この章では、牛乳乳製品にまつわる気になるウワサなどを中心に、牛乳に関する30の疑問をQ&A形式でまとめました。
これを読んで、牛乳乳製品の気になるウワサをすっきり解決しましょう。
これを読んで、牛乳乳製品の気になるウワサをすっきり解決しましょう。
Q01
牛乳のたんぱく質は、異種たんぱく質だから危険?
とても安全なたんぱく質で、安心して摂取できます。
異種たんぱく質の対語は同種たんぱく質です。ヒトが食品として摂取するたんぱく質で唯一の同種たんぱく質は、乳児が摂取する母乳中のたんぱく質だけです。
したがって、牛乳中の動物性たんぱく質はヒトにとって異種たんぱく質になります。良質なたんぱく質の一つといわれている大豆などの植物性たんぱく質は、動物性たんぱく質よりもさらに遠い異種のたんぱく質となります。つまり、食品で摂取するたんぱく質は動物性・植物性を問わず、すべて異種たんぱく質です。同種たんぱく質でなければ食品として危険というならば、母乳以外では共食いでしかたんぱく質を摂取できないことになります。
異種たんぱく質を摂取して消化し、自分の体に必要なたんぱく質につくり変えることが栄養代謝であり、生命活動そのものです。牛乳は、有史以来数千年にわたり世界中で消費されてきた、人間にとって大切で安全なたんぱく質源であり、安心して摂取できるものです。
したがって、牛乳中の動物性たんぱく質はヒトにとって異種たんぱく質になります。良質なたんぱく質の一つといわれている大豆などの植物性たんぱく質は、動物性たんぱく質よりもさらに遠い異種のたんぱく質となります。つまり、食品で摂取するたんぱく質は動物性・植物性を問わず、すべて異種たんぱく質です。同種たんぱく質でなければ食品として危険というならば、母乳以外では共食いでしかたんぱく質を摂取できないことになります。
異種たんぱく質を摂取して消化し、自分の体に必要なたんぱく質につくり変えることが栄養代謝であり、生命活動そのものです。牛乳は、有史以来数千年にわたり世界中で消費されてきた、人間にとって大切で安全なたんぱく質源であり、安心して摂取できるものです。
Q02
超高温瞬間殺菌(UHT)で乳脂肪は酸化する?
超高温瞬間殺菌で、乳脂肪は酸化されません。
生乳は工場で加熱殺菌してから、牛乳として出荷・販売されます。生乳の殺菌方法にはさまざまな種類がありますが、日本では120〜150℃の超高温で2〜3秒加熱して殺菌する「超高温瞬間殺菌(UHT)」が最も一般的で、日本の牛乳の9割以上がこの方法で殺菌されています。人体に有害とされる一般的な細菌だけでなく、耐熱性のリケッチア菌(人畜共通感染症の一つであるQ熱の原因菌)や細菌の胞子も死滅させることができます。
牛乳の殺菌は外気と直接触れない密閉装置の中で行われているため、酸化に必要な酸素が牛乳に溶け込むことは極めて少なく、乳脂肪が酸化される可能性はほとんどありません。実際に、原料である生乳の脂肪と、製品になったパック入り牛乳の脂肪の酸化の程度を測定しましたが、どちらもまったく差がありませんでした(一般財団法人日本食品分析センター 2006年分析結果)。
牛乳の殺菌は外気と直接触れない密閉装置の中で行われているため、酸化に必要な酸素が牛乳に溶け込むことは極めて少なく、乳脂肪が酸化される可能性はほとんどありません。実際に、原料である生乳の脂肪と、製品になったパック入り牛乳の脂肪の酸化の程度を測定しましたが、どちらもまったく差がありませんでした(一般財団法人日本食品分析センター 2006年分析結果)。
Q03
牛乳を殺菌すると酵素が死ぬから体に良くない?
「酵素を摂る」ことに栄養学的意味はありません。
人間の体にとって必要な酵素は、体内でたんぱく質としてアミノ酸から生合成されます。したがって、食物などから摂取する必要はありません。
食べ物に含まれていた酵素は、消化管より分泌される「たんぱく質分解酵素」で分解され、酵素活性を失います。酵素はたんぱく質なので、牛乳中の酵素も加熱殺菌によっても活性が失われますが、上記の理由からそのことに大きな栄養学的意味はありません。
牛乳には、加水分解酵素や酸化還元酵素など数十種類の酵素が含まれていますが、これらの酵素は微量ですから、私たちの健康に関係することはまずありません。
食べ物に含まれていた酵素は、消化管より分泌される「たんぱく質分解酵素」で分解され、酵素活性を失います。酵素はたんぱく質なので、牛乳中の酵素も加熱殺菌によっても活性が失われますが、上記の理由からそのことに大きな栄養学的意味はありません。
牛乳には、加水分解酵素や酸化還元酵素など数十種類の酵素が含まれていますが、これらの酵素は微量ですから、私たちの健康に関係することはまずありません。
Q04
牛乳は胃の中で固まるので消化が悪い?
牛乳は、とても消化吸収の良い食品です。
牛乳に含まれているたんぱく質の約80%はカゼインです。カゼインは、牛乳中ではカゼインミセルという小さな粒子として分散しています。私たちが牛乳を飲んだとき、胃の中ではカゼインミセルが胃酸によって固まり(酸凝固)、ヨーグルトのような状態になります。たんぱく質を分解する消化酵素が自由に入り込めるすき間の多い構造ですから、どんどん分解(消化)されていきます。消化が悪くなるどころか、逆に胃や小腸での滞留時間が延長され、より消化性は高まるのです。
肉を加熱すると消化が良くなります。加熱により、たんぱく質が変性して消化酵素の作用を受けやすくなるからです。牛乳中のカゼインは、肉のように熱で変性させなくても、そのままの形で消化しやすい構造をしています。食品のたんぱく質の消化率を比較すると、牛肉97.5%、鶏卵97.1%に対し、牛乳は98.8%(中江利孝「牛乳の栄養学的ならびに生理学的効果に関する総合研究」1978年より)。牛乳の消化率は、主要なたんぱく質食品の中でも最も優れています。牛乳は、とても消化の良い食品なのです。
肉を加熱すると消化が良くなります。加熱により、たんぱく質が変性して消化酵素の作用を受けやすくなるからです。牛乳中のカゼインは、肉のように熱で変性させなくても、そのままの形で消化しやすい構造をしています。食品のたんぱく質の消化率を比較すると、牛肉97.5%、鶏卵97.1%に対し、牛乳は98.8%(中江利孝「牛乳の栄養学的ならびに生理学的効果に関する総合研究」1978年より)。牛乳の消化率は、主要なたんぱく質食品の中でも最も優れています。牛乳は、とても消化の良い食品なのです。
Q05
牛乳は花粉症やアトピーの原因?
牛乳が花粉症やアトピーの原因になることはありません。
花粉症はスギやヒノキ、ブタクサなどの植物の花粉に対するアレルギー反応であり、牛乳がその原因になるといったことは全く考えられません。また、アトピーとは花粉症も含めたアレルギーになりやすい体質のことをいいますが、これに牛乳が関係するといった主張も医学的根拠のない非科学的な憶測でしかありません。
ただし、牛乳に限らずすべての食品たんぱく質は一部の人にとってアレルギーを起こすアレルゲンとなる可能性があり、牛乳は比較的その頻度が高いことから、食品に使用した場合は必ず「表示」をしなくてはなりません。食品表示基準では、食物アレルギーの重篤度や頻度の高い食品を「特定原材料」(令和5年3月9日改正時点でえび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目)として表示を義務づけており、乳も含まれています。
なお、アトピー性皮膚炎は皮膚の乾燥や炎症がその原因であり、牛乳をはじめとする食品が直接の引き金になることはありませんが、食物アレルギーを合併した場合、皮膚炎の症状が悪化することがあります(食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎)。その場合は医師による正しい診断のもと、原因アレルゲンを除去するなど適切な対応が必要ですが、自己判断による除去はすべきではありません。
ただし、牛乳に限らずすべての食品たんぱく質は一部の人にとってアレルギーを起こすアレルゲンとなる可能性があり、牛乳は比較的その頻度が高いことから、食品に使用した場合は必ず「表示」をしなくてはなりません。食品表示基準では、食物アレルギーの重篤度や頻度の高い食品を「特定原材料」(令和5年3月9日改正時点でえび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目)として表示を義務づけており、乳も含まれています。
なお、アトピー性皮膚炎は皮膚の乾燥や炎症がその原因であり、牛乳をはじめとする食品が直接の引き金になることはありませんが、食物アレルギーを合併した場合、皮膚炎の症状が悪化することがあります(食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎)。その場合は医師による正しい診断のもと、原因アレルゲンを除去するなど適切な対応が必要ですが、自己判断による除去はすべきではありません。
Q06
牛乳のコレステロールや脂肪は健康に悪影響を及ぼす?
