体をつくるたんぱく質
たんぱく質は、水分を除くと体の各組織では一番多く、筋肉や内臓、歯・骨や皮膚、毛髪、脳や血管などのさまざまな細胞・組織をつくる材料になります。また、食べ物を消化する酵素やエネルギーをつくる酵素、さらに細菌や病原体から体を守る免疫細胞、酸素を運ぶ赤血球、神経細胞、ホルモンなどをつくる材料にもなる、生命活動に欠かせない大切な栄養素です。
たんぱく質は、20種類のL型アミノ酸がペプチド結合したもの(ポリペプチド)で、アミノ酸の組み合わせにより10万種類ほどあります。生体はたんぱく質をアミノ酸に分解して利用しています。体内に吸収されたアミノ酸は、代謝してエネルギー源になるほか、肝臓や細胞内で体のそれぞれの組織に必要なたんぱく質に再合成されます。
20種類のアミノ酸のうち、トリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンの9種類※1は人間の体内で合成することができないため、必ず食物から摂取しなければなりません。
この9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。必須アミノ酸のうち1種類でも欠けると、たんぱく質の合成はできなくなるといわれています。
たんぱく質は、20種類のL型アミノ酸がペプチド結合したもの(ポリペプチド)で、アミノ酸の組み合わせにより10万種類ほどあります。生体はたんぱく質をアミノ酸に分解して利用しています。体内に吸収されたアミノ酸は、代謝してエネルギー源になるほか、肝臓や細胞内で体のそれぞれの組織に必要なたんぱく質に再合成されます。
20種類のアミノ酸のうち、トリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンの9種類※1は人間の体内で合成することができないため、必ず食物から摂取しなければなりません。
この9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。必須アミノ酸のうち1種類でも欠けると、たんぱく質の合成はできなくなるといわれています。
牛乳たんぱく質の組成
カゼイン
カゼインは牛乳に酸を加えてpH4.6にすると白色の凝集物となって沈殿してくるたんぱく質で、牛乳中のたんぱく質のおよそ80%を占める主要な成分です。牛乳のカゼインはさらにαs1-、αs2-、β-、κ-カゼインの4つに分類され、牛乳中ではこれら4種類のカゼインがカゼインミセルと呼ばれる集合体をつくって存在しています[図2-17]。
カゼインは牛乳に酸を加えてpH4.6にすると白色の凝集物となって沈殿してくるたんぱく質で、牛乳中のたんぱく質のおよそ80%を占める主要な成分です。牛乳のカゼインはさらにαs1-、αs2-、β-、κ-カゼインの4つに分類され、牛乳中ではこれら4種類のカゼインがカゼインミセルと呼ばれる集合体をつくって存在しています[図2-17]。
図2-17 | カゼインミセルの 電子顕微鏡写真
カゼインミセルは直径30〜600nmのコロイド粒子球で、牛乳が白く濁って見えるのは、乳脂肪球と共にこのカゼインミセルが光を乱反射するためです。カゼインミセルの構造について、以前はサブミセルと呼ばれるさらに小さな粒子球が多数集まってミセルが構成されている(サブミセルモデル)と広く考えられていましたが、現在ではサブミセルの存在を否定したナノクラスターモデルが主流になっています。
カゼインミセルには多量のカルシウム(リン酸カルシウム)が含まれており、またカゼインが消化される過程で生成されるカゼインホスホペプチド(CPP)には小腸下部でカルシウムの吸収を助ける働きが知られています。CPPは牛乳のカルシウムの消化吸収率が高い一因と考えられています。
ホエイたんぱく質
カゼインを除いたホエイ中に存在する可溶性のたんぱく質で、牛乳ではβ-ラクトグロブリンとα-ラクトアルブミンが主要なホエイたんぱく質です。これら以外にもホエイ中には微量なものまで含めると多数の有用なたんぱく質が存在し、例えばラクトフェリン(LF)は鉄の吸収を調節する働きがあり、貧血の予防改善効果が認められています。ラクトフェリンには細菌の増殖を抑え、免疫力を高める効果があることもわかっており、胃内でペプシンで分解されると、より高い抗菌性のあるラクトフェリシンを生成します。
カゼインミセルには多量のカルシウム(リン酸カルシウム)が含まれており、またカゼインが消化される過程で生成されるカゼインホスホペプチド(CPP)には小腸下部でカルシウムの吸収を助ける働きが知られています。CPPは牛乳のカルシウムの消化吸収率が高い一因と考えられています。
ホエイたんぱく質
カゼインを除いたホエイ中に存在する可溶性のたんぱく質で、牛乳ではβ-ラクトグロブリンとα-ラクトアルブミンが主要なホエイたんぱく質です。これら以外にもホエイ中には微量なものまで含めると多数の有用なたんぱく質が存在し、例えばラクトフェリン(LF)は鉄の吸収を調節する働きがあり、貧血の予防改善効果が認められています。ラクトフェリンには細菌の増殖を抑え、免疫力を高める効果があることもわかっており、胃内でペプシンで分解されると、より高い抗菌性のあるラクトフェリシンを生成します。
牛乳のたんぱく質は良質
牛乳のたんぱく質は200mLあたり6.8gで、必須アミノ酸のバランスが良く、コップ2杯分で1日に必要な必須アミノ酸量を摂取できます。必須アミノ酸はどれか1種類でも摂取量が少ない場合、体内では最も少ない必須アミノ酸の充足率までしかたんぱく質の再合成の材料としては利用されません。したがって、摂取するたんぱく質の「質」が重要になります。
