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ビタミンとは

人間の体には約60兆個の細胞があり、心臓や骨、脳、皮膚、血液などいろいろな組織をつくって、体温の維持や活動エネルギーの産生、細胞の合成・分解といったさまざまな生命活動を行っています。この生命活動の主な材料となるのが三大栄養素とミネラルで、これらの栄養素を化学反応させるために欠かせない触媒のような役割を持つのがビタミンです。量的には少ないものですが、単独での働きのほか、他の栄養素と関連して生命維持に深く関わっています。
ビタミンの多くは体内で合成できず、食事から摂取しなければなりません。ビタミンが不足すると体内の化学反応が順調に行われなくなり、体の調子が悪くなったり、病気になったり、成長期には十分な成長ができなくなることもあります。
ビタミンは20種類以上が知られていますが、「日本人の食事摂取基準」では13種類に摂取基準が設けられました。13種類のうち、水に溶けやすい「水溶性ビタミン」が9種類、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」が4種類あります。これらのうち、牛乳に多く含まれているものについて、その働きの概要を紹介します。

ビタミンB2

ビタミンB2は別名「成長ビタミン」といわれ、小学生の1日あたりの推奨量に対し、牛乳200mLで約20%を補うことができます。
舌や唇、皮膚、眼の健康にも関係し、運動能力を高めることが知られています。不足すると脂漏性皮膚炎や口角炎、眼性疲労などの症状につながるため、最近では「美容ビタミン」とも呼ばれ、成長期の子どもや女性にとって大切なビタミンです。

ビタミンB12

ビタミンB12はコバルトを含むビタミンの総称で、造血に重要な役割を果たしています。牛乳200mLには、成長期の1日あたりの推奨量に対し、25~50%近く補えるほど多く含まれています。
ビタミンB12は緑黄色野菜などに多く含まれる葉酸と協力して、赤血球のヘモグロビンの合成を促進したり、DNA(遺伝子)の主成分である核酸の合成に関与していることが知られています。
ビタミンB12の不足は、赤血球の生産異常などを起こすことにつながります。赤血球中のヘモグロビンは酸素を体内全体に運ぶ役割をしているため、体内のエネルギー生産が十分にできなくなることの原因になります。
また、神経とも関係が深いといわれ、末梢神経の修復や中枢神経の脳にも関係することが知られており、記憶力や精神のバランスにも関与すると考えられています。
ビタミンB12はB2と同様、成長期には特に摂取に気をつけたいビタミンですが、通常の食生活では欠乏は起こりにくいといわれています。

パントテン酸

パントテン酸の名は「広くどこにでもある」という意味のギリシャ語に由来し、通常の食事では不足することは少ないといわれています。
牛乳にも多く含まれるビタミンで、その働きは三大栄養素のエネルギー産生に関与しているほか、副甲状腺ホルモンの合成に関与して、ストレスヘの抵抗力をつけることが知られています。
日本人の食生活では、エネルギーの半分以上が穀類などを中心とした炭水化物です。炭水化物の分解に伴うエネルギー生産には主にビタミンB1が補酵素として働きますが、この働きにパントテン酸が深く関わっています。
この他、善玉のHDLコレステロールを増やす働きや免疫抗体の生産、自立神経伝達物質(アセチルコリン)の生産に関わる働きもあります。
現代は大人だけでなく、成長期の子どもたちもストレスの多い生活環境にあり、パントテン酸が多く必要になります。また、炭水化物は体全体の主要なエネルギー源であるとともに、ぶどう糖は脳には唯一のエネルギー源となるため、パントテン酸とビタミンB1は成長期に欠かせないビタミンです。

ビタミンB1ほか

ビタミンB1は牛乳、穀類や野菜、魚、肉類など多くの食品に含まれており、牛乳200mLには推奨量の約7%が含まれています。穀類の含有割合は、玄米を100とすると精白米では20と少なくなっています。
体内では炭水化物がぶどう糖として吸収された後、アポ酵素が働いてエネルギーを産生しますが、このときビタミンB1やパントテン酸が補酵素として働きます。したがって、B1が不足すると疲れやすく、食欲が減退したり、成長や神経の働きなどに関係するといわれています。嗜好飲料を摂りすぎる最近の傾向から、成長期の子どもや若い人にB1不足が見られるといわれます。
人体の細胞約60兆個のうち多くはエネルギーの自己発電機能を持っており、炭水化物のぶどう糖、脂質の脂肪酸、たんぱく質のアミノ酸の3つを発電用の原料にしています。この原料からエネルギーを生み出すのにいろいろな酵素が関わります。酵素の働きを促進する補酵素の役割を持つのは、水溶性ビタミンB群(B1、B2、ナイアシン、B6、パントテン酸、ビオチン、葉酸、B12)の8種類です。これらB群は、体内でお互いが関連し合いながら働いています。
水溶性ビタミンは、摂りすぎても尿中に排泄されます。
ビタミンB6はアミノ酸の合成・分解の補酵素、成長や皮膚、歯、髪に関与、神経細胞の興奮抑制に関与などの働きがあります。葉酸は赤血球や細胞の分裂・発育、脳や神経伝達物質に関与していると考えられます。
ナイアシンは、炭水化物や脂質、たんぱく質のエネルギー産生、ホルモンの合成、脳神経やペラグラの皮膚炎、下痢などに関与しています。いろいろな食品に含まれるため、摂取不足の心配はほとんどないと考えられます。

ビタミンC、食物繊維、鉄など

ビタミンCには、コラーゲン(骨を含めた細胞と細胞の結合組織の主成分のたんぱく質)の生成促進や、アミノ酸や副腎皮質ホルモンの生成、鉄や銅の吸収、ヘモグロビンの合成を促進する働きがあります。また、ビタミンA、Eとともに活性酸素(体を酸化させ老化などを早める物質)に対する抗酸化ビタミンとしての働きや、免疫力を高める働き、しみのもととなるメラニン色素の生成を抑える働きなどが知られています。
鉄や銅は赤血球のヘモグロビン合成に深く関与し、鉄はヘモグロビンの構成物質として血液により体中に酸素を運搬したり、筋肉中ではミオグロビンの成分として、血液より筋肉に酸素を取り入れる役割が知られています。
また、鉄は体内でたんぱく質と結合して、肝臓、脾臓、骨髄に貯蔵鉄の形で約20~30%が貯蔵され、血液中に鉄分が不足するとヘム鉄の形で血液に補充される仕組みになっています。