重要なエネルギー源であり、健康に悪影響を及ぼすことはありません。
コレステロールはとかく悪者扱いされがちですが、生命を維持していくために欠かせない成分です。血中コレステロール値は高すぎても低すぎても健康に良くないことが知られています(コレステロールの役割や性質については、41ページ「乳脂肪とコレステロール」を参照)。
牛乳200mLに含まれるコレステロール量はわずか25mgです。また、食パン1枚に塗るバター(約10g)では21mg、プロセスチーズ1切れ(20g)では16mgといずれも気にするほどのコレステロール量ではありません。日本人の成人の場合、牛乳を毎日400〜600mL飲み続けても血中コレステロールの上昇はなかったという報告もあります。
一方、牛乳の脂肪は栄養的に重要なエネルギー源であり、毎日摂取することが大切です。乳脂肪には、体内で合成されない必須脂肪酸、脂溶性ビタミン(A、D、E)などが含まれています。また、乳脂肪は構成脂肪酸の60〜70%は飽和脂肪酸ですが、そのなかには炭素数が8から10(n=8〜10)の中鎖脂肪酸が含まれることが特徴です。さらに、オレイン酸(C18:1)などの1つの二重結合を持つモノ不飽和脂肪酸の多いことも特徴です(Q07参照)。これら中鎖脂肪酸やモノ不飽和脂肪酸は利用されやすく体に蓄積されにくいことが見出されています。
牛乳200mLに含まれるコレステロール量はわずか25mgです。また、食パン1枚に塗るバター(約10g)では21mg、プロセスチーズ1切れ(20g)では16mgといずれも気にするほどのコレステロール量ではありません。日本人の成人の場合、牛乳を毎日400〜600mL飲み続けても血中コレステロールの上昇はなかったという報告もあります。
一方、牛乳の脂肪は栄養的に重要なエネルギー源であり、毎日摂取することが大切です。乳脂肪には、体内で合成されない必須脂肪酸、脂溶性ビタミン(A、D、E)などが含まれています。また、乳脂肪は構成脂肪酸の60〜70%は飽和脂肪酸ですが、そのなかには炭素数が8から10(n=8〜10)の中鎖脂肪酸が含まれることが特徴です。さらに、オレイン酸(C18:1)などの1つの二重結合を持つモノ不飽和脂肪酸の多いことも特徴です(Q07参照)。これら中鎖脂肪酸やモノ不飽和脂肪酸は利用されやすく体に蓄積されにくいことが見出されています。
Q07
乳脂肪中のトランス脂肪酸は有害?
牛乳に含まれるバクセン酸は、健康に影響しないと報告されています。
常温で液体のあぶら(油)と常温で固体のあぶら(脂)をまとめて油脂といいます。油脂は、脂肪酸とグリセリンという分子からできています。脂肪酸は炭素原子が鎖状につながった分子で、末端にはカルボキシル基があります。また、グリセロールに3個の脂肪酸がエステル結合でつながったものを「トリアシルグリセロール(またはトリグリセリド)」といいます。
通常、私たちが食べている油脂の成分の多くは、このトリアシルグリセロールです。油脂は人間の体のエネルギー源になり、また細胞をつくるためにも必要であり、毎日食事から適量を摂取することが大切です。
脂肪酸には、二重結合がない飽和脂肪酸と、二重結合のある不飽和脂肪酸の2種類があります。不飽和脂肪酸は、二重結合のまわりに結合している水素の向きによって「シス型」と「トランス型」の2つに分けられます。天然の不飽和脂肪酸のほとんどはシス型で存在していますが、工業的に部分水素添加油脂(液体の植物油や魚油に水素を添加してつくる固体・半固体の油脂)を製造する過程で一部がトランス型に変化します(エライジン酸)。したがってトランス脂肪酸は、マーガリンやショートニング、クッキーやケーキ、スナック菓子などに多く含まれます。
天然のトランス脂肪酸もあります。反芻動物のルーメン(第1胃)内で微生物の働きによってつくられるもので、体脂肪や乳中に含まれています。牛乳に含まれる天然のトランス脂肪酸はバクセン酸といい、牛乳の全脂肪酸中に約5%含まれています。
トランス脂肪酸を摂りすぎると、悪玉といわれるLDLコレステロールが増加し、善玉といわれるHDLコレステロールが減少して健康に悪影響を及ぼします。また、日常的に多く摂取し続けると、冠動脈性心疾患のリスクが高まることが知られています。
世界保健機関(WHO)は、心血管系疾患リスクを低減し、健康を増進するための目標基準として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示しています。一方、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は、平均値で総エネルギー摂取量の約0.3%であることがわかっており、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられています。ただし、偏った食生活をしている場合は平均値を大きく上回る摂取量となり、心疾患リスクが高まる可能性もあるため、栄養バランスの良い食生活を送ることが大切です。
米国では、2018年6月より、トランス脂肪酸が含まれる部分水素添加油脂をGRAS(Generally Recognized As Safe:一般的に安全と認められる)の対象から除外し、食品に利用するためには新たに米国食品医薬品局(FDA)の承認が必要とする規制を実施しています。なお、牛乳乳製品に含まれるバクセン酸など、天然のトランス脂肪酸だけを含む油脂はこの規制の対象外です。
また、最新の研究によってエライジン酸など工業的に生成されたトランス脂肪酸が細胞死(アポトーシス)を起こさせる仕組みが明らかになってきましたが、バクセン酸など天然のトランス脂肪酸にそのような仕組みが見られないことも報告されています。
通常、私たちが食べている油脂の成分の多くは、このトリアシルグリセロールです。油脂は人間の体のエネルギー源になり、また細胞をつくるためにも必要であり、毎日食事から適量を摂取することが大切です。
脂肪酸には、二重結合がない飽和脂肪酸と、二重結合のある不飽和脂肪酸の2種類があります。不飽和脂肪酸は、二重結合のまわりに結合している水素の向きによって「シス型」と「トランス型」の2つに分けられます。天然の不飽和脂肪酸のほとんどはシス型で存在していますが、工業的に部分水素添加油脂(液体の植物油や魚油に水素を添加してつくる固体・半固体の油脂)を製造する過程で一部がトランス型に変化します(エライジン酸)。したがってトランス脂肪酸は、マーガリンやショートニング、クッキーやケーキ、スナック菓子などに多く含まれます。
天然のトランス脂肪酸もあります。反芻動物のルーメン(第1胃)内で微生物の働きによってつくられるもので、体脂肪や乳中に含まれています。牛乳に含まれる天然のトランス脂肪酸はバクセン酸といい、牛乳の全脂肪酸中に約5%含まれています。
トランス脂肪酸を摂りすぎると、悪玉といわれるLDLコレステロールが増加し、善玉といわれるHDLコレステロールが減少して健康に悪影響を及ぼします。また、日常的に多く摂取し続けると、冠動脈性心疾患のリスクが高まることが知られています。
世界保健機関(WHO)は、心血管系疾患リスクを低減し、健康を増進するための目標基準として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示しています。一方、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は、平均値で総エネルギー摂取量の約0.3%であることがわかっており、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられています。ただし、偏った食生活をしている場合は平均値を大きく上回る摂取量となり、心疾患リスクが高まる可能性もあるため、栄養バランスの良い食生活を送ることが大切です。
米国では、2018年6月より、トランス脂肪酸が含まれる部分水素添加油脂をGRAS(Generally Recognized As Safe:一般的に安全と認められる)の対象から除外し、食品に利用するためには新たに米国食品医薬品局(FDA)の承認が必要とする規制を実施しています。なお、牛乳乳製品に含まれるバクセン酸など、天然のトランス脂肪酸だけを含む油脂はこの規制の対象外です。
また、最新の研究によってエライジン酸など工業的に生成されたトランス脂肪酸が細胞死(アポトーシス)を起こさせる仕組みが明らかになってきましたが、バクセン酸など天然のトランス脂肪酸にそのような仕組みが見られないことも報告されています。
Q08
牛乳中の共役リノール酸(CLA)とはどのような脂肪酸?
がんの抑制など多様な生理作用が報告されている脂肪酸です。
共役リノール酸(CLA)は反芻動物乳から見つかった不飽和脂肪酸で、牛乳中の平均的なCLA含量は全脂肪酸の0.3〜0.6%と報告されています。飼料組成、ルーメン(第1胃)の微生物菌叢や季節によっても含量は異なります。
CLAは、リノール酸と同じく炭素数は18で2つの二重結合を持ち(C18:2)、二重結合の位置や幾何異性(シス型とトランス型)が異なる8つの異性体がありますが、二重結合が共役(一重結合を挟んで交互に存在すること)していて、いずれもリノール酸のような必須脂肪酸としての機能は持っていません。CLAには多様な生理作用があり、特にがん抑制作用、脂質代謝、免疫調節作用、骨代謝への影響、2型糖尿病予防作用などが報告されています。
動物実験では、CLAのがん抑制効果が多数示されてきていますが、ヒトではまだ疫学的にも明確な関係は見出されてはいません。また、多くの動物実験からCLAが体脂肪の減少に有効との報告がありますが、ヒトでの研究結果では健常者、肥満者いずれにおいても有意な体重減少は観察されていません。
CLAは、リノール酸と同じく炭素数は18で2つの二重結合を持ち(C18:2)、二重結合の位置や幾何異性(シス型とトランス型)が異なる8つの異性体がありますが、二重結合が共役(一重結合を挟んで交互に存在すること)していて、いずれもリノール酸のような必須脂肪酸としての機能は持っていません。CLAには多様な生理作用があり、特にがん抑制作用、脂質代謝、免疫調節作用、骨代謝への影響、2型糖尿病予防作用などが報告されています。
動物実験では、CLAのがん抑制効果が多数示されてきていますが、ヒトではまだ疫学的にも明確な関係は見出されてはいません。また、多くの動物実験からCLAが体脂肪の減少に有効との報告がありますが、ヒトでの研究結果では健常者、肥満者いずれにおいても有意な体重減少は観察されていません。
Q09
牛乳は1日のうち、いつ飲むのが効果的?
牛乳は、目的に応じて好きな時間に飲みましょう。
牛乳はいつ飲んでもかまいません。目的に応じてお好きな時間にお飲みください。
ちなみに、毎朝、牛乳を習慣的に飲むことにより睡眠が改善される可能性があります(詳しくは99ページ「睡眠の改善」を参照)。また、睡眠中は成長ホルモンの分泌が活発になるので、夜に牛乳を飲むと牛乳中のたんぱく質やカルシウムが骨や骨格を形成するのに役立ちます。
筋肉量を増やしたい場合は、運動終了直後に牛乳を摂取するようにしましょう。運動終了直後は体内のたんぱく合成能力が非常に高くなっているため、このタイミングで乳たんぱく質を摂取すると効率的に筋肉量をアップすることができます。
ちなみに、毎朝、牛乳を習慣的に飲むことにより睡眠が改善される可能性があります(詳しくは99ページ「睡眠の改善」を参照)。また、睡眠中は成長ホルモンの分泌が活発になるので、夜に牛乳を飲むと牛乳中のたんぱく質やカルシウムが骨や骨格を形成するのに役立ちます。
筋肉量を増やしたい場合は、運動終了直後に牛乳を摂取するようにしましょう。運動終了直後は体内のたんぱく合成能力が非常に高くなっているため、このタイミングで乳たんぱく質を摂取すると効率的に筋肉量をアップすることができます。
Q10
アスリートにとって牛乳摂取のメリットは?
