さまざまなナチュラルチーズ
「国境を越えればチーズが変わる」といわれるように、ナチュラルチーズは種類が多く、日本国内でも340以上(2022年時)ものナチュラルチーズの工房があります。
ナチュラルチーズの分類方法はいろいろありますが、フランスの熟成方法により7種類に分類されています[表3-1]。
ナチュラルチーズの分類方法はいろいろありますが、フランスの熟成方法により7種類に分類されています[表3-1]。
表3-1 | チーズの種類と特徴
種類 | タイプ | 熟成方法 | 特徴 | 代表例 |
---|---|---|---|---|
ナチュラル
チーズ
|
フレッシュ | 非熟成 | 乳に酸や酵素を加えて凝固させ水分を抜いたもので、熟成させないチーズ。ソフトで軽い酸味があり、さわやかな風味 | カッテージ、モッツァレラ、クワルク、クリーム |
白カビ | カビ熟成 | 白カビを表面に繁殖させ熟成。たんぱく質を分解する力の強い白カビが、表面から中心部に向かって熟成させる | カマンベール、ブリー、バラカ、ブリヤ・サヴァラン | |
ウォッシュ |
表面洗浄
細菌熟成
|
表皮を塩水や土地の酒(ワインやビール)で洗いながら、チーズの表皮についている特殊な菌で熟成。匂いが強烈なものが多い | ポン・レヴェック、マンスティール、リヴァロ、エポワス[図3-13] | |
シェーブル
(山羊乳)
|
カビ熟成
細菌熟成
|
山羊乳でつくるチーズの総称。山羊乳特有の風味がある。フレッシュからハードタイプまであり、熟成が進むと香りも味も濃くなる | ピラミッド・サンドレ、バノン、ヴァランセ、サント・モール | |
青カビ | カビ熟成 | 青カビをカードに混ぜ、内側から熟成させる。独特の青カビの風味がある。よく熟成したものは強烈な風味があり、味も濃厚 | ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトン | |
セミハード | 細菌熟成 | 凝乳切断後のカードを45℃以内で穏やかに加熱してカードをつくり、型詰後の圧搾によって水分値をおおむね38~45%にしたチーズ。比較的硬く、チーズの中でも保存がきく。熟成期間や大きさ、脂肪の量などもさまざまで最も種類が多い。味はマイルド | ゴーダ[図3-14]、マリボー、サムソー、ラクレット、カンタル | |
ハード | 細菌熟成 | 凝乳切断後のカードを45℃以上に加熱して水分の低いカードをつくり、型詰・圧搾することにより水分値をおおむね38%以下にしたチーズ。熟成期間も長く長期保存ができる。深い味わいとコクがあり、そのまま食べるほか、料理にも幅広く利用される。1年から2年以上じっくり熟成させてつくるチーズもある。長く熟成させたものほど風味が豊かになる | エメンタール[図3-15]、グリュイエール、エダム、チェダー、パルミジャーノ・レッジャーノ[図3-16]、ロマノコンテ | |
プロセス チーズ |
1種類または数種類のナチュラルチーズを粉砕、溶融塩ともに加熱溶解して乳化し、成型包装したもの。加熱してあるため熟成が進まず、風味が一定している。スライス、ポーション(6P、ベビー)、キャンディータイプ、ブロックタイプなどさまざまな形状にすることができ、多彩な用途に対応している |
カビを利用したチーズ
カビには有害なものだけでなく、役に立つものもあります。カマンベール、ブルーチーズはカビを利用した食品の代表です。
これらのチーズに利用されるカビは、ペニシリウム属のロックフォルティなどが純粋培養したものです。食べても害がないばかりでなく、チーズの中のたんぱく質や脂肪をよく分解し、独特の風味や組織をつくり出すのになくてはならないものです。
これらのチーズに利用されるカビは、ペニシリウム属のロックフォルティなどが純粋培養したものです。食べても害がないばかりでなく、チーズの中のたんぱく質や脂肪をよく分解し、独特の風味や組織をつくり出すのになくてはならないものです。
白カビタイプ
チーズの表面に白カビを植えつけて熟成させます。カマンベール、ブリー、馬蹄形のバラカなどのチーズがその代表です[図3-2]。
いずれもたんぱく質を分解する力の強い白カビが、表面から中心に向かって熟成させていき、表面は白いカビで覆われ、内部は黄色がかったクリーム状のチーズ組織になります。
カビの種類は、ペニシリウム属のカマンベルティやカゼイコラムなどが使われています。
いずれもたんぱく質を分解する力の強い白カビが、表面から中心に向かって熟成させていき、表面は白いカビで覆われ、内部は黄色がかったクリーム状のチーズ組織になります。
カビの種類は、ペニシリウム属のカマンベルティやカゼイコラムなどが使われています。
青カビタイプ
青カビは内部に青緑色の大理石状の縞模様をつくり、ピリッとした鋭い刺激性のある風味が特徴です。他のチーズと違い、中心から外側へ熟成が進みます。ペニシリウム・ロックフォルティを利用したフランスのロックフォールや、イタリアのゴルゴンゾーラ、イギリスのスティルトンは三大ブルーチーズとして日本でも有名です[図3-3]。
これらの有用なカビとは別に、家庭の冷蔵庫で保存中に表面に生えてしまう黒やオレンジ色のカビがあります。このカビはチーズ本来の品質や風味を低下させます。目に見えないカビの胞子が中まで入っていることもあるので、これらの新たなカビの生えたチーズは食べないでください。
これらの有用なカビとは別に、家庭の冷蔵庫で保存中に表面に生えてしまう黒やオレンジ色のカビがあります。このカビはチーズ本来の品質や風味を低下させます。目に見えないカビの胞子が中まで入っていることもあるので、これらの新たなカビの生えたチーズは食べないでください。
