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成人前期の体の特徴

体の発育がおおむね終わり、体格がほぼ完成します。体の諸機能は成熟し、身体的には充実した時期となります。成長はほぼ止まりますが、筋肉は訓練(機械的刺激)によりさらに発達します。最大骨量(peak bone mass)は女子で18歳ごろ、男子で20歳ごろからピーク期になります。
男女とも心身の健康度が高いので、健康や食生活に対する認識が低い傾向にあり、外食の利用増加、朝食欠食、食事時間の乱れなどの問題が増えてきます。栄養面でも、肉類に多い飽和脂肪酸や食塩の摂取が増えるとともに、カルシウムや鉄、ビタミンなどの摂取不足が見られます。こうした栄養状態に食事時間の乱れ、運動不足やストレス過多が重なる生活が続くと、体の生理機能に影響を及ぼし、ホルモンバランスなどを崩す原因ともなります。また、肥満や生活習慣病の素地をつくることになり、成人中期・後期の健康状態に影響します。
女性ではやせ願望から野菜偏重、いわゆるダイエット食品偏重など、偏った食事をする人も少なくありません。
こうした食事ではエネルギーやたんぱく質、カルシウム、鉄などが大きく不足し、骨量や筋肉量の減少、貧血、ホルモンバランスの乱れなどを招きます。また、妊娠、出産にあたって低出生体重児出産、早産などのリスクが高まり、出産後の育児にも影響します。

成人前期における牛乳乳製品の役割

20代に骨量はピーク期を迎え、その後は徐々に減少するため、十分なカルシウム摂取が必要です。特に女性は骨粗鬆そしょう症予防の観点から、カルシウムが豊富で吸収効率も良い牛乳乳製品の摂取が大切です。また、牛乳乳製品に豊富に含まれるたんぱく質やビタミン、ミネラルは、体力や免疫力の維持・強化を助けます。さらに、調理に牛乳を使うと低温でもコクが加わっておいしくなり、減塩にもつながります。
若い女性は便秘になりがちですが、牛乳やヨーグルトは便秘予防にも有用です。乳糖や乳酸菌には腸内細菌のバランスを保ち、腸のぜん動運動を高める働きがあります。また、牛乳乳製品に多く含まれているビタミンB2やビタミンAは肌の健康にも重要です。
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牛乳を飲むと太る?
 中学生・高校生男女のべ6,000人を対象に、4年間にわたって実施された調査では、1日あたりの牛乳の摂取状況を①400mL以上、②200~400mL、③100~200mL、④100mL未満、⑤ほとんど飲まないの5グループに分けて検討した結果、男子では差がありませんでしたが、女子では牛乳摂取量の多いグループのほうが体脂肪率が低いという結果になりました。
また、ダイエット中の女性で試験した結果、低脂肪牛乳を摂取する群の体脂肪の低下が牛乳非摂取群に比べて大きいとの報告もあります。さらにアメリカの女児では、1日あたり3品目以上の乳製品を摂取したグループで、BMIが極端に高い、あるいは低い人が少なく、体脂肪も低かったとの報告もあります。
1日の牛乳摂取量と体脂肪率(中高生女子)
出典:上西一弘ほか「牛乳摂取を中心とした中高生の食生活 の実態と身体組成」『食の科学』光琳(2002年)
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妊娠・授乳期は積極的な牛乳摂取を
妊娠・授乳期には、すべての栄養素を十分に摂取することが必要です。中でも特に重要な栄養素は、胎児の骨格の材料となるカルシウムと血液成分となる鉄分です。胎児は母体から栄養分を吸収して成長するため、母体から十分な栄養分が供給できないと、生まれてくる赤ちゃんの発育にも悪い影響が出てきます。
妊娠・授乳期は母体のカルシウムが激しく流出する時期です。妊娠中は母体から胎児へ約30gのカルシウムが移行し、授乳期では母乳を通して1日約220mgのカルシウムが喪失します。「日本人の食事摂取基準」では、妊娠・授乳期の付加量は設定されていませんが、十分なカルシウムの摂取が必要なことは変わりません。女性が主に妊娠、出産する年齢層におけるカルシウム摂取の推奨量は650mgですが、実際の摂取量は20歳代で平均408mg、30歳代では406mgと極端に不足していることがわかります(厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」)。
牛乳乳製品は、妊娠・授乳期におけるカルシウム摂取の推奨量を手軽に毎日摂れる食品として最適と考えられます。