牛乳に多く含まれる分岐鎖アミノ酸は、筋肉づくりに大切な栄養素です。
スポーツ選手のようなアスリートにとって、筋肉づくりは非常に重要な課題です。筋肉づくりに必要な栄養素として、最近、分岐鎖アミノ酸(BCAA/バリン、ロイシン、イソロイシン)が注目されています。分岐鎖アミノ酸の生理作用には、運動中の筋肉の消耗抑制、運動後の筋疲労の軽減や筋肉量を増やすなどの作用があるといわれています。牛乳のたんぱく質に含まれる分岐鎖アミノ酸の割合は21.4%で、大豆18.5%、豚肉18.3%に比べて高く、アスリートにとって牛乳は有利なたんぱく質補給源といえます。
日本人のアメリカンフットボール選手(平均26.9歳)38名を対象にした調査では、牛乳介入群(栄養指導介入を行い、牛乳を1日500mL、さらに週3回のトレーニング直後に500mL上乗せ摂取した)と、牛乳介入を行わなかった群(牛乳摂取量は平均1日117mL)に分けて比較した結果、牛乳介入群では骨密度、骨量、筋量が増加し、疲労度の減少も観察されました(図参照)。
最近のアスリートはサプリメントに依存する傾向が見られ、サプリメントの過剰摂取による健康障害を危惧する声もあります。一方、牛乳は、良質なたんぱく質と豊富なカルシウムを安心して補給できる食品といえます。また、牛乳乳製品の摂取は、高齢者のサルコペニア(筋肉減少症)やフレイル(虚弱)予防にも有用です。
日本人のアメリカンフットボール選手(平均26.9歳)38名を対象にした調査では、牛乳介入群(栄養指導介入を行い、牛乳を1日500mL、さらに週3回のトレーニング直後に500mL上乗せ摂取した)と、牛乳介入を行わなかった群(牛乳摂取量は平均1日117mL)に分けて比較した結果、牛乳介入群では骨密度、骨量、筋量が増加し、疲労度の減少も観察されました(図参照)。
最近のアスリートはサプリメントに依存する傾向が見られ、サプリメントの過剰摂取による健康障害を危惧する声もあります。一方、牛乳は、良質なたんぱく質と豊富なカルシウムを安心して補給できる食品といえます。また、牛乳乳製品の摂取は、高齢者のサルコペニア(筋肉減少症)やフレイル(虚弱)予防にも有用です。
Q11
牛乳には便秘を予防する効果がある?
牛乳に含まれる乳糖は便秘の改善に寄与しています。
ヒトの腸内には1,000種類、100兆個(もっと少ないという説もあります)を超える細菌が生息しています。これらの細菌は腸内で相互に関係して、腸内フローラという生態系を形成しています。腸内細菌には消化・吸収を助けて腸内環境をきれいにする善玉菌と、腐敗物質をつくり体に害を及ぼす悪玉菌、および両者の間に位置する中間的な菌(日和見菌)の3種類があり、お互いに拮抗し合っています。
牛乳に含まれる乳糖は小腸で完全に消化されず、一部は未消化のまま大腸に到達して、そこで腸内細菌による発酵を受け、酪酸などの有機酸を生じます。酪酸は大腸壁細胞の栄養源となり、また腸内のpHを酸性側に傾かせて、いわゆる善玉菌優位の腸内環境をつくります。これらの有機酸は、回腸や大腸を刺激し腸のぜん動運動を高め、便秘の改善に寄与しています。また、乳糖により腸内の浸透圧が高まると、これを平衡化するために体内から腸内に水分が移行するため、腸内の内容物が軟らかくなってスムーズな排便が促されます。最近の研究によると、悪玉菌を抑えて善玉菌を増やすことは、便秘の解消・整腸作用だけでなく、腸の老化を遅らせ、さまざまな腸管由来の感染症やがんなどの病気の予防につながることが明らかにされています。
牛乳には、乳糖以外にも、善玉菌の代表であるビフィズス菌の増殖を助ける成分として微量のミルクオリゴ糖やカゼインの消化物も含まれていますので、摂取は腸内健康の維持にとても有効です。
牛乳に含まれる乳糖は小腸で完全に消化されず、一部は未消化のまま大腸に到達して、そこで腸内細菌による発酵を受け、酪酸などの有機酸を生じます。酪酸は大腸壁細胞の栄養源となり、また腸内のpHを酸性側に傾かせて、いわゆる善玉菌優位の腸内環境をつくります。これらの有機酸は、回腸や大腸を刺激し腸のぜん動運動を高め、便秘の改善に寄与しています。また、乳糖により腸内の浸透圧が高まると、これを平衡化するために体内から腸内に水分が移行するため、腸内の内容物が軟らかくなってスムーズな排便が促されます。最近の研究によると、悪玉菌を抑えて善玉菌を増やすことは、便秘の解消・整腸作用だけでなく、腸の老化を遅らせ、さまざまな腸管由来の感染症やがんなどの病気の予防につながることが明らかにされています。
牛乳には、乳糖以外にも、善玉菌の代表であるビフィズス菌の増殖を助ける成分として微量のミルクオリゴ糖やカゼインの消化物も含まれていますので、摂取は腸内健康の維持にとても有効です。
Q12
牛乳には美肌効果がある?
牛乳に含まれる栄養素には美肌効果が認められています。
牛乳に含まれているいろいろな栄養素には、女性にとって気になる美肌効果が認められています。
2004年、日本酪農乳業協会では20代の女性を対象に牛乳乳製品と美肌の関連性について調査を行いました。
調査では、4週にわたり牛乳、ヨーグルト、チーズのいずれかを1日3回摂取する体験者群(20名)と非体験者群(10名)に分けて、スタート前と4週目に肌の状態を自己評価してもらいました。その結果、体験者群は非体験者群に比べて皮膚の潤いが改善され、保湿力が高まり、脂っぽさが減少したと報告されています。
牛乳中に含まれるビタミンAは皮膚や粘膜などの表皮細胞を正常に保つ作用があり、ビタミンB2はたんぱく質や脂質、糖質の代謝に関係し、健康な皮膚や毛髪、爪をつくります。ニキビや吹き出もの、皮膚炎の防止にも役立ちます。また、カルシウム不足はストレス感受性を高めるとされ、カルシウムの摂取はストレスからくる肌荒れの予防効果が期待されます。さらに乳糖は腸内の善玉菌の栄養源となって善玉菌を増やし、悪玉菌を減らして腸内細菌のバランスを改善する働きがあります。その結果、便秘による肌荒れも防ぐことができます。
2004年、日本酪農乳業協会では20代の女性を対象に牛乳乳製品と美肌の関連性について調査を行いました。
調査では、4週にわたり牛乳、ヨーグルト、チーズのいずれかを1日3回摂取する体験者群(20名)と非体験者群(10名)に分けて、スタート前と4週目に肌の状態を自己評価してもらいました。その結果、体験者群は非体験者群に比べて皮膚の潤いが改善され、保湿力が高まり、脂っぽさが減少したと報告されています。
牛乳中に含まれるビタミンAは皮膚や粘膜などの表皮細胞を正常に保つ作用があり、ビタミンB2はたんぱく質や脂質、糖質の代謝に関係し、健康な皮膚や毛髪、爪をつくります。ニキビや吹き出もの、皮膚炎の防止にも役立ちます。また、カルシウム不足はストレス感受性を高めるとされ、カルシウムの摂取はストレスからくる肌荒れの予防効果が期待されます。さらに乳糖は腸内の善玉菌の栄養源となって善玉菌を増やし、悪玉菌を減らして腸内細菌のバランスを改善する働きがあります。その結果、便秘による肌荒れも防ぐことができます。
Q13
牛乳は貧血や腸内出血と関係がある?
