフィズス菌

母体にいる胎児の腸内は無菌ですが、生後7日ごろからビフィズス菌が優勢になり始め、およそ1カ月後には、安定したビフィズス菌主体の細菌叢(ビフィズスフローラ)となります。しかし、離乳期以降は普通の食事を摂り始めるため、腸内にはいろいろな菌が増えてきて、ビフィズス菌の菌数も割合も低くなってきます[図3-31]
ビフィズス菌は乳糖やオリゴ糖(ガラクトオリゴ糖、ラクチュロースなど)などにより増殖します。小腸下部から大腸にかけて多くすみ、悪玉菌の生育や腸内腐敗を防ぎ、腸内細菌叢のバランスを整える重要な菌と考えられています。

図3-31 | 年齢による腸内細菌叢の変化
年齢による腸内細菌叢の変化

注 ビフィズス菌はアクチノバクテリアに含まれる
出典:Odamaki T et al. : "Age-related changes in gut microbiota composition from newborn to centenarian: a cross-sectional study." BMC Microbiology, 2016