フレッシュチーズ
ナチュラルチーズの一種で、熟成していないものを一般にフレッシュチーズと呼びます。
チーズをつくる工程は、まず乳を乳酸菌で発酵させレンネット(凝乳酵素、キモシンともいいます)で固めます。そして固まった凝乳を細断してカードをつくります。カードを徐々に加温しながらホエイ(乳清)を除きます。その後、他のチーズは熟成させますが、フレッシュチーズは熟成を行いません。水分が多くやわらかく、味や匂いにクセがないので、そのまま食べることが多いのが特徴です。代表的なものを次に紹介します。
チーズをつくる工程は、まず乳を乳酸菌で発酵させレンネット(凝乳酵素、キモシンともいいます)で固めます。そして固まった凝乳を細断してカードをつくります。カードを徐々に加温しながらホエイ(乳清)を除きます。その後、他のチーズは熟成させますが、フレッシュチーズは熟成を行いません。水分が多くやわらかく、味や匂いにクセがないので、そのまま食べることが多いのが特徴です。代表的なものを次に紹介します。
カッテージチーズ
牛乳(脱脂乳)を乳酸菌で発酵させて固めます。粒状タイプと裏ごしタイプがあります。脂肪が少ないのであっさりしています[図3-4]。
クリームチーズ
生乳を乳酸菌発酵とレンネット凝固させ、クリームを加えてつくります。
口あたりは滑らかで、ほのかな酸味があります。比較的脂肪が多いチーズです。パンやクラッカーに塗ったり、チーズケーキに使われます[図3-5]。
口あたりは滑らかで、ほのかな酸味があります。比較的脂肪が多いチーズです。パンやクラッカーに塗ったり、チーズケーキに使われます[図3-5]。
モッツァレラ
本来は水牛の乳からつくりますが、現在は牛乳が主流になっています。見た目は豆腐かつきたての餅によく似ていて、モチッとした食感があります。酸化を防ぐため水に漬かった状態で売られているものが多く、オードブルやサラダに、加熱するとよく伸びるのでイタリアンピザなどに使われています[図3-6]。
なお、日本では、旧 乳等省令(現 乳等命令)の「乳」や「乳製品」の定義に水牛の乳が含まれていなかったことから、水牛乳やその加工品は「乳」や「乳製品」として取り扱われていませんでした。しかし、国際的な整合性を図る観点から、2020年の乳等省令改正で「生水牛乳」が加えられ、規格基準が定められました。その結果、現在は水牛の乳からつくられたモッツァレラも「種類別:ナチュラルチーズ」に統一されています。
なお、日本では、旧 乳等省令(現 乳等命令)の「乳」や「乳製品」の定義に水牛の乳が含まれていなかったことから、水牛乳やその加工品は「乳」や「乳製品」として取り扱われていませんでした。しかし、国際的な整合性を図る観点から、2020年の乳等省令改正で「生水牛乳」が加えられ、規格基準が定められました。その結果、現在は水牛の乳からつくられたモッツァレラも「種類別:ナチュラルチーズ」に統一されています。
マスカルポーネ
生クリームを加熱しながらクエン酸や酢酸で凝固させ、ろ過して水分を除いてつくります。クリーミーなおいしさで、菓子類によく使われます。ティラミスの原料に使われるチーズとして知られています[図3-7]。
クワルク
ヨーグルトに似たクセのないおだやかな味わいが特徴です。ドイツではポピュラーなチーズで、脂肪が少なく、そのまま食べたり、デザート、ケーキ、ドレッシングなど、さまざまな料理にも使われています[図3-8]。
フロマージュ・ブラン
フランスではポピュラーなチーズで、「真っ白なチーズ」という意味です。
牛乳に凝乳酵素を加えて固め、水分を切っただけのチーズです。パンに塗ったり、甘味を加えてデザートとして使われます。形態や食感はヨーグルトによく似ています[図3-9]。
牛乳に凝乳酵素を加えて固め、水分を切っただけのチーズです。パンに塗ったり、甘味を加えてデザートとして使われます。形態や食感はヨーグルトによく似ています[図3-9]。
フェタ
本来は羊の乳でつくりますが、今は牛乳が多くなっています。保存性を保つために塩水や香辛料入りのオイルに漬けてあり、塩味が強いのが特徴です。ギリシャの代表的なチーズで2000年以上の歴史があり、サラダなどに使います[図3-10]。
バノン
本来は山羊乳でつくりますが、現在は牛乳が主流です。栗の葉で包んであり、独特の風味があります[図3-11]。
ホエイたんぱく質チーズ
乳のホエイ成分から抽出されたたんぱく質を含むチーズです。
リコッタ
チーズをつくるときに出るホエイ(乳清)を、再度加熱凝固させてつくります。見た目も感触も豆腐によく似ていて、乳の持つほのかな甘味が感じられます(日本では2005年10月から法令上の種類別名称が「乳または乳製品を主要原料とする食品」に変更されました)[図3-12]。
図3-2 | 白カビタイプ(カマンベール)
図3-3 | 青カビタイプ(ロックフォール)
図3-4 | カッテージチーズ
図3-5 | クリームチーズ
図3-6 | モッツァレラ
図3-7 | マスカルポーネ
図3-8 | クワルク
図3-9 | フロマージュ・ブラン
図3-10 | フェタ
図3-11 | バノン
図3-12 | リコッタ
図3-13 | エポワス
図3-14 | ゴーダ
図3-15 | エメンタール
図3-16 | パルミジャーノ・レッジャーノ
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モッツァレラチーズの製造方法
ナチュラルチーズの1種類であるモッツァレラチーズの製造方法を見てみましょう。
写真提供:丹波牛乳