牛乳だけで必要鉄分を摂取することは不可能です。
1981年、「牛乳貧血」という症例が日本で初めて報告されました。牛乳の多量摂取(症例では幼児期に牛乳を1日600mL以上3カ月以上にわたって摂取)によって他の離乳食の摂取量が少なくなり、結果として鉄欠乏状態になった特殊例でした。この症例では、摂取した多量の牛乳たんぱく質が胃腸管粘膜に悪影響を与え、鉄欠乏性の貧血がもたらされたのではないかと考えられています。
牛乳コップ1杯(200mL)に鉄分は0.04mgしか含まれません。一方、日本人の鉄分摂取の推奨量は、1〜2歳児で1日あたり男性・女性ともに4.5mg、成人男性で1日あたり7.0〜7.5mgです。したがって、「牛乳だけの食生活では鉄分は不足する」ことは明らかで、幼児期の牛乳だけに頼った食生活は鉄欠乏のリスクを高め極めて危険です。離乳後の幼児には、鉄分を十分に含む食事によるバランスの良い栄養摂取が大切です。
近年、鉄欠乏性貧血は世界的にも深刻な問題となっています。「貧血」と診断されるに至る前の鉄不足、鉄欠乏の状態が持続するだけで、いろいろな神経機能に異常が生じます。
この状態は早期に鉄が補給されれば回復も可能ですが、鉄不足が幼児期の早い時期であるほど、また不足の状態が持続するほど、鉄補給による機能回復は認められなくなり、予後が悪くなります。乳幼児期に消化機能や免疫機能が未発達な状態で毎日大量の牛乳を摂取していれば、アレルギーによる腸管出血を起こす可能性も否定できません。こうなれば鉄分不足どころか鉄分の喪失を伴い、極めて危険な事態となるため、食事の偏りや栄養バランスの乱れに注意が必要です。
牛乳コップ1杯(200mL)に鉄分は0.04mgしか含まれません。一方、日本人の鉄分摂取の推奨量は、1〜2歳児で1日あたり男性・女性ともに4.5mg、成人男性で1日あたり7.0〜7.5mgです。したがって、「牛乳だけの食生活では鉄分は不足する」ことは明らかで、幼児期の牛乳だけに頼った食生活は鉄欠乏のリスクを高め極めて危険です。離乳後の幼児には、鉄分を十分に含む食事によるバランスの良い栄養摂取が大切です。
近年、鉄欠乏性貧血は世界的にも深刻な問題となっています。「貧血」と診断されるに至る前の鉄不足、鉄欠乏の状態が持続するだけで、いろいろな神経機能に異常が生じます。
この状態は早期に鉄が補給されれば回復も可能ですが、鉄不足が幼児期の早い時期であるほど、また不足の状態が持続するほど、鉄補給による機能回復は認められなくなり、予後が悪くなります。乳幼児期に消化機能や免疫機能が未発達な状態で毎日大量の牛乳を摂取していれば、アレルギーによる腸管出血を起こす可能性も否定できません。こうなれば鉄分不足どころか鉄分の喪失を伴い、極めて危険な事態となるため、食事の偏りや栄養バランスの乱れに注意が必要です。
Q14
牛乳は白内障と関係がある?
極めてまれな先天性疾患以外、牛乳の摂取と白内障の関係は認められません。
極めてまれな先天性疾患の「ガラクトース血症」の患者以外は、牛乳摂取によって白内障になるというデータはありません。
白内障は眼の水晶体が濁り視力が低下する病気で、高齢者に多く発症します。65歳では60%が白内障の症状を呈するといわれています。白内障の最大の要因は老化(加齢)で、それ以外に疾病、紫外線(活性酸素生成)、薬物、外傷、先天性代謝異常なども影響します。
このうち牛乳の摂取と関係があると考えられるのが、ガラクトース血症という先天性代謝異常で、極めてまれな遺伝性疾患です。牛乳中の乳糖が、小腸でラクターゼという酵素によってぶどう糖(グルコース)とガラクトースという単糖に分解されますが、このガラクトースの代謝に関連する酵素が欠損している場合、血中のガラクトース濃度が高まります。これをガラクトース血症といいます。発症頻度は国により異なりますが、およそ5万人に1人くらいの発症率となっています。
ガラクトース血症では、ガラクトースが眼球の水晶体でアルドースレダクターゼという酵素によりガラクチトールになり、これが結晶となって析出する結果、水晶体が白濁し白内障になると考えられています。
ガラクトース血症は劣性遺伝するもので、症状には軽いものから重いものまでありますが、通常は家族歴で出産前に予測するか、新生児で発見され、母乳や乳児用調製乳を避け、乳糖あるいはガラクトースを含まないミルクを与えることで、正常な発育が可能になっています。1977年度から新生児マススクリーニングが実施されていますが、ガラクトース血症患者の発生数、発生率には一定の経年的な傾向は認められていません。
動物実験でラットにヨーグルトを摂取させたところ、白内障が発生したという報告があります。ヨーグルト製造に使用されている乳酸菌は、菌体内でラクトースを分解した際に生じるガラクトースを利用できない菌が多く、菌体外にガラクトースが排出されることから、ヨーグルトには遊離のガラクトースが含まれています。しかし、この実験におけるラットのヨーグルト摂取量は、体重60kgのヒトに換算すると1日21.6〜24kgと非常に極端な摂取条件の実験で、現実離れした摂取量のために起こったと考えられます。したがって、通常の食生活における摂取量で白内障が起こることはまずないでしょう。
白内障は眼の水晶体が濁り視力が低下する病気で、高齢者に多く発症します。65歳では60%が白内障の症状を呈するといわれています。白内障の最大の要因は老化(加齢)で、それ以外に疾病、紫外線(活性酸素生成)、薬物、外傷、先天性代謝異常なども影響します。
このうち牛乳の摂取と関係があると考えられるのが、ガラクトース血症という先天性代謝異常で、極めてまれな遺伝性疾患です。牛乳中の乳糖が、小腸でラクターゼという酵素によってぶどう糖(グルコース)とガラクトースという単糖に分解されますが、このガラクトースの代謝に関連する酵素が欠損している場合、血中のガラクトース濃度が高まります。これをガラクトース血症といいます。発症頻度は国により異なりますが、およそ5万人に1人くらいの発症率となっています。
ガラクトース血症では、ガラクトースが眼球の水晶体でアルドースレダクターゼという酵素によりガラクチトールになり、これが結晶となって析出する結果、水晶体が白濁し白内障になると考えられています。
ガラクトース血症は劣性遺伝するもので、症状には軽いものから重いものまでありますが、通常は家族歴で出産前に予測するか、新生児で発見され、母乳や乳児用調製乳を避け、乳糖あるいはガラクトースを含まないミルクを与えることで、正常な発育が可能になっています。1977年度から新生児マススクリーニングが実施されていますが、ガラクトース血症患者の発生数、発生率には一定の経年的な傾向は認められていません。
動物実験でラットにヨーグルトを摂取させたところ、白内障が発生したという報告があります。ヨーグルト製造に使用されている乳酸菌は、菌体内でラクトースを分解した際に生じるガラクトースを利用できない菌が多く、菌体外にガラクトースが排出されることから、ヨーグルトには遊離のガラクトースが含まれています。しかし、この実験におけるラットのヨーグルト摂取量は、体重60kgのヒトに換算すると1日21.6〜24kgと非常に極端な摂取条件の実験で、現実離れした摂取量のために起こったと考えられます。したがって、通常の食生活における摂取量で白内障が起こることはまずないでしょう。
Q15
牛乳中のビタミンB12は、乳幼児の脳の発達や高齢者の認知症に影響する?
ビタミンB12不足は脳の発達や老人性の認知症に関与すると報告されています。
ビタミンB12は、牛乳乳製品、肉、魚、卵などの動物性食品からしか摂取できないビタミンです。「赤いビタミン」といわれ、赤血球の合成を促進するビタミンとして知られていましたが、最近、脳の発達だけではなく、アルツハイマー症候群など老人性の認知症の発症にも関わっているとの報告もあり、注目されています。
海外で実施されたビタミンB12欠乏児(菜食主義の母親に育てられた小児を含む)に関する調査では、身体および脳の発育不全、貧血、過敏症、食欲不振などの症状が報告されています。6歳までの成長過程でビタミンB12が欠乏していると、その後ビタミンB12を摂取していても、欠乏によって生じた障害は改善されませんでした。
ビタミンB12の摂取量が少ない人たちは、推理力、抽象的思考力および学習能力を測定する知能テストで有意に低いスコアを示したという報告も出ています。しかし、通常の食事状態では欠乏症になることは極めてまれです。
ビタミンB12欠乏は60歳を超えると増加し、アルツハイマー症候群ではしばしばビタミンB12の欠乏が認められています。しかし、ビタミンB12の欠乏を伴う認知症では、ビタミンB12を投与しても症状は改善されないという結果が出ています。日ごろから牛乳乳製品などでビタミンB12を摂取し、日常的にこのビタミンが欠乏しないことが大切です。
海外で実施されたビタミンB12欠乏児(菜食主義の母親に育てられた小児を含む)に関する調査では、身体および脳の発育不全、貧血、過敏症、食欲不振などの症状が報告されています。6歳までの成長過程でビタミンB12が欠乏していると、その後ビタミンB12を摂取していても、欠乏によって生じた障害は改善されませんでした。
ビタミンB12の摂取量が少ない人たちは、推理力、抽象的思考力および学習能力を測定する知能テストで有意に低いスコアを示したという報告も出ています。しかし、通常の食事状態では欠乏症になることは極めてまれです。
ビタミンB12欠乏は60歳を超えると増加し、アルツハイマー症候群ではしばしばビタミンB12の欠乏が認められています。しかし、ビタミンB12の欠乏を伴う認知症では、ビタミンB12を投与しても症状は改善されないという結果が出ています。日ごろから牛乳乳製品などでビタミンB12を摂取し、日常的にこのビタミンが欠乏しないことが大切です。
Q16
牛乳は潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)の発症と関係がある?