たんぱく質の「質」を評価する指標には、従来より広く用いられてきたアミノ酸スコア※2をはじめ、現在最も信頼度が高いとされるDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)※3などがあります。牛乳のたんぱく質は、アミノ酸スコアが上限値の100[図2-18]で、DIAASも100%を超えており[表2-6]、どの指標でも高水準です。
このように、牛乳のたんぱく質は必須アミノ酸をバランス良く含み、消化・利用効率も高く、卵に次いで良質といわれています。特に日本人は米やパンが主食であるため、必須アミノ酸のリジンが不足しがちです。リジンは魚のアジにも多く含まれますが、毎日の食事を考えると主食のリジン不足を補うには牛乳が最適です。
たんぱく質の「質」を評価する指標には、従来より広く用いられてきたアミノ酸スコア※2をはじめ、現在最も信頼度が高いとされるDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)※3などがあります。牛乳のたんぱく質は、アミノ酸スコアが上限値の100[図2-18]で、DIAASも100%を超えており[表2-6]、どの指標でも高水準です。
このように、牛乳のたんぱく質は必須アミノ酸をバランス良く含み、消化・利用効率も高く、卵に次いで良質といわれています。特に日本人は米やパンが主食であるため、必須アミノ酸のリジンが不足しがちです。リジンは魚のアジにも多く含まれますが、毎日の食事を考えると主食のリジン不足を補うには牛乳が最適です。
※1 必須アミノ酸は、乳幼児に必要なアルギニンを含めて10種類といわれることもある
※2 アミノ酸スコアとは、たんぱく質の栄養価を表す数値。食品に含まれるアミノ酸の量が、体づくりに必要なたんぱく質を合成するときの理想のアミノ酸構成をどれくらい満たしているかで算出する。アミノ酸スコアが100に近いほど、たんぱく質の栄養価は高く、良質であるといえる
※3 2013年にFAO(国際連合食糧農業機関)が推奨した指標で、アミノ酸組成はもちろん、アミノ酸ごとの消化吸収のされやすさや腸内細菌の影響も考慮して総合的に評価する方法。従来のアミノ酸スコア(PDCAAS)の上限値である100以上のスコアも正確に評価できるので、高品質なたんぱく質の評価に適している
図2-18 | 牛乳・鶏卵・精白米のアミノ酸評点パターンに対する充足率とアミノ酸スコア
表2-6 | さまざまな食品のDIAAS
食 品 | DIAAS | |
---|---|---|
植物性たんぱく質 | 小麦 | 40.2 |
大麦 | 47.2 | |
トウモロコシ | 42.4 | |
大豆 | 99.6 | |
動物性たんぱく質 | 牛肉 | 111.6 |
豚肉* | 113.9 | |
鶏肉* | 108.2 | |
鶏卵* | 116.4 | |
牛乳 | 115.9 |
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A2ミルクとは何か
日本でも話題に上るようになった「A2ミルク」。牛乳のたんぱく質中のβ-カゼインがA2型100%の牛乳をいいます。
牛乳のたんぱく質の約80%を占めるカゼインの一種であるβ-カゼインには、遺伝的な変異型(バリアント)が複数あり、その代表的なものがA1型とA2型です。違いは209個のアミノ酸配列の67番目で、A1型はヒスチジン、A2型はプロリンです。
牛乳に含まれるA1型およびA2型β-カゼインの割合は、乳牛個体が持つ遺伝子により異なります。A1A1型遺伝子を持つ牛からはA1型β-カゼインのみを含む牛乳(A1ミルク)、A2A2型の牛からはA2型β-カゼインのみを含む牛乳(A2ミルク)、A1A2型の牛からはA1型とA2型β-カゼインが混ざった牛乳が得られます。私たちがふだん飲んでいる牛乳は、A1型とA2型β-カゼインが混在しています。
近年、A2A2型の牛のみを選別して搾乳した「A2ミルク」が、牛乳の新たな選択肢の一つとなり、世界的にマーケットが広がりつつあります。A2ミルクについては「消化されやすい」「おなかがゴロゴロしにくい」可能性などを指摘する報告がありますが、A1ミルクやA2ミルクとヒトの健康との関連はまだ科学的証拠が不十分であり、今後の継続的な研究が必要です。
牛乳のたんぱく質の約80%を占めるカゼインの一種であるβ-カゼインには、遺伝的な変異型(バリアント)が複数あり、その代表的なものがA1型とA2型です。違いは209個のアミノ酸配列の67番目で、A1型はヒスチジン、A2型はプロリンです。
牛乳に含まれるA1型およびA2型β-カゼインの割合は、乳牛個体が持つ遺伝子により異なります。A1A1型遺伝子を持つ牛からはA1型β-カゼインのみを含む牛乳(A1ミルク)、A2A2型の牛からはA2型β-カゼインのみを含む牛乳(A2ミルク)、A1A2型の牛からはA1型とA2型β-カゼインが混ざった牛乳が得られます。私たちがふだん飲んでいる牛乳は、A1型とA2型β-カゼインが混在しています。
近年、A2A2型の牛のみを選別して搾乳した「A2ミルク」が、牛乳の新たな選択肢の一つとなり、世界的にマーケットが広がりつつあります。A2ミルクについては「消化されやすい」「おなかがゴロゴロしにくい」可能性などを指摘する報告がありますが、A1ミルクやA2ミルクとヒトの健康との関連はまだ科学的証拠が不十分であり、今後の継続的な研究が必要です。