牛乳が両疾患の発症に直接的に関わっているとは認められていません。
潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)は若年者に多く発症している難病で、厚生労働省では特定疾患に指定しています。両疾患は異なる病気ですが、共通点も多く炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれています。
潰瘍性大腸炎の患者数は、2021年度は13万8079人(特定疾患医療受給者証所持者数)と報告されており、2014年度の17万781人(同)をピークにやや減少しているものの、依然として高い傾向にあります。クローン病の患者数は1976年には128件でしたが、その後増加し続け、2021年度の患者数(特定疾患医療受給者証所持者数)は4万8320人となっています。
厚生労働省は、潰瘍性大腸炎およびクローン病と食事との相関について報告しています。肉類や脂肪、砂糖、菓子などの過剰摂取および野菜、果物、食物繊維の摂取不足による西洋食を主とした偏った食事は、腸内の善玉菌の減少を招き、腸粘膜の炎症を誘起し、腸内有害細菌の大腸粘膜進入を容易にします。細菌の粘膜進入があると免疫反応が生じ、その結果、炎症反応を起こし、炎症性の腸管疾患が発症すると考えられます。両疾患の糞便細菌叢において、Bifidobacterium、Lactobacillusをはじめとする偏性および通性嫌気性菌の減少、さらに好気性菌の増加が示されています。
潰瘍性大腸炎とクローン病は、若年者の肉類に偏った食生活に起因する生活習慣病とも考えられます。牛乳が両疾患の発症に直接的に関わっているとは認められていません。
偏った食生活を改め、バランスのとれた食生活を送ることが最も大切です。
潰瘍性大腸炎の患者数は、2021年度は13万8079人(特定疾患医療受給者証所持者数)と報告されており、2014年度の17万781人(同)をピークにやや減少しているものの、依然として高い傾向にあります。クローン病の患者数は1976年には128件でしたが、その後増加し続け、2021年度の患者数(特定疾患医療受給者証所持者数)は4万8320人となっています。
厚生労働省は、潰瘍性大腸炎およびクローン病と食事との相関について報告しています。肉類や脂肪、砂糖、菓子などの過剰摂取および野菜、果物、食物繊維の摂取不足による西洋食を主とした偏った食事は、腸内の善玉菌の減少を招き、腸粘膜の炎症を誘起し、腸内有害細菌の大腸粘膜進入を容易にします。細菌の粘膜進入があると免疫反応が生じ、その結果、炎症反応を起こし、炎症性の腸管疾患が発症すると考えられます。両疾患の糞便細菌叢において、Bifidobacterium、Lactobacillusをはじめとする偏性および通性嫌気性菌の減少、さらに好気性菌の増加が示されています。
潰瘍性大腸炎とクローン病は、若年者の肉類に偏った食生活に起因する生活習慣病とも考えられます。牛乳が両疾患の発症に直接的に関わっているとは認められていません。
偏った食生活を改め、バランスのとれた食生活を送ることが最も大切です。
Q17
牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になる?
日本人を対象にした研究では、牛乳を多く飲むほど骨粗鬆症になりにくいことが報告されています。
骨粗鬆症とは、骨の代謝のバランスが崩れ、骨形成よりも骨破壊が上回る状態が続いて骨がもろく折れやすくなる病気です。原因として、閉経後の女性に見られるホルモンバランスの変化や、骨を形成するカルシウムなどの栄養不足があげられるほか、適度な運動によって骨に一定上の負荷をかけないと骨形成におけるカルシウムの利用効率が悪くなることから、運動不足も骨粗鬆症の要因になります。
骨に最も重要な栄養素であるカルシウムについていえば、牛乳中のカルシウムの吸収率は他の食品に比べて優れており(カルシウム吸収率は牛乳約40%、小魚約33%、野菜約19%)、世界保健機関(WHO)も「カルシウムの最良の補給源は牛乳乳製品である」とその摂取を推奨しています。その他、骨形成に重要なカルシウム以外の栄養素として、ビタミンDがあげられます。ビタミンDはカルシウムの吸収に必要な脂溶性のビタミンですが、食事から摂取する以外にも日照(紫外線)によって体内で合成されるため、屋内で過ごす時間が長く日焼けを嫌う現代人では不足しがちな栄養素でもあります。
近年、日照の少ない北欧などの研究で、牛乳の摂取量が多いほど骨折リスクが高まるというデータが複数報告されており、そのことで「牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になるのでは?」と考える人もいます。しかしながら、これらの研究では必ずしもビタミンDについて十分には検討されておらず、牛乳の摂取量だけが直接骨折のリスクに関係しているかどうかは大いに議論の余地があります。逆に骨粗鬆症の予防に対する牛乳摂取の意義を示した報告は多数あり、我が国の高齢女性を15年追跡調査した最近のコホート研究の結果では、牛乳の摂取量が1日200mL未満の人に比べて、1日200mLで29%、1日400mL以上で43%、それぞれ骨粗鬆症による骨折のリスクが低くなることが報告されています。
骨に最も重要な栄養素であるカルシウムについていえば、牛乳中のカルシウムの吸収率は他の食品に比べて優れており(カルシウム吸収率は牛乳約40%、小魚約33%、野菜約19%)、世界保健機関(WHO)も「カルシウムの最良の補給源は牛乳乳製品である」とその摂取を推奨しています。その他、骨形成に重要なカルシウム以外の栄養素として、ビタミンDがあげられます。ビタミンDはカルシウムの吸収に必要な脂溶性のビタミンですが、食事から摂取する以外にも日照(紫外線)によって体内で合成されるため、屋内で過ごす時間が長く日焼けを嫌う現代人では不足しがちな栄養素でもあります。
近年、日照の少ない北欧などの研究で、牛乳の摂取量が多いほど骨折リスクが高まるというデータが複数報告されており、そのことで「牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になるのでは?」と考える人もいます。しかしながら、これらの研究では必ずしもビタミンDについて十分には検討されておらず、牛乳の摂取量だけが直接骨折のリスクに関係しているかどうかは大いに議論の余地があります。逆に骨粗鬆症の予防に対する牛乳摂取の意義を示した報告は多数あり、我が国の高齢女性を15年追跡調査した最近のコホート研究の結果では、牛乳の摂取量が1日200mL未満の人に比べて、1日200mLで29%、1日400mL以上で43%、それぞれ骨粗鬆症による骨折のリスクが低くなることが報告されています。
Q18
牛乳は乳がんの原因になる?
牛乳が乳がんの原因になる可能性は低いと考えられています。
牛乳に微量含まれる成長ホルモンやエストロゲン(女性ホルモン)、インスリン様成長因子(IGF)などが乳がんの発症に関連しているという説があります。
成長因子などの生理活性物質は、ヒトや多くの動物が体内で生合成する分子であり、乳に限らず生物の組織や体液(血液など)中に広く存在します。フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の報告によると、IGF-1の血中濃度と、特定のよく見られるがん(前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん)の罹患率には相関性があるようです。
しかし、牛乳中のIGF-1は血中IGF-1濃度に影響を及ぼすのでしょうか。ANSESの調査報告によれば、生乳から牛乳乳製品を製造する過程で行われる殺菌処理でIGF-1は減少し、超高温瞬間殺菌(UHT)後にはほぼ検出されないレベルです。また、IGF-1は消化吸収される各段階で分解され、時間経過とともに減少するため、仮に微量が血中に入ったとしても、その量は体内で合成されて血中を循環するIGF-1量よりもずっと少ないと考えられます。つまりANSESは、「乳由来のIGF-1のがん増殖リスクへの寄与度は、仮にそれが存在しても、低いと考えられる」と結論づけています。
エストロゲンに関しても、IGF-1と同様に体内で消化吸収される段階で分解され、不活化されます。仮に牛乳中に含まれている微量のエストロゲンを摂取したとしても、がんのリスクは高まらないでしょう。
成長因子などの生理活性物質は、ヒトや多くの動物が体内で生合成する分子であり、乳に限らず生物の組織や体液(血液など)中に広く存在します。フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の報告によると、IGF-1の血中濃度と、特定のよく見られるがん(前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん)の罹患率には相関性があるようです。
しかし、牛乳中のIGF-1は血中IGF-1濃度に影響を及ぼすのでしょうか。ANSESの調査報告によれば、生乳から牛乳乳製品を製造する過程で行われる殺菌処理でIGF-1は減少し、超高温瞬間殺菌(UHT)後にはほぼ検出されないレベルです。また、IGF-1は消化吸収される各段階で分解され、時間経過とともに減少するため、仮に微量が血中に入ったとしても、その量は体内で合成されて血中を循環するIGF-1量よりもずっと少ないと考えられます。つまりANSESは、「乳由来のIGF-1のがん増殖リスクへの寄与度は、仮にそれが存在しても、低いと考えられる」と結論づけています。
エストロゲンに関しても、IGF-1と同様に体内で消化吸収される段階で分解され、不活化されます。仮に牛乳中に含まれている微量のエストロゲンを摂取したとしても、がんのリスクは高まらないでしょう。
Q19
牛乳乳製品が心筋梗塞を招く?
牛乳乳製品が心筋梗塞を招くことを示した報告はありません。
文部科学省「大規模コホート研究(JACC Study)」では、40〜79歳の日本人男女約11万人を対象とした調査で、カルシウムを乳や乳製品から多く摂っているグループは心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクが低いことが示されています。カルシウムには腎臓からのナトリウム排泄を促す作用があります。塩分摂取量の多い日本人において、カルシウム摂取によるナトリウム排泄促進が血圧低下に作用し、脳卒中や心疾患を予防する方向に作用したと考えられています。
心疾患(心筋梗塞)は血管の病気で、主に動脈硬化によって発症します。したがって、心疾患にならないためには動脈硬化を予防することが必要です。動脈硬化は動物性脂肪やアルコールの摂りすぎ、運動不足、肥満などによって進行します。また、カルシウム不足も動脈硬化を進める要因の一つです。体に必要なカルシウムが不足すると、骨から血液中にカルシウムが溶け出します。すると血液中のカルシウムが増えすぎて、余った分が血管壁に沈着します。これが石灰化して血管を硬くし、動脈硬化を促進します。したがって、カルシウム不足にならないことは動脈硬化を防ぐうえでとても大切なのです。
牛乳のカルシウム吸収率は約40%と高く、小魚(約33%)や野菜(約19%)よりも格段に優れています。多くの日本人は日常的にカルシウム不足だと考えられているので、牛乳は身近に簡単に摂取できるカルシウムの補給源として最適な食品といえるでしょう。
心疾患(心筋梗塞)は血管の病気で、主に動脈硬化によって発症します。したがって、心疾患にならないためには動脈硬化を予防することが必要です。動脈硬化は動物性脂肪やアルコールの摂りすぎ、運動不足、肥満などによって進行します。また、カルシウム不足も動脈硬化を進める要因の一つです。体に必要なカルシウムが不足すると、骨から血液中にカルシウムが溶け出します。すると血液中のカルシウムが増えすぎて、余った分が血管壁に沈着します。これが石灰化して血管を硬くし、動脈硬化を促進します。したがって、カルシウム不足にならないことは動脈硬化を防ぐうえでとても大切なのです。
牛乳のカルシウム吸収率は約40%と高く、小魚(約33%)や野菜(約19%)よりも格段に優れています。多くの日本人は日常的にカルシウム不足だと考えられているので、牛乳は身近に簡単に摂取できるカルシウムの補給源として最適な食品といえるでしょう。
Q20
牛乳は1型糖尿病と関係がある?
牛乳が1型糖尿病の直接的原因とは認められていません。
糖尿病には1型(インスリン依存性)糖尿病と2型(インスリン非依存性)糖尿病があります。1型は膵臓にある膵島のβ細胞が何らかの原因で損傷され、その結果インスリンの分泌が低下あるいは分泌されないために発症し、一方2型は肥満などが原因で耐糖能が低下して発症します。
β細胞が破壊される原因として、ウイルス感染や自己免疫反応など諸説があります。自己免疫では、遺伝的素因のある人が食物たんぱく質に対して産生した抗体によって自身の組織を傷つけているという考えがあり、特に牛乳たんぱく質は人工栄養で生後初期に用いられることから原因視され、1型糖尿病の小児で牛乳たんぱく質に対する抗体価が高いという報告もあります。しかし、このことが1型糖尿病の原因なのか、単に相関があるだけなのかは、さらなる研究が必要です。
日本における小児の1型糖尿病の発症頻度は、人口10万人あたり2.5人で、この値は欧米白人の約10分の1から30分の1です。この差異の原因は、日本人では1型糖尿病発症についての感受性を高める遺伝子を持っていないからです。
一方、日本人でも小児患者では、牛血清アルブミン、β-ラクトグロブリン、卵アルブミンに対するIgA、IgG抗体価が有意に上昇していた報告があります。しかし、この報告は平均14.5歳であること、特定たんぱく質についてのみ検討していることから、乳児期の栄養法との関係、他の食物たんぱく質についてのさらなる検討が必要でしょう。
牛乳は育児用調製乳(育児用ミルク)の主成分であり、人工栄養児では生後早期に与えられるため、上記のように牛乳たんぱく質が問題とされることがあります。わが国の母乳栄養の比率は、1950年代後半で60%、その後低下して30%以下になり、1975年以降は母乳栄養が見直され再び増加してきました。2015年度に厚生労働省が実施した「乳幼児栄養調査」では、母乳栄養の割合は生後1カ月では51.3%、生後3カ月で54.7%となっています。こうした母乳栄養の増減に伴い、育児用調製乳の使用量もまた増減してきました。
1型糖尿病の発症頻度は母乳栄養とは関係がないという報告もあります。母乳栄養が減少しても1型糖尿病の頻度が上昇しなかった例があるからです。しかし、牛乳たんぱく質がまったく関与しないとはいえないので、白人でのデータに注意し、日本人でも1型糖尿病が増加しないように対応する必要があるでしょう。
少なくともわが国では牛乳が1型糖尿病の直接的原因とは認められていませんが、現時点では仮説ながら牛乳のβ-カゼインの遺伝子多型がヒトの1型糖尿病の発症に関連するとの報告もあり、今後研究を進める必要があります。
β細胞が破壊される原因として、ウイルス感染や自己免疫反応など諸説があります。自己免疫では、遺伝的素因のある人が食物たんぱく質に対して産生した抗体によって自身の組織を傷つけているという考えがあり、特に牛乳たんぱく質は人工栄養で生後初期に用いられることから原因視され、1型糖尿病の小児で牛乳たんぱく質に対する抗体価が高いという報告もあります。しかし、このことが1型糖尿病の原因なのか、単に相関があるだけなのかは、さらなる研究が必要です。
日本における小児の1型糖尿病の発症頻度は、人口10万人あたり2.5人で、この値は欧米白人の約10分の1から30分の1です。この差異の原因は、日本人では1型糖尿病発症についての感受性を高める遺伝子を持っていないからです。
一方、日本人でも小児患者では、牛血清アルブミン、β-ラクトグロブリン、卵アルブミンに対するIgA、IgG抗体価が有意に上昇していた報告があります。しかし、この報告は平均14.5歳であること、特定たんぱく質についてのみ検討していることから、乳児期の栄養法との関係、他の食物たんぱく質についてのさらなる検討が必要でしょう。
牛乳は育児用調製乳(育児用ミルク)の主成分であり、人工栄養児では生後早期に与えられるため、上記のように牛乳たんぱく質が問題とされることがあります。わが国の母乳栄養の比率は、1950年代後半で60%、その後低下して30%以下になり、1975年以降は母乳栄養が見直され再び増加してきました。2015年度に厚生労働省が実施した「乳幼児栄養調査」では、母乳栄養の割合は生後1カ月では51.3%、生後3カ月で54.7%となっています。こうした母乳栄養の増減に伴い、育児用調製乳の使用量もまた増減してきました。
1型糖尿病の発症頻度は母乳栄養とは関係がないという報告もあります。母乳栄養が減少しても1型糖尿病の頻度が上昇しなかった例があるからです。しかし、牛乳たんぱく質がまったく関与しないとはいえないので、白人でのデータに注意し、日本人でも1型糖尿病が増加しないように対応する必要があるでしょう。
少なくともわが国では牛乳が1型糖尿病の直接的原因とは認められていませんが、現時点では仮説ながら牛乳のβ-カゼインの遺伝子多型がヒトの1型糖尿病の発症に関連するとの報告もあり、今後研究を進める必要があります。
Q21
乳幼児の中耳炎に牛乳は関係している?
牛乳と中耳炎の発症には直接的な関係はありません。
中耳炎は乳幼児に多く見られる一般的な病気です。海外のデータでは、2歳未満では80%がかかり、また3分の2の子どもは3歳までに少なくとも1回はかかるといわれています。
乳幼児の中耳炎の発症には、上部呼吸器感染、耳管の機能不全、外的な要因として家族による喫煙など、さまざまな要因が関与していますが、牛乳と中耳炎の発症には直接的な関係はありません。
一つの要因として、授乳する際の乳児の姿勢が考えられています。中耳炎は、鼓膜の奥(中耳腔)に細菌が入り込み炎症を起こす病気です。海外では1〜2歳時における中耳炎の平均罹患期間は、12カ月齢まで母乳栄養であった子どものほうが、人工栄養であった子どもに比べて短かったと報告されています。その原因として、母乳中には母親から移行した免疫抗体が含まれていること、母乳を与えるときの乳児の姿勢の2つが考えられます。
母乳は乳児を立てた姿勢で抱いて飲ませますが、哺乳瓶の場合、多くは乳児を上向きに抱いて与えます。上向きの姿勢では、乳が中耳の中に逆流する可能性があります。
乳幼児は成人に比べて耳管が太く、短く、中耳への傾斜も水平に近いために、逆流しやすくなっています。その結果、局所的な炎症を起こし、中耳炎を発症するものと考えられます。人工栄養における中耳炎の発症を防ぐためには、ミルクは母乳を飲ませるときと同様に、乳児を立てた姿勢で与えることが望ましいと考えられます。
乳幼児の中耳炎の発症には、上部呼吸器感染、耳管の機能不全、外的な要因として家族による喫煙など、さまざまな要因が関与していますが、牛乳と中耳炎の発症には直接的な関係はありません。
一つの要因として、授乳する際の乳児の姿勢が考えられています。中耳炎は、鼓膜の奥(中耳腔)に細菌が入り込み炎症を起こす病気です。海外では1〜2歳時における中耳炎の平均罹患期間は、12カ月齢まで母乳栄養であった子どものほうが、人工栄養であった子どもに比べて短かったと報告されています。その原因として、母乳中には母親から移行した免疫抗体が含まれていること、母乳を与えるときの乳児の姿勢の2つが考えられます。
母乳は乳児を立てた姿勢で抱いて飲ませますが、哺乳瓶の場合、多くは乳児を上向きに抱いて与えます。上向きの姿勢では、乳が中耳の中に逆流する可能性があります。
乳幼児は成人に比べて耳管が太く、短く、中耳への傾斜も水平に近いために、逆流しやすくなっています。その結果、局所的な炎症を起こし、中耳炎を発症するものと考えられます。人工栄養における中耳炎の発症を防ぐためには、ミルクは母乳を飲ませるときと同様に、乳児を立てた姿勢で与えることが望ましいと考えられます。
Q22
インスリン抵抗性症候群と牛乳との関係は?
牛乳乳製品はインスリン抵抗性を改善するという報告があります。
膵臓から分泌されるインスリンは筋肉や脂肪細胞などに働きかけ、細胞内に糖を取り込ませることで血液中のぶどう糖濃度(血糖値)を低下させます。しかし、インスリンの働きが悪くなるとスムーズに糖を細胞内に取り込めなくなり、血糖値が下がらない現象が起こります。この状態を「インスリン抵抗性症候群」といいます。
インスリン抵抗性症候群を放置しておくと糖尿病を発症するだけではなく、高血圧や脂質異常症とも深く関与するといわれています。肥満やインスリン抵抗性症候群と関連して糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併して発症する状態を「メタボリックシンドローム」と呼び、心筋梗塞や脳梗塞のハイリスク群と考えられています。
牛乳乳製品の摂取頻度とインスリン抵抗性症候群の関係について、アメリカで18〜30歳の若年成人3,157人を対象に行われた調査では、牛乳乳製品の摂取によってインスリン抵抗性が改善されるという報告が出されています。肥満(BMI値が25以上)症例では、乳製品を1日5回以上摂取するグループは、1日1.4回以下しか摂取しないグループに比べて、インスリン抵抗性症候群の発症率が71%も低くなりました。
さらに、1日の牛乳乳製品の消費回数が1回増えるごとに、インスリン抵抗性症候群の発症率は21%低下しました。このメカニズムについてはいまだ完全には解明されていませんが、牛乳乳製品を積極的に摂取すると、インスリン抵抗性症候群になりにくく、糖尿病の発症を予防することが期待できます。アメリカ食品医薬品局(FDA)はヨーグルトの2型糖尿病リスク軽減効果表示も認めています。
インスリン抵抗性症候群を放置しておくと糖尿病を発症するだけではなく、高血圧や脂質異常症とも深く関与するといわれています。肥満やインスリン抵抗性症候群と関連して糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併して発症する状態を「メタボリックシンドローム」と呼び、心筋梗塞や脳梗塞のハイリスク群と考えられています。
牛乳乳製品の摂取頻度とインスリン抵抗性症候群の関係について、アメリカで18〜30歳の若年成人3,157人を対象に行われた調査では、牛乳乳製品の摂取によってインスリン抵抗性が改善されるという報告が出されています。肥満(BMI値が25以上)症例では、乳製品を1日5回以上摂取するグループは、1日1.4回以下しか摂取しないグループに比べて、インスリン抵抗性症候群の発症率が71%も低くなりました。
さらに、1日の牛乳乳製品の消費回数が1回増えるごとに、インスリン抵抗性症候群の発症率は21%低下しました。このメカニズムについてはいまだ完全には解明されていませんが、牛乳乳製品を積極的に摂取すると、インスリン抵抗性症候群になりにくく、糖尿病の発症を予防することが期待できます。アメリカ食品医薬品局(FDA)はヨーグルトの2型糖尿病リスク軽減効果表示も認めています。
Q23
牛乳カルシウムが血圧を下げる?
カルシウム摂取量が少ないと高血圧の発症が増加するという報告があります。
古くから飲料水の硬度(ミネラルの含有量)と心血管合併症の死亡率との間に密接な関係があることが報告されてきました。また、国内外の疫学調査によると、カルシウム含量の低い、すなわち硬度の低い軟水を飲んでいる地域では、高血圧の人が多いという報告も出ています。
米国の調査では、高血圧例はカルシウム摂取量が1日あたり300mg以下では11〜14%、1,200mg以上では3〜6%でした。このことから、飲料水からのカルシウムの摂取量が高血圧の発症に深く関与していることが示唆されました。
日本でも、東北地方で実施された疫学調査で、飲料水などからのカルシウムの摂取量が少ないと、高血圧や脳卒中の発症が増加するというデータが報告されています。これらの調査から、1日のカルシウム摂取量が400〜500mgより少ない場合には、高血圧の発症頻度が上昇する可能性が高いと指摘されています。
米国の調査では、高血圧例はカルシウム摂取量が1日あたり300mg以下では11〜14%、1,200mg以上では3〜6%でした。このことから、飲料水からのカルシウムの摂取量が高血圧の発症に深く関与していることが示唆されました。
日本でも、東北地方で実施された疫学調査で、飲料水などからのカルシウムの摂取量が少ないと、高血圧や脳卒中の発症が増加するというデータが報告されています。これらの調査から、1日のカルシウム摂取量が400〜500mgより少ない場合には、高血圧の発症頻度が上昇する可能性が高いと指摘されています。
Q24
乳製品からのカルシウム摂取は脳卒中のリスクを低減させる?
乳製品からのカルシウム摂取は、脳卒中の発症リスクを低下させます。
厚生労働省「多目的コホート研究(JPHC Study)」によると、乳製品からのカルシウム摂取量が多いと、脳卒中や脳梗塞などの発症リスクが低下することがわかりました。
この研究では、岩手県、秋田県、長野県、沖縄県の40〜59歳の男女で、循環器病、がんに罹患していなかった約4万人について、食事や生活習慣についての調査を行いました。そこから総カルシウム摂取量、牛乳乳製品からのカルシウム摂取量、大豆製品や野菜などの乳製品以外からのカルシウム摂取量を算出し、約13年間の追跡期間中に発症した脳卒中、虚血性心疾患との関連について報告しています。
それによると、追跡調査中に脳卒中を発症したのは1,321人(うち脳梗塞664人、脳出血425人)、また虚血性心疾患は322人でした。総カルシウム摂取量によって5つのグループに分け、脳卒中、虚血性心疾患の発症リスクとの関連を調べた結果、総カルシウム摂取量の最も多いグループ(中央値1日753mg)では、最も少ないグループ(同1日233mg)に比べて脳卒中の発症リスクが0.70倍と低いことがわかりました。
次に、乳製品からのカルシウム摂取量も同様に調べた結果、最も多いグループ(同1日116mg)では最も少ないグループ(ほとんどゼロ)に比べて、脳卒中の発症リスクが0.69倍と低いことがわかりました。
一方、乳製品以外からのカルシウム摂取の場合では、摂取量が増えても脳卒中の発症リスクに統計学的に有意な低下は見られませんでした。
日本人では総カルシウム摂取量や乳製品からのカルシウム摂取量が多い人は、少ない人に比べて血圧値が低いことが、これまでの研究により明らかとなっています。また、カルシウム摂取は血小板凝集やコレステロールの吸収を抑えることも報告されており、これらが脳卒中に対して予防効果を示した理由と考えられます。
この研究では、岩手県、秋田県、長野県、沖縄県の40〜59歳の男女で、循環器病、がんに罹患していなかった約4万人について、食事や生活習慣についての調査を行いました。そこから総カルシウム摂取量、牛乳乳製品からのカルシウム摂取量、大豆製品や野菜などの乳製品以外からのカルシウム摂取量を算出し、約13年間の追跡期間中に発症した脳卒中、虚血性心疾患との関連について報告しています。
それによると、追跡調査中に脳卒中を発症したのは1,321人(うち脳梗塞664人、脳出血425人)、また虚血性心疾患は322人でした。総カルシウム摂取量によって5つのグループに分け、脳卒中、虚血性心疾患の発症リスクとの関連を調べた結果、総カルシウム摂取量の最も多いグループ(中央値1日753mg)では、最も少ないグループ(同1日233mg)に比べて脳卒中の発症リスクが0.70倍と低いことがわかりました。
次に、乳製品からのカルシウム摂取量も同様に調べた結果、最も多いグループ(同1日116mg)では最も少ないグループ(ほとんどゼロ)に比べて、脳卒中の発症リスクが0.69倍と低いことがわかりました。
一方、乳製品以外からのカルシウム摂取の場合では、摂取量が増えても脳卒中の発症リスクに統計学的に有意な低下は見られませんでした。
日本人では総カルシウム摂取量や乳製品からのカルシウム摂取量が多い人は、少ない人に比べて血圧値が低いことが、これまでの研究により明らかとなっています。また、カルシウム摂取は血小板凝集やコレステロールの吸収を抑えることも報告されており、これらが脳卒中に対して予防効果を示した理由と考えられます。
Q25
胃・十二指腸潰瘍の予防には牛乳を積極的に摂取したほうが良い?
術後の患者さんにとってカルシウムの消化・吸収の良い牛乳は最適な食品です。
胃・十二指腸潰瘍は、食物を消化するために分泌される胃酸によって、胃や十二指腸の粘膜が傷害されて部分的に欠損状態になり発症します。胃粘膜には粘液や粘膜バリア、粘膜血流などの防御因子といわれる粘膜を守る機能が備わっています。一方、胃粘膜を攻撃する因子には、胃酸、ストレス、ピロリ菌、薬剤(解熱鎮痛消炎剤等)、活性酸素などがあります。
この防御因子と攻撃因子のバランスが崩れることによって、潰瘍が発症するといわれています。潰瘍は薬物治療によって治りますが、再発を繰り返すことが知られています。最近はピロリ菌の感染が注目され、ピロリ菌を除菌すると潰瘍の再発率が低下すると考えられています。
たんぱく質は胃酸の分泌を促し、胃の中での停滞時間が長いため、一般的に潰瘍の患者さんには控えたい栄養成分です。しかし、たんぱく質は粘膜の修復に必要な材料になるため、適量の摂取は必要です。牛乳には胃酸を中和して胃粘膜を保護する働きがあり、潰瘍の患者さんも安心して摂取できる食品です。また、牛乳のカルシウムには胃粘膜の攻撃因子となるストレスを和らげる働きがあるといわれています。ただし、牛乳が他の食品に比べてより高い効果があるかどうかは明確にされていません。
胃の切除手術をすると、カルシウムの吸収率が低下します。したがって、術後の患者さんにとってカルシウムの消化・吸収の良い牛乳は最適な食品です。また、牛乳に含まれるホエイたんぱく質の成分が胃潰瘍に対し予防効果のあることが動物実験で認められています。以前から牛乳の胃潰瘍予防効果は予測されていますが、その効果はいまだ明確にされていません。今後の検証が必要です。
この防御因子と攻撃因子のバランスが崩れることによって、潰瘍が発症するといわれています。潰瘍は薬物治療によって治りますが、再発を繰り返すことが知られています。最近はピロリ菌の感染が注目され、ピロリ菌を除菌すると潰瘍の再発率が低下すると考えられています。
たんぱく質は胃酸の分泌を促し、胃の中での停滞時間が長いため、一般的に潰瘍の患者さんには控えたい栄養成分です。しかし、たんぱく質は粘膜の修復に必要な材料になるため、適量の摂取は必要です。牛乳には胃酸を中和して胃粘膜を保護する働きがあり、潰瘍の患者さんも安心して摂取できる食品です。また、牛乳のカルシウムには胃粘膜の攻撃因子となるストレスを和らげる働きがあるといわれています。ただし、牛乳が他の食品に比べてより高い効果があるかどうかは明確にされていません。
胃の切除手術をすると、カルシウムの吸収率が低下します。したがって、術後の患者さんにとってカルシウムの消化・吸収の良い牛乳は最適な食品です。また、牛乳に含まれるホエイたんぱく質の成分が胃潰瘍に対し予防効果のあることが動物実験で認められています。以前から牛乳の胃潰瘍予防効果は予測されていますが、その効果はいまだ明確にされていません。今後の検証が必要です。
Q26
乳製品は痛風の予防に効果がある?
乳製品の摂取は痛風の発症リスクを低下させるという報告があります。
痛風は高尿酸血症ともいわれ、血液中に尿酸が異常に増えることにより起こります。尿酸値は、激しい運動やストレスなどで体内で多く生成されたり、プリン体を多く含む食品(内臓類、肉類、魚介類など)の過剰摂取によって上昇します。牛乳にはプリン体はほとんど含まれていません。
尿酸は、健康な人では溶けた形で血液中に存在しますが、過飽和濃度の状態になると結晶を生じ、関節などに沈着した場合に激しい痛風発作を起こします。痛風は男性に多く発症する炎症性関節炎で、アメリカでは340万人の患者がいるといわれています。
痛風の既往歴のない男性(40〜75歳)約4万7,000人を対象に、摂取した食品と痛風の発症の関係について12年以上にわたる疫学調査がアメリカで実施されました。この調査では、プリン体を多く含む肉類、魚介類などと、乳製品の摂取量を各5段階のグループに分け、痛風の発症のリスクを検討しました。その結果、プリン体を多く含む肉類、魚介類では、摂取量が最も多いグループは最も少ないグループよりも痛風発症のリスクが高いという結果が出ました。一方、乳製品では、摂取量が増えるにつれて発症リスクが低下しました。痛風発症のリスクは、乳製品の摂取量が最少のグループを1とすると、摂取量が最大のグループでは0.56でした。
乳製品が痛風の発症を抑制するメカニズムは、乳製品に含まれるたんぱく質(カゼインとホエイたんぱく質)の尿酸排泄促進作用により、血液中の尿酸値を下げているためと考えられます。
尿酸は、健康な人では溶けた形で血液中に存在しますが、過飽和濃度の状態になると結晶を生じ、関節などに沈着した場合に激しい痛風発作を起こします。痛風は男性に多く発症する炎症性関節炎で、アメリカでは340万人の患者がいるといわれています。
痛風の既往歴のない男性(40〜75歳)約4万7,000人を対象に、摂取した食品と痛風の発症の関係について12年以上にわたる疫学調査がアメリカで実施されました。この調査では、プリン体を多く含む肉類、魚介類などと、乳製品の摂取量を各5段階のグループに分け、痛風の発症のリスクを検討しました。その結果、プリン体を多く含む肉類、魚介類では、摂取量が最も多いグループは最も少ないグループよりも痛風発症のリスクが高いという結果が出ました。一方、乳製品では、摂取量が増えるにつれて発症リスクが低下しました。痛風発症のリスクは、乳製品の摂取量が最少のグループを1とすると、摂取量が最大のグループでは0.56でした。
乳製品が痛風の発症を抑制するメカニズムは、乳製品に含まれるたんぱく質(カゼインとホエイたんぱく質)の尿酸排泄促進作用により、血液中の尿酸値を下げているためと考えられます。
Q27
牛乳の摂取は虫歯の予防に効果がある?
WHOの報告では、牛乳は虫歯予防効果に「可能性あり」とされています。
う蝕(虫歯)予防的効果を示す食品として、世界保健機関(WHO)の報告では、牛乳が「可能性あり」の食物として記載されています。また、硬質のチーズは「可能性が高い」食物として記載されています。
牛乳乳製品が効果を示す要因として、①う蝕原因菌の産生した酸を中和する、②唾液分泌の促進、③歯の表面へのバイオフィルムの形成阻止、④カゼインやイオン化した牛乳中のカルシウムとリンによるエナメル質の再石灰化の促進が考えられます。
カゼインの酵素分解物であるカゼインホスホペプチド(CPP)とリン酸カルシウムの結合物(CPP-ACP)を牛乳に加えた試験ミルクが、ヒトでのう蝕予防に効果を示した報告があります。また、イギリスの青少年の牛乳の摂取量とう蝕の発症は、反比例の関係にあるという報告も出されています。
牛乳乳製品が効果を示す要因として、①う蝕原因菌の産生した酸を中和する、②唾液分泌の促進、③歯の表面へのバイオフィルムの形成阻止、④カゼインやイオン化した牛乳中のカルシウムとリンによるエナメル質の再石灰化の促進が考えられます。
カゼインの酵素分解物であるカゼインホスホペプチド(CPP)とリン酸カルシウムの結合物(CPP-ACP)を牛乳に加えた試験ミルクが、ヒトでのう蝕予防に効果を示した報告があります。また、イギリスの青少年の牛乳の摂取量とう蝕の発症は、反比例の関係にあるという報告も出されています。
Q28
牛乳の摂取は歯周病の予防に効果がある?
牛乳乳製品の摂取は歯周病予防に効果的という報告があります。
歯周病と食品摂取との関係では、歯と歯茎の栄養に不可欠なたんぱく質、ビタミンCなどの抗酸化ビタミン類、ミネラルとして骨形成に重要なカルシウム、リンとビタミンD、ビタミンKや食物繊維を含む硬い食物が適しています。
カルシウムの摂取不足は、骨密度低下の一因であり、全身の骨密度は顎顔面の骨密度、歯槽骨破壊とも関係しています。歯周病は細菌による病気ですが、カルシウムの摂取不足は顎骨、歯槽骨での骨代謝に影響して歯周病を進行させます。
牛乳乳製品の摂取増加は歯周病を予防する効果があるとの報告があります。牛乳や乳製品の摂取量で比較した福岡県・久山町での疫学研究では、ヨーグルトなどのはっ酵乳の摂取が最も効果的であったと報告されています。
カルシウムの摂取不足は、骨密度低下の一因であり、全身の骨密度は顎顔面の骨密度、歯槽骨破壊とも関係しています。歯周病は細菌による病気ですが、カルシウムの摂取不足は顎骨、歯槽骨での骨代謝に影響して歯周病を進行させます。
牛乳乳製品の摂取増加は歯周病を予防する効果があるとの報告があります。牛乳や乳製品の摂取量で比較した福岡県・久山町での疫学研究では、ヨーグルトなどのはっ酵乳の摂取が最も効果的であったと報告されています。
Q29
牛乳に農薬や抗生物質が残っている心配はない?
牛乳に農薬や抗生物質が残留していることはありません。
農薬や薬剤には、国で決めた使用基準と残留基準があります。輸入される飼料は、厳しい検査をパスした国の基準に合ったものしか乳牛には与えられていません。
国内では2006年から食品に残留する農薬等への「ポジティブリスト制度」が導入され、これまで以上に安全な生乳が供給されるようになっています。万一、農薬や薬剤の残留の疑いがある場合には、生乳などの段階での検査でチェックされますから製品に含まれる危険性はありません。
抗生物質については、乳等命令で厳しく規制され、飼料への添加は禁止されています。抗生物質の使用が認められているのは、乳房炎、肺炎、外傷などの治療時に限られています。その場合も、乳等命令で「乳に影響のある薬剤を服用させ、または注射した後、その抗生物質が乳に残留している期間中は、乳を搾取してはならない」と規定されています。
さらに、酪農家から出荷された生乳は工場で受け入れるときに毎回検査されており、特に抗生物質のチェックは厳しく、万一抗生物質が検出された場合には、集められた牛乳は廃棄処分されます。
なお、わが国では成長ホルモンの投与は禁止されていますから、牛乳に成長ホルモンが含まれることはありません。
国内では2006年から食品に残留する農薬等への「ポジティブリスト制度」が導入され、これまで以上に安全な生乳が供給されるようになっています。万一、農薬や薬剤の残留の疑いがある場合には、生乳などの段階での検査でチェックされますから製品に含まれる危険性はありません。
抗生物質については、乳等命令で厳しく規制され、飼料への添加は禁止されています。抗生物質の使用が認められているのは、乳房炎、肺炎、外傷などの治療時に限られています。その場合も、乳等命令で「乳に影響のある薬剤を服用させ、または注射した後、その抗生物質が乳に残留している期間中は、乳を搾取してはならない」と規定されています。
さらに、酪農家から出荷された生乳は工場で受け入れるときに毎回検査されており、特に抗生物質のチェックは厳しく、万一抗生物質が検出された場合には、集められた牛乳は廃棄処分されます。
なお、わが国では成長ホルモンの投与は禁止されていますから、牛乳に成長ホルモンが含まれることはありません。
Q30
牛乳が牛海綿状脳症(BSE)に対して安全なのはなぜ?
検査から、牛乳乳製品はBSEを伝達しないとされています。
世界保健機関(WHO)や国際獣疫事務局(WOAH)などの国際機関は、牛乳乳製品の牛海綿状脳症(BSE)に対する安全性をはっきりと認めています。
WHOの専門家会議報告によれば、ヒトを含むあらゆる動物の海綿状脳症(プリオン病)を対象とした検査から、牛乳乳製品は明らかにBSEを伝達しないとしています。国際機関による評価やこれまでの研究成果を踏まえて、厚生労働省や農林水産省も牛乳乳製品は安全であると明言しています。
その根拠は、BSE感染牛のさまざまな部分をマウス脳内に接種する試験で、脳、脊髄、眼、回腸遠位部(小腸の最後の部分)、末梢神経節および骨髄以外の部位では感染が確認されなかったことです。また、BSE感染牛の乳を飲んで育った子牛がBSEに感染した例がないからです。
WHOの専門家会議報告によれば、ヒトを含むあらゆる動物の海綿状脳症(プリオン病)を対象とした検査から、牛乳乳製品は明らかにBSEを伝達しないとしています。国際機関による評価やこれまでの研究成果を踏まえて、厚生労働省や農林水産省も牛乳乳製品は安全であると明言しています。
その根拠は、BSE感染牛のさまざまな部分をマウス脳内に接種する試験で、脳、脊髄、眼、回腸遠位部(小腸の最後の部分)、末梢神経節および骨髄以外の部位では感染が確認されなかったことです。また、BSE感染牛の乳を飲んで育った子牛がBSEに感染した例がないからです。